松沢 裕作 - 教員インタビュー - 慶應経済について - 慶應義塾大学経済学部・大学院経済学研究科
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教員インタビュー
松沢 裕作 写真1

教授 松沢 裕作
日本社会史

歴史研究と現在の関係を語るための「セカンドアルバム」作り

研究テーマとその出会い

授賞対象となった『日本近代村落の起源』(岩波書店、2022年)という本は、私の2冊目の研究書です。1冊目が『明治地方自治体制の起源』(東京大学出版会、2009年)という本で、これは私の博士論文です。両者はつながったテーマをあつかっていて、江戸時代から明治時代にかけて、村の人たちの繋がり方がどう変わったのかということをあつかっています。

研究テーマの魅力、面白さ

この13年のあいだに、新書や選書といった一般向けの本、それから専門家向けの論文もいくつも書いたわけですが、そうした仕事のうち、関連するテーマで書いた論文のいくつかを、論理が首尾一貫するように書き直して、配列の順番を考えて、この本はできています。いまでは音楽は配信サービスで聴くことが多いのであまり強く意識されなくなっているかもしれませんが、論文ひとつひとつはCDでいえば「シングル」で、研究書は「アルバム」です。そういう意味でこの本は私の「セカンドアルバム」だと思っています。
一つ一つの論文というのはおなじ研究者でも専門がよほど重ならないと読んでもらえません。しかし、本としてまとめると、「この人が何を考えてこんな研究をしているのか」というのがはっきり打ち出せますので、ちょっと専門がずれていても読んでもらえます。明治時代日本の研究をしていても、現在の社会についてどういう疑問や不安を持っているからこういう研究をしているのか、伝わりやすくなるからです。私の場合で言えば、明治時代の村の相互監視のあり方を、監視カメラの行き渡った社会と比べてみるとか。本の構想を作るときにはそういう、一回り外のことを考える面白さがあります。

学生へのメッセージ

私の研究みたいなのは、すごく狭い意味で「経済学」をとらえてしまうと「経済学」に入らないだろうと思います。しかし、慶應の経済学部というところは、人の営み全体を視野に入れて、総合的に社会のあり方を考えてゆくという、そういう学びのメニューを提供していて、それが一つの特色だと私は思っています。人間ひとりが作ってゆく、あるいは意図せずして作ってしまう社会の仕組みの不思議さみたいなものに、いつも眼を見開いていてほしいと思います。

プロフィール

松沢 裕作 写真2

1999年

東京大学文学部卒業

2002年

東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中途退学

2002年

東京大学史料編纂所助手、のち助教

2009年

博士(文学) 東京大学

2011年

専修大学経済学部准教授

2014年

慶應義塾大学経済学部准教授

2020年より現職

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