プロ御用達のハードウェア・ソフトウェアメーカーとして幅広い製品展開をしている米Universal Audio。超パワフルなDSPを搭載するオーディオインターフェイスであり、ある意味スタジオそのものともいえるApolloシリーズはプロの世界で絶大な信頼を得ており、世界中で使われています。その大きな理由はUAD-2というプラットフォームにのっとったプラグインを使うことで、ビンテージ機材そのもののサウンドを手軽に得られるからでもありました。ここ数年でそのUAD-2プラグインの多くがDSPを使わずにCPUだけで動くネイティブ環境で動くようになったことは、これまでも何度か記事で紹介してきたとおりです。
そうした中、Universal Audioがまた面白い仕掛けを打ち出してきたのです。それは同じネイティブ環境で動くプラグインでありながら、ビンテージ機材を復刻させるというのとは異なる方向のプラグインの展開であり、その第一弾としてVerve Analog Machinesというものを発表すると同時に発売を開始したのです。これは名前の通りアナログっぽいサウンドを作り出すプラグインでとにかく簡単に使えるというもの。10種類のマシンをセットにしたVerve Analog Machines(通常価格30,040円)と4種類のマシンをセットにしたVerve Analog Machines Essential(通常価格14,940円)の2種類。4月30日5月31日までキャンペーン期間としてVerve Analog Machinesが14,940円となっている一方、Analog Machine Essentialのほうはなんと無料で配布しているのです(無料配布は2024年6月30日まで)。国内においてはプラグインなどのダウンロード販売サイトとして知られるbeatcloud.jpから入手可能になっているので、誰でも気軽に入手して使うことができます。実際Verve Analog Machines Essentialとはどんなものなのか紹介してみましょう。
※2024.5.1追記
当初4月30日いっぱいで終了とされていたVerve Analog Machines Essentialの無料配布およびVerve Analog Machinesのイントロセールが5月31日まで延期されることになりました。
※2024.5.29追記
イントロセールは5月31日までですが、Verve Analog Machines Essentialの無料配布は6月30日まで延期されることになりました。
Universal AudioからVerve Analog Machinesが誕生。エントリー版のEssentialは5月31日まで無料で配布
Universal AudioとUAD-2とは
Universal Audioの製品については、これまでDTMステーションでも何度も取り上げてきましたが、プロオーディオの世界で50年以上の歴史を持つ老舗であり、ビンテージ機材を今も丁寧に作り続けるメーカーでありながら、最先端のデジタル技術でDTMの世界をけん引するメーカーでもある、というユニークな会社です。
もう10年以上も前の記事ではありますが「ビンテージエフェクトを忠実に再現する、プロ御用達のUAD-2ってどんなもの!?」、「超強力エフェクト満載のUAD-2を使ってみた」を読むと、UAD-2が何なのかがある程度わかると思います。
一方で昨年11月の「プラグイン業界に激震! Universal Audioのプロ御用達UAD-2プラグインが、CPUベースでも動作し、超低価格に!」という記事を見ると、ここ最近でUAD-2が大きく変化してきていることも理解できると思います。
そのUniversal Audioが今回また新しいことをスタートさせたのです。
新たなネイティブプラグイン、Verve Analog Machines
今回登場したVerve Analog Machinesは、Mac、Windowsで普通に動作するネイティブプラグインで、MacではVST、AU、AAXまたWindowsではVST3、AAXの各環境に対応しているというものです。
Verve Analog Machinesはネイティブで動くプラグインとなっている
これまでのUAD-2のネイティブプラグインと異なるのは、そのコンセプト部分。従来のほとんどのUAD-2プラグインは、ビンテージ機材を正確に再現させるというものであり、プロのレコーディングスタジオの環境をそのままDTM環境で再現させることで、より手軽に、より自由に使えるようにする、というものでした。中には一部、仮想的な機材も含まれていましたが、基本的にはハードウェアを忠実にエミュレーションするものでした。
ガジェット的な仮想機器としてアナログサウンドを作り出すプラグインとなっている
それに対しVerve Analog Machinesはターゲットとするハードウェアがあるわけではなく、完全にバーチャルなプラグインで、アナログ的なサウンドに仕立てようというものであり、「アナログ・マジックが詰まったレトロ・フューチャーな魔法のマシンが10機種揃っている」とUniversal Audioは表現しています。
ヒップホップ、Lo-Fi、エレクトロニック、ロック、エクスペリメンタル・トラックで聴かれるカラフルなサチュレーションとエフェクトをDTM環境で実現させるというもので、遊び感覚で誰でも簡単にアナログ・サウンドが得られる、というのが大きな特徴となっています。たとえばキック、スネア、シンセにテープ・テクスチャーを与えたり、ボーカル、ギター、ベース、ミックス全体に真空管サウンドの暖かみを加えることができるというエフェクトです。
実際使い方はいたって簡単でDAWにプラグインとしてインサーションし、10機種の中から1つを選んで2つのパラメータを調整するだけ。具体的には以下の10種類となっています。
マシン | 特徴 | 用途 | VAM | VAM Essential |
Sweeten | 優しくオーバードライブできるクラシックなオープンリール・サウンドで、あらゆるものに暖かみを加える。 | ボーカルや楽器、ミックス全体にスタジオ級のテープ・サウンドを。 | 〇 | 〇 |
Edge | クランチーなサチュレーションでレコーディングに活力を与え、アナログ・コンソールのゲインを上げるような効果を得る。 | 退屈なレコーディングに命を吹き込む。 | 〇 | - |
Glow | ハイエンドの真空管プリアンプやチャンネル・ストリップに接続したときのような、豊かな倍音でトラックを輝かせます。 | ブライトなトラックや薄いサウンドのトラックを暖める。 | 〇 | - |
