はじめまして、ライターの淺野(あさの)と申します。
平成、終わってしまいますね。
平成4年生まれの僕は初めての改元に不思議な興奮を覚え、令和がどんな時代になるか期待に胸を膨らませています。
でも、このまま平成とお別れすることに、少しだけ不安を感じているんです。
考えてみると、日本語には少し前の時代を悪く言う言葉が溢れています。
「古臭い」「旧時代的」「一昔前の」……といったネガティブな表現とともに、「時代遅れの昭和のオッサン」などと心無い発言が横行してきたのです。
そして今。同じような呪詛の言葉が「平成のオッサン」になる僕に向け放たれることも覚悟しなくてはならないのです。
令和生まれの若者たちに、平成が侮られないためにはどうすればよいのか?
ヒントは、この時代に隠されています。
そう、ジュラ紀です。「ジュラシックパーク」の「ジュラ」です。
ジュラ紀(ジュラき、Jurassic period)は約1 億9960万年前にはじまり、約1億4550万年前まで続く地質時代である。 <ジュラ紀 – Wikipedia より>
とある通り、2億年くらい前にあった時代を指しています。地質時代とありますが、だいたい元号のようなものだと考えて良いでしょう。
少年時代の僕は、恐竜がひしめくジュラ紀にとにかく夢中でした。
学研の学習まんが『恐竜のひみつ』は、もはやバイブルです
背中に放熱板のついたステゴサウルス、野球場のグランドほど大きなブラキオサウルス。長い年月を経て樹液が固まったコハクなど……。
復元されたあまりにも巨大な化石や、そこから想像される太古の生活に心を躍らせていたのです。
化石にすればロマンが生まれる
一方で、平成生まれの僕は昭和の生活にあこがれを持ったことは殆どありません。
ジュラ紀と昭和の差はどこにあるのでしょうか?
その答えは、「経過した時間の長さ」です。
こちらの図をご覧ください。悠久の時を超えてもまだ残る物質の数々は、いつしか古さからロマンに代わり、素敵なもの・憧れの対象に変化していくことが分かるでしょう。
つまり、平成の産物を「ちょっと前」から「太古」に進めることができれば、来たる平成ディスという悲劇を回避することができるはずです。
残念ながら、今の技術をもってしても時を操ることはできません。しかし、ロマンを感じるための「平成の化石」なら作ることができるのではないでしょうか。
というわけで、さっそく化石の素になる平成アイテムを集めてみました。どんどん化石に変貌させていきたいと思います。
MDを「化石メディア」にする
ミニディスク(英語: MiniDisc)とは、ソニーが1991年(平成3年)に発表し、翌年の1992年(平成4年)に製品化したデジタルオーディオの光学ディスク記録方式、および、その媒体である。略称はMD(エムディー)。<ミニディスク – Wikipediaより>
中学時代、友達にオススメの音楽を詰めて渡されたのがMDでした。しかし今やストリーミングサービス全盛期。
秋葉原のジャンクショップに中古CDやカセットテープは山ほどあるのに、音楽用のMDは隅っこにたった数枚だけ。撤退した規格の哀愁を感じます。
まさに「化石メディア」という表現がぴったりきてしまうMD。再生できる装置も入手しづらくなっていますが、せめてMDを楽しんでいた人がいたという記憶は留めてほしいもの。
スマートフォンとも、CDとも異なるあのサイズ感を忘れないようにしたいですね。
そんな思いを込めて、化石を作ってみました。
平成化石図鑑No.1:ミニディスク把持手形
平成時代に短期間で姿を消した「ミニディスク」を握った人類の手形。
この7cm四方の長方形は音楽を受け渡すためだけに利用されていたという。
うっすらと確認できる「M」「D」という文字は、愛称のようなものだろうか。
……企画の趣旨をご理解いただけたでしょうか。このままドンドン行きたいと思います。
たまごっちをコハクで包む
パッケージに書かれたキャッチコピーは「ハイパーインタラクティブデジタルペット」。バブル感が強い
「たまごっち」は1996年11月23日に”デジタル携帯ペット”というコンセプトで発売され、女子高生を中心に大ブームを巻き起こした。
新しい遊びや機能を追加したシリーズが国内外で展開され、1996年から2017年9月末までに全世界累計8,200万個を販売している。<たまごっち公式ページより>
秋葉原で探しまわったものの、初代の純正たまごっちは見つからず。メルカリで探すとかろうじて発見することができます。
たまごっちのようなデジタル玩具はスマホに集約されてしまうのかもしれませんね。
今回の化石には実家の押入れから出土した、ボタンが反応せず壊れてしまったたまごっちを使います。
平成化石図鑑No.2:電子生命封入コハク
平成8年、人類は電子生命をペットとして飼育するようになった。
手のひらに収まるサイズの小型装置には、電子生命とコミュニケーションするための操作部と表示部が搭載されている。
類似のコハクが各所で発見されており、当時の爆発的普及が推察される。
観賞用フィギュアともいわゆる玩具とも異なる、「デジタルペット」という概念を打ち出したたまごっち。
クリアボディに生命が宿る姿は、さながらコハクに閉じ込められた古代生物のようではありませんか……?
