教授
古宇田 悠哉
数学(トポロジー)
数学は一つの言語――習得して新しい世界観を手に入れよう
研究テーマとその出会い
大学で数学を専門的に学ぶ中で、トポロジーとよばれる数学の分野に出会い、現在までずっと研究しています。大学で専攻して学ぶ数学では、問題を素早く解くことを競う高校(受験)数学とは違い、抽象的な概念を正確に把握し、それらの相互関係を理解することに重点が置かれます。高校までに習う数学とは質的に異なるため、面食らってしまう人も多いのですが、土台から着実に理解を積み重ねていくことができる学問のスタイルが私にはしっくりきました。数学を学ぶことで、まるで新たな言語を習得し、それによって知覚・探究できる世界がどんどん開けてくるような喜びを覚えました。授業やゼミ以外の時間も一人でこもって勉強していただけではなく、学年や大学の枠を超えて行っていたセミナーもいい思い出です。数学を学ぶ過程で、かつて手も足も出なかった難問がいつの間にか解けるようになっている、という爽快な体験をしましたが、それよりも、そもそも学ぶ前には想像もできなかったような魅力的な問題がいくらでもあるということに気付きました。現在の研究分野は、その頃おぼろげに見え始めた景色の中から一番輝いて見えたものを選びました。
研究テーマの魅力、面白さ
私が専門に研究しているのは多様体のトポロジーです。多様体というのは、数学の研究で使われる主要な空間モデルで、皆さんが1年生で学ぶベクトル空間の一般化です。なお、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュも多様体の研究で著名な業績があります。トポロジーとは、空間を柔らかいものとして捉え、その大まかな形状を調べる分野のことです。この分野には、結び目や曲面といった、直感的に捉えやすい素朴な概念が数多く存在します。素朴さゆえに、数学のさまざまな手法を使って好きな視点から研究できるところが魅力です。最近では、物理学、生物学、化学などの自然科学分野にとどまらず、情報科学や統計学でもトポロジーの手法が注目を集めています。
学生へのメッセージ
多様な出会いと学びを通じて広い視野と客観性を養っていただきたいと思います。さらに、出来れば専門性も身につけて欲しいです。専門的な知見を身につけると、自分にとってはごく当たり前のように思われる推論や些細な発見が、他の人にとっては斬新で独創的に映るということがあります。逆の立場から見ると、専門家は価値の高い洞察を無自覚に呟くことがあるので、そこに含まれる有益な情報に気付き、それを活用できる人材もまた重要です。そこを目指すにしても、学生生活での深い学びが生きてくると思います。
プロフィール
2003年 |
慶應義塾大学理工学部卒業 |
2005年 |
慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了 |
2007年 |
慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了 博士(理学) |
東京工業大学大学院理工学研究科特任助教、東北大学大学院理学研究科助教、広島大学大学院理学研究科准教授、同大学大学院先進理工系科学研究科教授を経て 2023年より現職 |