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婦人科とは

婦人科とは、女性の生殖機能や女性ホルモンに関連する疾患を専門的に扱う診療科。子宮・卵巣をはじめとした生殖器系の腫瘍性疾患や、更年期障害、生理痛、不妊症などが主な治療対象です。

似ている診療科として「産科」がありますが、産科は妊娠・出産、婦人科は妊娠・出産以外の女性特有の病気に対応。なお、産婦人科は産科と婦人科両方の領域を扱う点が違います。

婦人科では、内視鏡・超音波検査を駆使して生殖器系の症状を診断する他、ホルモン療法や不妊治療なども実践。患者のQOL(Quality of life:生活の質)の維持も重要視されており、精神面のサポートも重要となっています。女性の健康維持に大きな影響力がある領域です。

婦人科で受けられる診療

「婦人科」は、女性の身体を総合的に診断し、子宮や卵巣、女性性器(子宮・膣)などの疾患の他、生理不順や更年期障害など、女性特有の病気や症状の治療とケアを行います。

病気の早期発見のためにも婦人科検診を受診することは重要とされており、特に子宮がんや乳がんの検診が重要視されています。

また、結婚を控えた女性は「ブライダルチェック」(血液検査や子宮がん、乳がん、性感染症などで問診や内診、超音波検査など)を行い、婦人家系の疾患がないか検査しておくと良いでしょう。

婦人科で診療できる病気一覧

婦人科で診療できる主な病気をご紹介します。

過少月経(かしょうげっけい)

特徴

過少月経とは、通常の月経より少ない経血の状態のこと。通常の月経期間は3~7日間ですが、それより短い2日間で終わると過少月経の可能性があります。生理周期が安定しない思春期や、生理の経血量が少なくなる更年期であれば問題のない病気です。

その他、子宮の発育不全や中絶による子宮内膜の癒着などが原因で起こることもあります。ただ過少月経には子宮の病気が隠れている場合があるため、いつもより極端に量が少ないと感じたら受診が必要です。

症状

過少月経の症状は月経血の量がいつもより少なかったり、月経期間が2日以内と短期間で終わったりします。月経の量としては、1日ナプキンをほとんど替えないくらいの量です。ただ低用量ピルを服用している場合、経血量を少なくする効果のために過少月経のような症状が現れますが病気ではありません。

また、ピル服用以外でも間違いやすい症状があります。それは生理以外に出血する「不正出血」と妊娠初期に現れる「着床出血」。月経とは違うため注意が必要です。

治療法

まずは、過少月経の症状が続くかどうかを観察します。環境の変化、過度なストレス、不規則な生活、ダイエットのしすぎ、太りすぎなどのホルモンバランスが崩れて起こる過少月経は、機能性過少月経です。

機能性過少月経は、ホルモンバランスを安定させるために規則正しい生活や健康的な身体作りをし、生活リズムを整えて経過観察していきましょう。30代以降の女性に多く、子宮異常や病気が原因で起こる過少月経を器質性過少月経と言い、器質性過少月経は療法で治療する場合もあるため、病院での受診をおすすめします。

過多月経(かたげっけい)

特徴

過多月経とは、通常の経血量より多く生理期間も長くなる病気です。レバーのようなドロッとした血の塊が出ます。いつもより量が多く、何度もナプキンを交換し、なかなか生理が終わらないということが続いた場合は、過多月経の可能性が高いです。

ふだんの生活に支障をきたすような場合も、過多月経と言えます。過多月経は子宮筋腫、子宮内膜炎、さらに卵巣の機能不全といった病気が影に隠れていることがあるため、注意が必要です。

症状

通常の生理の場合の平均出血量が20~100mlなのに対し、150ml以上の出血が出るのが過多月経の症状です。1時間ごとにナプキンを交換しなければならないほどの大量出血や、レバー状の血の塊が出るなど不快な症状を伴います。

あわせて、鉄欠乏性貧血の症状も現れることがほとんど。めまいや立ちくらみ、だるさや疲れと言った症状も少なくありません。過多月経は原因となる病気がある場合と、ホルモンバランスの崩れや血液の異常からなる場合とがあります。

治療法

過多月経の治療法は、原因により様々。ホルモンバランスが起因となる場合は生活リズムを整えたり、食生活を改善したり、あるいはストレスをためない、身体を冷やさないなどの対処をし、経過観察とします。病気が原因で過多月経の場合は、薬物療法や外科的処置が必要です。

薬物療法のひとつとして挙げられるのは低用量ピル。ピルを服用することで、経血量を安定させます。子宮筋腫や子宮内膜症が原因である場合、手術をしなくてはなりません。

外陰炎(がいいんえん)

