2024年7月25日から26日未明にかけて降り続けた大雨が、その水かさをみるみる増やし、26日、ついに氾濫してしまった最上川。
堤防を兼ねた国道47号線を乗り越えた濁流が一気に流れ込んでしまった最上郡戸沢村は、集落全体が浸水してしまった地区もあり、大きな被害を受けました。
豪雨直後こそ、いくらか報道を目にしたものの、その翌日に開会式を迎えたパリ・オリンピックの影響もあって、全国放送で山形の豪雨被害の状況が報道されるのは、地元放送局以外、ごく稀でした。
同じく大きな被害のあった山形県沿岸部の庄内地域へとつながる道路が最近ようやく復旧したものの、最上町を横断する陸羽東線や羽越本線の一部の復旧目処はたたず、周辺地域の観光客も減ってしまっています。
そこで今回、戸沢村でのボランティア活動をしつつ、編集者の藤本智士が周辺地域をしっかり観光。レンタカー必須ではありますが、最上地域を中心に、車で数十分あれば回れる場所をご紹介します。
そのポテンシャルは想像以上。災害支援という文脈がなくとも、十分楽しめる(食べ物多め)ので、この記事を参考に、山形県最上地域を、観光で応援しましょー。
<目次>
●最上の自然と人の温かさを感じるお店&スポット
・災害から5日後に営業再開!逞しき「最上川舟下り」
・戸沢村名物は韓国料理⁉
・日韓ひろばで韓国家庭料理を!
・絶品ぼた餅は、大人気の老舗和菓子屋の姉妹店
・見た目は派手だが、すぐ固くなる実直だんごは行列必至!
・尾花沢スイカは夏スイカの生産量日本一
・尾花沢で一番 のお店になる! だから「おーばん」の激推し●旅には欠かせない、最上地域の温泉&サウナ
・郷に入っては郷に従え、瀬見温泉の熱々風呂に感じる旅の醍醐味!
・安心して入れる快適日帰り温泉「赤倉ゆけむり館」
・サウナ好きならぜひ体験を! まさかの極上サウナ!Omusubi Sauna●居酒屋にラーメン、最上グルメも忘れずに!
・赤倉温泉、お勧め居酒屋その1
・赤倉温泉、お勧め居酒屋その2
・待つこと1時間、着丼までさらに1時間覚悟の、名物ラーメン
・スキー場で食べるラーメンとは思えない! 現代風めちゃうまラーメン☆記事に出てくるスポットは、最後にまとめてマップで紹介しています!
最上の自然と人の温かさを感じるお店&スポット
災害から5日後に営業再開! 逞しき「最上川舟下り」
猛暑の影響もあってボランティア活動が午前で終了した日。せっかくだからと向かったのは、戸沢村に乗船口がある「最上川舟下り」。
前日に降った雨の影響もあって水は茶色く濁っているものの、流れはとても穏やか。しかしところどころ土砂崩れの跡があり、自然の猛威を感じます。そんななかでも、船頭さんの名調子は絶好調で終始笑いが絶えませんでした。
実は今回の豪雨によって、係留していた舟16隻のうち11隻が流されてしまい、残った舟は5隻。豪雨の5日後には営業を再開したそのたくましさを感じるとともに、多くの従業員を守らねばと募る危機感や苦悩も感じます。
「氾濫したとかなんとか言って大騒ぎしてるのは人間だけで、鳥なんかはな〜んも変わらず、気持ちよさそう〜に空を飛んでる」
長閑な午後、船先に座って話す船頭さんの言葉のまま、鳥が青空に直線を描いているのが印象的でした。
最上峡芭蕉ライン観光株式会社
古口港(戸沢藩船番所)
山形県最上郡戸沢村大字古口86-1
0233-72-2001
https://www.blf.co.jp/
戸沢村名物は韓国料理!?
