【體育會蹴球部】小野澤謙真・父親譲りの走力と得点力
スポーツライターの斉藤健仁氏(ミスター・エンブレム)が、蹴球部の小野澤謙真君(環境情報1年)の記事を書いてくださったので、ご紹介させていただきます。(引用元:https://4years.asahi.com/article/15511926)
小野澤君は、「うなぎステップ」で名を馳せた元日本代表・小野澤宏時氏(WTB・FB)のご子息です。父親譲りのスピードに、サッカー経験を兼ね備えており、ポジションは11、14、15のバックスリー。うなぎの父から生まれた虎の子です。
高校日本代表イタリア遠征に参加した経験を持ち、今年の関東大学春季大会(5月12日)で初めてタイガージャージィを纏いました。この試合にはFBとして先発出場し、デビュー戦でハットトリックの活躍を見せて大物ぶりを示しました。
慶應義塾大・小野澤謙真 父親譲りの走力と得点力「早慶1年生対決には負けたくない」
2024/11/19(最終更新:)3連敗スタートから、伝統の「慶早戦」を前に復調
慶應大は開幕から筑波大学(12-34)、明治大学(7-52)に連敗スタートとなってしまった。その後帝京大学戦まで1カ月ほど試合が空く中で、選手たちで積極的に話し合いの機会を持ったという。「今季、『攻める慶應』を掲げている中、ディフェンスラインのスピードを上げて、ボールを奪い返してアタックすることをやってきた。そこを意識し直したことで、帝京大戦は負けてしまいましたが手応えを感じました」(小野澤)
王者・帝京大戦は小野澤が2トライを挙げたものの19-57で敗戦したが、力をつけてきている青山学院大学(20-10)、立教大学(39-14)戦では、守備は持ち前の粘りを見せ、攻撃では好機でしっかり得点を挙げて連勝し、5位以内に与えられる大学選手権出場が見えてきた。
秋が深まり、やっと調子が上がってきた中でライバル早稲田大と伝統の一戦を迎える。初の慶早戦となる1年生のWTB小野澤は「慶應はみんな(慶早戦へ)懸ける思いが強くて、早稲田大がどんな練習をしているかわかりませんが、『早稲田大以上の練習をしよう』という言葉がキーワードとして出ています。お客さんもたくさん入ると思うし、緊張はしますが、自分の強みや自分のしたいプレーができるように準備して臨みたい」と語気を強めた。
目標とする父は、「うなぎステップ」の宏時氏
小野澤の父・宏時氏は、「うなぎステップ」を武器にサントリーや日本代表で活躍した名WTBで、日本代表キャップ81を誇る名ランナーだった。母方も、祖父が大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)の竹内広明投手というスポーツ一家で生まれた。謙真という名前は父がファンである元・中日ドラゴンズの川上憲伸投手にちなんだという。
父親のプレーは「何度も秩父宮ラグビー場で見たことがある」という小野澤だが、幼稚園から熱中したのはサッカーだった。プロを目指して、小学校時代は横浜F・マリノスのスクールで、中学で父の母校・静岡聖光学院に進学すると清水エスパルスSSジュニアユースでプレーした。
しかし、中学3年の終わりにラグビー転向を決意する。2019年に日本でラグビーワールドカップが開催されたこと、そしてコロナ禍で父とラグビーをする機会があったことが大きかった。
「コロナ禍の自粛期間で、父とラグビーするようになって、父を意識するようになりました。また15人全員で戦う団体競技の楽しさがラグビーにあって、ラグビーで世界を目指してみたいと思うようになった」
「目標は父」と話す小野澤は、高校からラグビーに専念すると早々に頭角を現し、高校1年、3年と2度、「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場し、高校2年時にはオーストラリア留学も経験した。高校日本代表候補のセレクションマッチでは2トライを挙げ高校日本代表に選ばれ、イタリア遠征にも参加した。
大学デビュー戦でハット、エディーHCから合宿招集
大学はAO入試で慶應義塾大学の環境情報学部に合格した。小学校まで横浜に住んでいて地縁があったこと、高校時代に慶應義塾大の練習に参加して雰囲気の良さに引かれたこと、昨年の4年生だったWTB/FB矢部耀司さんが、AO入試のサポートをしてくれたことが大きかったという。