「あゆマーク」が刻んだ歴史
企画を相談した女性陣から「平成ならこれは外せない!」と猛アピールを受けたのがこちら。
浜崎 あゆみは、日本の女性歌手・シンガーソングライター。愛称はあゆ、ayu。ロゴマークの角ばったAは「あゆみ」のイニシャルから。< 浜崎あゆみ – Wikipediaより>
平成を代表する歌姫・浜崎あゆみです。
初めて知ったのですが、あゆのマークは「A」をかたどったものだったんですね。公式サイトを見る限り、初めてCDのタイトルに使われたのが平成11年だと思われます。
浜崎あゆみというアーティストが与えた影響の大きさは、世の中に溢れる「あゆマーク」の多さが物語っています。
そう、まるで昔の人々の食生活の痕跡が「貝塚」として現代に残されているように……
平成化石図鑑No.3:あゆ塚
平成の中期以降にみられる象形文字が刻まれた土塊が硬化したもの。
似た形状の痕跡や宝飾品が大量に出土しており、特定の人物に心酔したコミュニティでの仲間意識を象徴するマークだったと思われる。
見てください、この圧倒的な「文明」っぽさ。
時代を築き、今なお現役で活動を続ける歌姫の力強さが刻まれた結果と言えるでしょう。
始祖鳥はパラパラを踊っていた?
さて、皆さんは「始祖鳥」をご存知ですか?
その名の通り、現在の鳥類の祖先と考えられている生き物で、羽を折りたたんだような形の化石が有名です。なんだか楽しげですよね。
見たことが無い方はぜひGoogleで画像検索してみてください
この独特に手足を曲げたポーズを見てると思い出すんです。
平成のギャルが生み出した伝統舞踊「パラパラ」を。
有名アニメのOPに突如現れた、スリルでショックでサスペンスなパラパラを踊る名探偵の真顔を。
中学一年生の秋、「Night of Fire」で踊る長州小力のパラパラを練習し、体育祭のパフォーマンスとして披露したことを……(なんで小力だったんだろう?)
平成化石図鑑No.4:ギャル原人舞踊図
渋谷地区を中心に流行した平成時代の舞踊が刻まれた板。
片腕を天に、もう片腕を顔にかざす構えは、「ギャル」と呼ばれる活動的な女性を象徴していたものだという。
たくさんの思い出が詰まったパラパラですが、重要無形文化財として認定される確率は低そうです。始祖鳥のように語り継がれることを願い、こちらで物質化しておきました。
場所と時代に縛られまいと抽象化されたギャル原人は、いつか未来人や宇宙人にもパラパラを伝えてくれることでしょう。
完成、平成の化石
こうして、平成時代を象徴する化石が4種類完成しました。
さすがにジュラ紀の恐竜にはかないませんが、平成が積み上げてきた歴史や文化を感じる仕上がりになったのではないでしょうか。
令和生まれの皆さんは、ぜひ感想を聞かせてくださいね!
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この記事を書いたライター
1992年生まれ。大学で3Dプリンタに出会いものづくりの楽しさを知り、研究員として勤務したのち独立。出身は長野市ですが、幼児期に引っ越したので記憶がうっすらしています。