特徴

外陰炎とは、腟の入り口周囲にあたる外陰部が炎症を起こす病気です。黄色ブドウ球菌などの細菌や、ヘルペスやヒトパピローマウィルスなどのウィルス、カンジダなどのカビやダニの感染が原因となることがあり、性交渉で感染することも少なくありません。

また、外陰炎は抵抗力の弱い小児や妊婦、エストロゲンの低下した老婦人及び糖尿病患者などでも発症します。下着がこすれたり、刺激の強い洗浄剤で洗ったりすることで炎症を起こすこともあり、腟炎を合併することもしばしばです。

症状

症状としては外陰部全体が赤く腫れたり、強いかゆみやヒリヒリとした痛みを伴ったりします。性器ヘルペスでは外陰部に水疱ができて強い痛みを伴い、重症化すると排尿や歩行が困難になることも。尖圭コンジローマでは、外陰部に乳頭状の腫瘍を認めます。

バルトリン腺炎は、バルトリン腺の排出管が閉塞し、分泌物がたまって細菌が感染し増殖。外陰部にしこりができ、痛みを伴います。毛ジラミが寄生することによる毛ジラミ症では、下着に黒色の点状のシミが付着することも。ダニやカンジダでは、強いかゆみを伴います。

治療法

原因に応じて治療を行います。感染症の場合の治療法は、病原菌に対する薬の投与や塗布です。おりものにも異常がある場合は、同時に腟炎の治療もしなければいけません。原因によって治療方法が変わるため、自己判断で市販楽を使わないようにしましょう。

余計に悪化させてしまい、治療が長引くことがあります。予防としては、デリケートゾーンをとにかく清潔に保つことが重要。通気性の良い綿下着や服を着用したり、ナプキンやシートをこまめに変えたりすることが大切です。

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)

特徴

子宮筋腫は、子宮の中にある筋肉の部分に腫瘍ができる病気です。子宮筋腫は小さなものも含めると、30歳以上の女性の20~30%に見られます。子宮筋腫は良性の腫瘍なので、それ自体が生命を脅かすようなことはありません。

しかし、放置しておくと赤ちゃんの頭ほど大きくなることもあります。腫瘍は1個の場合もあれば複数できることもあり、大きくなることもあれば、進行が遅いものも存在。女性ホルモンによって筋腫が大きくなるので、閉経後は小さくなることがほとんどです。

症状

子宮筋腫の主な症状は、月経量が多くなることと月経痛です。

筋腫のできる場所によって、症状は異なります。子宮の外側にできた場合は自覚症状がないことも多く、知らず知らずのうちに筋腫が大きくなっていることも多いです。

腫瘍が大きくなると膀胱や腸、腰椎を圧迫して、頻尿や便秘、腰痛をきたすことも。子宮の筋肉の中にできた場合、小さいものでは症状がないことが多いですが、大きくなると不正出血を認めることがあります。

子宮の内側にできた場合は小さいものでも症状が強く、特に月経量が多くなることが多いです。月経量が多くなると貧血になり、動機や息切れ、全身の倦怠感などを発症。また、不妊症や流早産の原因となることもあります。

治療法

子宮筋腫の治療法は、症状や筋腫の大きさ、場所、挙児希望の有無、年齢によって異なります。

症状がない場合は、年に一度の定期健診で経過観察を行い、貧血などの症状がひどい場合や、筋腫が不妊症の原因となっている場合は治療が必要です。治療には、薬物療法と手術療法があります。

薬物療法としては、閉経状態にしてしまう偽閉経療法と、ピルによる治療が可能です。また、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する器具を、子宮内に挿入することも。手術療法としては通常子宮を温存し、筋腫のみを摘出する手術を実施。

閉経後に子宮筋腫が増大し子宮肉腫が疑われる場合や、妊娠を望まず根治的な治療を望まれる場合は子宮の摘出を行います。

子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)

特徴

子宮頸管炎とは、子宮の入り口である子宮頸部の炎症です。

何らかの原因で、子宮頸管に細菌が入ることで引き起こされます。原因となる菌は主にトリコモナス原虫や、ヘルペスウィルスなど腟内の感染と同様の病原体です。性行為において淋菌、クラミジアに感染することもあります。

また、子宮頸管炎にかかっていると同時に、腟炎を併発していることも少なくありません。感染が広がっていくと、卵管や骨盤内にまで炎症が広がることもあります。卵管に感染が及ぶと、卵管が狭くなり不妊の原因になる可能性もあるため、注意が必要です。