最上川沿いにある国道47号線を走っていると、誰もが二度見する、韓国時代劇の宮廷のごとし建物。
実はこれ、道の駅なんです!
「道の駅とざわ モモカミの里 高麗館」ができたのは1997年。そのはじまりは、戸沢村の農家さんたちと、栃木県にある「アジア学院」の留学生との農業技術交流でした。そこから婦人交流や児童交流、さらには国際結婚が進み、多くの韓国人のかたが戸沢村にやってきました。
丘に沿うように建てられた道の駅は、眺めも抜群
そしていざ建物に入れば、韓国フードのオンパレード!
この町の経済を応援しよう! と言いながら、韓国海苔や高麗人参ドリンクを買うのは不思議な気持ちでしたが、これも文化交流の一助になると思えば、より買い物も進みます。
ボランティア活動のために精をつけようと初めて飲んでみた高麗人参ドリンク。なんだかごぼうに似た香りだった。
道の駅とざわ モモカミの里 高麗館
山形県最上郡戸沢村大字蔵岡字黒渕3008-1(国道47号線)
0233-72-3303
http://kouraikan.com/
日韓ひろばで韓国家庭料理を!
そんな戸沢村には、美味しい韓国料理屋さんがいくつかあるのですが、なかでも人気なのが「日韓ひろば」。「スンちゃん」の愛称で親しまれる気さくなお母さんがつくる韓国家庭料理の美味しさ!
ボリューミーなプルコギ定食
暑い日にこそ熱いスンドゥブチゲ
そば粉が特徴の韓国冷麺も本格派。スンちゃんが食べやすいようにハサミを入れてくれます。
ボランティアでやってきた僕たちにずいぶんと感謝してくれて、帰りがけに「これ飲んで!」と、韓国の「ボンボン」という、果肉入りのぶどうジュースまでいただいてしまいました。
そんなスンちゃんですが、戸沢村にやってきた当時は、外国人というだけで家を見に来る人がたくさんいたり、地域の目に苦しんだ時代が長くあったそうです。そんな苦労の先で、いまでは多くの人に愛されるスンちゃん。なんだかとても感激しました。
日韓ひろば
山形県戸沢村蔵岡3718-1
0233-72-3351
絶品ぼた餅は、大人気の老舗和菓子屋の姉妹店
僕たちがボランティアに行った日にちょうど営業を再開された「戸沢のぼたもち」。その名の通り、戸沢村のお米でつくったぼたもち専門店。
あんこときなことごまの3種類。それぞれに美味しいのですが、僕はやっぱりあんこが一番好みでした(ちなみに一緒に行った仲間たちは、ごまが一番という意見が多かった)。
田舎風情なぼたもちながら、そのあんこの上品な甘さが程よくて、お話を伺ってみたら、実はこのお店、どら焼きが大人気の山形市の老舗和菓子屋「榮玉堂」の支店。それゆえ、あんこは榮玉堂のどら焼きと同じとのこと。どうりで!
実はこちら「戸沢のぼたもち」店主の妹さんが、「榮玉堂」のオーナーの奥さんなのだそうです。ある意味ガチの姉妹店!? 戸沢村からは離れますが、山形市「榮玉堂」のどら焼きもほんとおすすめなのでぜひ!
戸沢のぼたもち
山形県最上郡戸沢村大字古口374
0233-72-2012
見た目は派手だが、すぐ固くなる実直だんごは行列必至!
実は今回のボランティア&取材のなかで、唯一、二度伺ったお店があります。それが大石田という町にある「最上川千本だんご」。
16時半までの営業ということで、15時に戸沢村のボランティアを終えたその足でお店に直行。16時頃に無事到着したのですが、すでに、だんごは完売(涙)。しかし、その場で予約ができることを知り、しっかり予約をして翌日再チャレンジしたのでした。
とにかくまずは、このビジュアルを見てください!
その姿はまるでデコレーションケーキ!