Warm | より古く、より大胆なテープマシン。Sweetenに似ていますが、より深い暖かみとワーブルがあります。 | 動きのあるテープ・サウンドを得る。 | 〇 | 〇 |
Thicken | タイムマシンに乗って、半世紀前の硬質なローファイ・テクスチャーを探求しよう。 | どんなトラックにもヴァイブと立体感を与える。 | 〇 | 〇 |
Vintagize | 自分だけのサウンドが作れます。あなたの祖父母よりも昔のテープサウンドを再現させることができます。 | モダン・レコーディングを古いサウンドに。 | 〇 | 〇 |
Distort | アナログ・プリアンプを少しハードにドライブするような、限界まで追い込まれたチューブ・サウンドが得られます。 | トラックを大胆でエキサイティングなサウンドにする。 | 〇 | - |
Overdrive | ThickenやVintagizeのようなテープ・トーンだが、より唸りや唸り感が強い。 | シンセ、ギター、ドラムなどにファジーなテープトーンを加える。 | 〇 | - |
Fire | 高温のマグマをトラックに流し込むような、焼け付くようなアナログ・サウンド。 | ボーカルや楽器にテクスチャーを加える。 | 〇 | - |
Sputter | レコーディングに壊れたサウンドが必要ですか?Sputterを使えば、エッジの効いたディストーションが得られます。 | トラックの限界を超える。 | 〇 | - |
4機種に絞ったEssentialが無料配布に
そして、今回の目玉はVerve Analog Machinesのエントリー版としてVerve Analog Machines Essentialというものが登場することで、これが4月30日5月31日まで無償配布となっているのです。
上の表を見てもわかる通り、Verve Analog Machinesが持っている10種類のマシンのうち、Sweetn、Warm、Thicken、Vintagizeの4種類に絞られているほか、パラメータがdriveのみになっているのが違いですが、このVerve Analog Machinesの面白さは存分に味わえるというもの。
Verve Analog Machinesの中の4つのマシンに絞ったエントリー版、Essentialのパラメータはdriveのみになっている
上位版のVerve Analog Machinesの場合はdriveでよりサチュレーションを強められるとともに、warbleで音の雰囲気を調整できるのに対し、Essentialにはdriveパラメータしかないのですが、プリセットがいろいろ用意されていて、これを選択することで内部的にwarbleの変更が行えるので、より簡単により分かりやすく使えて、Universal Audioならではのアナログサウンドにできるプラグインだと思います。
wableやtoneというパラメータはないけれど、プリセットが数多くあるので、これで十分サウンドのバリエーションを得られる
beatcloud.jpから今すぐ入手!
では、このVerve Analog Machines Essentialを入手するにはどうすればいいのか?国内ではUniversal Audioの代理店であるフックアップが運営するプラグインなどのダウンロード販売サイトであるbeatcloud.jpを通じて配布されています。
実際に入手するには、beatcloud.jpにログインする必要があるので、アカウントがない方は、サインイン画面の下にある「新規登録」をクリックしてアカウントを作成してください。
その後、以下のページにアクセスして、Verve Analog Machines Essential[Free]をカートに入れます。
https://beatcloud.jp/product/2439
その後、0円で注文を確定することで入手手続きが完了。その後、メールが届くので、そこにあるダウンロード先URLおよびライセンスシリアルキーなどを元にインストールを行っていきます。
基本的にはUniversal AudioのインストールアプリであるUA Connectを以下のサイトから入手します。
https://www.uaudio.jp/downloads/ua-connect/
UA Connectを使ってVerve Analog Machinesをインストールする
その後、このアプリを起動し、もしUniversal Audioのアカウントがない場合は、このアプリで氏名、メールアドレス、パスワードなどを入力してアカウントを作成の上、Verve Analog Machines Essentialのインストールを行ってください。
無料配布期間終了後、アップグレードも可能に
無料配布期間が終了すると、Verve Analog Machines Essentialも14,940円で販売が行われるのですが、無料版と有料版にはライセンス面での違いがあります。有料版のほうはiLokアカウント管理となるのに対し、無料版のほうはアクティベーションにおいてiLokは不要で、直接MacやWindowsにインストールする形であり、1台のみで利用するという形になっています。
一方、無料版のVerve Analog Machines Essentialから上位版であるVerve Analog Machinesへのアップグレードも可能になるようなので、安く入手するということも可能になるとのこと。もっとも、現在Verve Analog Machines自体も半額セールとなっているので、気に入ったら、今のうちに入手してしまうのもよさそうです。
UAD Producer EditionとVerve Analog Machinesをセットにした製品がセール展開されている
一方、UAD-2の定番プラグイン22種類をパックにしたUAD Producer Edition(通常価格60,240円)とVerve Analog MachinesをセットにしたProducer Edition + Verve Analog Machinesが、やはり4月30日5月31日まで30,040円という特価販売を行っています。せっかくならこのタイミングでこのセットを入手しているというのもよさそうです。
【関連情報】
Verve Analog Machines Essential情報
Verve Analog Machines情報
Producer Edition + Verve Analog Machines情報
【無料配布】
Verve Analog Machines Essential[Free]
【価格チェック&購入】
◎beatcloud ⇒ Verve Analog Machines
◎beatcloud ⇒ Producer Edition + Verve Analog Machines