「(環境情報学部は)自分で授業を全部選べるので、部の練習時間と相談しながら授業を組むことができて、勉強とラグビーの両立ができています。英語だけの授業もあって、もし海外でプレーすることになれば良い経験になるかな。学校もラグビー部の雰囲気も僕に取ってプラスしかなく、これから伸びしろしかないです」
5月、大学デビューとなった春季大会・東洋大学戦でいきなりハットトリックを達成。その活躍を見ていた日本代表のエディー・ジョーンズHCは、すぐに日本代表候補選手たちが集まった菅平合宿に招集。また6月、将来性を買われて、他の大学生有望選手とともに「ジャパン・タレント・スコッド」プログラムに参加。ワールドカップに出場した日本代表やプロ選手との練習や、ジョーンズHCを始めとした日本代表のコーチ陣からの指導は、19歳の小野澤にとって大きな財産となった。
小野澤は「半年前まで高校ラグビーをしていたが、(ジョーンズHCから)速いラグビーをするために、大学1年生として必要なことを学べた。ランでは自分の強みを発揮できた場面もあったが、プロ選手とプレーすることでパス、フィットネス、フィジカルなど課題が見つかり、自分のレベルアップが加速されて何をやるべきかが明確となった」と笑顔を見せた。
FBとWTBで、対抗戦全5戦連続先発
夏合宿を経て迎えた秋の関東対抗戦では、同じ1年のFL中野誠章(桐蔭学園)とともに、開幕から5試合連続で先発出場中。サッカー経験がありキックにもたけた小野澤は、筑波大戦と、初の秩父宮ラグビー場でのプレーとなった明治大戦は15番だったが、帝京大戦から14番となり、ランで持ち味を発揮し、プレースキッカーとしてもチームの得点源となっている。
「大学ラグビーのスピードに目が慣れてきたり、フィジカル面や強さを知ったりして、自分の通用するポイントを知って徐々に良くなってきたかな。(WTBとなって)視野を広く保ったまま、FBのときより時間があって、自分がボールを持ったときに余裕が出てきて、相手の隙を狙ったり、自分のランニングが生かせるようになったりしてきた」
早稲田大戦に向けて、チーム、個人でどんなプレーをしたいかと聞くと、「好調な早稲田大は、アタック、ディフェンスともに完成度が高い。攻守ともに受けてしまうと相手の思うままになってしまうので、先手を打って自分たちのペースで、乗っていく時間を作りたい。個人としては、チームを前に出すというところで、得意なランニング、キックで前に出てチームの流れを作りたい」と意気込んだ。
慶早戦「大舞台でトライを取れたら最高」
「同学年のライバルに負けたくないし、1年生の中でも良い選手と言われるように頑張りたい」と話していた小野澤。早稲田大は、3月にともにイタリア遠征にいったFL城央祐(桐蔭学園)、SO服部亮太(佐賀工業)、そして帝京大戦でハットトリックを達成したWTB田中健想(桐蔭学園)ら、1年生の出場が見込まれている。
「3人ともレベルが高く、それぞれ強みを持っている選手なので、自分の強みを当てて、相手が困る、嫌だと思うプレーをしたい。キックが飛ぶ(服部)亮太との蹴り合いは楽しみですし、健想くんは(WTBの)逆サイドですが、お互いに動き回ると思うので、バックスリーとしてマッチアップしたときには負けないように集中してやりたい」
「日本代表は夢」と話す小野澤は、毎日、練習と授業の合間、時間を見つけてはウェートトレーニングにも精を出しており、「体重が増えてもランスピードが出るようになり、スプリントが課題なのでS&Cコーチと取り組んでいます」。身長は180cmと変わらないが、体重は高校時代より2kg増えて88kgになった一方で、体脂肪は2%落ちて10%になるなど、身体的な成長も実感している。
あらためて慶早戦に対する思いを聞くと、「常にトライは取りたいと思っていますが、大舞台で取れたら最高だと思います。ずっとトライを取るために練習しているので必ず結果を出したい」と前を向いた。
黒黄ジャージーの1年生エースが、大舞台で得意のランでトライを奪い、慶應義塾大に2010年以来の白星をもたらすことができるか。
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