砂糖や酵素といわれる添加物を一切入れず、昔ながらの製法でつくられた素朴なだんごに、これでもか! という盛り盛りデコレーション。素朴な団子と裏腹に、斬新なアレンジで人気爆発! 連日大行列のお店なのです。
ちなみに千本だんごの由来は、山形市の某百貨店のフェアで、「明日には固くなるだんごはいかが!」という呼び声で一日1,000本の販売を達成したことを機に、もともとの「大石田だんご」から、「最上川千本だんご」に改名したとのこと。
なかなか来れるもんじゃないしねえ、なんて言い訳をしながら少し多めに購入してしまった僕たちは、案の定、残ってしまっただんごを翌日に食べようとしたんですが、串から団子を外すことすらできないほどにカッチカチ!
なのでみなさん、その日に食べられる分だけを買うようにしましょうね。
最上川千本だんご
山形県北村山郡大石田町大字大石田乙76
0237-35-2312
https://www.ic-net.or.jp/home/tofu83/
尾花沢スイカは夏スイカの生産量日本一
大石田町の近くにあるのが、スイカで有名な尾花沢市。大石田町と共に、厳密には最上地域ではなく北村山地域になる尾花沢市はスイカの名産地!
しかも、ちょうどスイカの時期ということで、ロードサイドのいたるところでスイカの直売が。こういう産地独特の風景って好きなんですよね。ちなみに夏スイカの生産量は尾花沢が日本一。
まるで僕が買ったかのようですが、一緒にボランティアをした友人が買ったスイカ。しかも尾花沢スイカのなかでも近年の最高傑作と言われる「尾花沢スイカ 羅皇(ラオウ)」。
1株から1玉しか収穫しない“一果取り”で作られているので、栄養が集中し、甘さと食味の良さが抜群な大玉すいかとのこと。値札よりずいぶんおまけしてくれてましたよ。
JAではスイカテントの下で販売が
直売所では大抵スイカの試食ができます
スイカの時期を逃しても、スイカを使ったお酒やお菓子などがたくさん。だけど、やっぱり生のスイカが一番ですよね〜。ぜひ夏に!
おばね産直館「はいっと」
山形県尾花沢市新町5丁目8番71号
0237-22-2211
http://www.mitinoku.or.jp/haitto/
尾花沢で一番 のお店になる! だから「おーばん」の激推し
旅の途中、ついつい寄ってしまう地元スーパー。スイカの町、尾花沢にも独特なスーパーがありました。その名も「おーばん」。
尾花沢で一番のお店になる! という思いが込められています。いまでは市内だけでなく、県内20店舗を構える地元スーパーチェーンに成長。このおーばん、何が独特なのかと言うと、これです。
圧倒的な相撲推し!
尾花沢市出身の力士、元琴ノ若関、現佐渡ヶ嶽親方を激推ししており、『頑張れ佐渡ヶ嶽部屋 勝どきサービス』という、大関琴櫻関や幕内琴勝峰といった佐渡ヶ嶽部屋の関取力士が白星を挙げた際にのみ行われるタイムサービスがあるんです。まさにおーばんぶるまい!
ちなみに、僕たちが立ち寄った翌日、おーばんのすぐ目の前にある尾花沢市文化体育施設サルナートで、令和六年 夏巡業 大相撲尾花沢場所が開催されるということで、この通りの幟の数! こうやって応援されるお相撲さんも嬉しいだろうなあ。
おーばん 南尾花沢店
尾花沢市上町3丁目3-16
0237-22-2001
https://www.oh-ban.com/storeinfo/
ジモコロのローカル観光記事
この記事を書いたライター
有限会社りす代表。1974年生まれ。兵庫県在住。編集者。雑誌『Re:S』、フリーマガジン『のんびり』編集長を経て、WEBマガジン『なんも大学』でようやくネットメディア編集長デビュー。けどネットリテラシーなさすぎて、新人の顔でジモコロ潜入中。