症状

子宮頸管炎の症状としては、初期段階において黄色や緑色などのおりものが増加し、悪臭を伴うことも。腟炎を合併していることも多く、外陰部にかゆみを伴うこともあります。

重症化すると発熱、下腹部痛などを発症。妊娠中に感染すると、流産や早産の原因となることがあります。

子宮頸管粘膜に炎症が見られる場合は、月経期以外または性交後に性器出血が起きることも。また、不妊の可能性も高まるため、妊娠を望む人は注意しましょう。

治療法

子宮頸管炎の治療は、炎症の原因となっている病原体の確定及び治療が先決です。微生物学的検査で原因が分かれば、その後はそれに応じた適切な治療を行い、抗菌薬を投与したり、腟内の洗浄や消毒を行ったりします。

淋菌、クラミジアが原因だった場合、パートナーも発症していることが考えられるため、パートナーも精査加療が必要。また、完治するまでは性行為は避けましょう。治療後に再度感染することもあるため、治療後3~6ヵ月の間に再検査が必要です。

非特異性腟炎(ひとくいせいちつえん)

特徴

非特異性腟炎とは、腟内の洗いすぎやタンポンの抜き忘れなどが原因となり、ブドウ球菌や連鎖球菌などの病原菌が繁殖すると起こりやすくなる細菌性腟症のことです。

具体的には、腟内の環境を整える乳酸桿菌を主とする正常細菌叢が減少し、好気性菌や嫌気性菌が異常に増殖した状態のことを言います。

ただし、カンジダや淋菌、クラミジアなどの特定の微生物が検出されるものは含みません。異常に増殖した病原細菌が上行すると、子宮や卵管、骨盤内に炎症を起こすこともあります。

症状

非特異性腟炎の約半数は無症状です。おりものがいつもより多い、強い臭いを発するなどの症状が出て気付く人もいます。その他の症状としては、下腹部痛、不正出血などが挙げられますが、この限りではありません。

特に妊娠中は注意が必要です。異常に増殖した細菌が羊膜まで広がると絨毛膜羊膜炎を引き起こし、早産や前期破水の原因となることがあります。妊娠を予定している人で非特異性腟炎の疑いがある場合には、なるべく早く専門の病院で治療したほうが良いでしょう。

治療法

治療の基本は、腟の洗浄と抗菌薬の使用です。抗菌薬の効果を高めるために、病院では治療初期に滅菌蒸留水や生理食塩水で腟の洗浄を行います。

腟洗浄は、治療初期段階では投薬効果を高めるために重要です。しかし、診察時に毎回の腟洗浄は、腟内の乳酸桿菌の数を減らしてしまうため必要ではないとされています。乳酸桿菌を殺菌してしまう抗菌薬もあるので、抗菌薬の選択は重要。再発防止のためにも、パートナーの治療をすることも重要です。

頻発月経(ひんぱつげっけい)

特徴

頻発月経とは、正常な月経の周期である25~38日より短い、24日以内に月経がきた場合を言います。

原因としてはホルモンが不足し、黄体機能不全などの生理的な場合もありますが、排卵を伴っていないことも。不妊症の原因となることがあるので、妊娠を望んでいる場合は病院で検査を行いましょう。

頻発月経だと思っていても、他の病気が原因で不正出血を起こしていることがあるので注意が必要です。

症状

正常な月経の周期(生理がはじまった日から次の生理がくる前日までの日数)は、25~38日。頻発月経では月経の周期が24日以内と、前述の正常な月経周期よりも短いサイクルで月経が起こります。

通常、一度の月経での出血量は50~140ml程度ですが、月経が頻繁に起こるので貧血になることも。排卵を伴っていなければ不妊症の原因のひとつでもあるため、妊娠を希望している場合には産婦人科などで検査を行いましょう。

治療法

思春期や更年期などで、一時的に症状が現れる場合は特に治療は必要ありません。妊娠の希望があり、排卵を伴っていない場合は排卵誘発剤を使用し、排卵を促すことがあります。

排卵があり月経が起こる場合、体温に変化があり、月経開始から排卵までは低温期、排卵後から月経前までは高温期と二層に分かれるのです。無月経の場合、体温は低温期のまま一定です。

ホルモンの状態を知るために、基礎体温を付けましょう。普段から自分の生理周期を知っておくことも重要です。

卵管炎(らんかんえん)

特徴

分娩や中絶、月経時の不衛生、性交渉などにより、卵管が細菌に感染して炎症を起こします。

症状

急性期は発熱、悪寒、下腹部痛、多量の膿状のおりものがあります。慢性期には、下腹部の鈍痛や腰痛が現れ、おりものの増量などが見られるのが特徴です。

卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)

特徴

原因は不明ですが、卵巣の表層が陥入し、嚢腫ができるものと考えられています。

症状

はじめの自覚症状はありませんが、進行すると下腹部痛や頻尿、残尿感、便秘が発症。下腹部に激痛が走ることもあります。

淋病(りんびょう)

特徴

淋病とは、淋菌による感染症です。代表的な性感染症のひとつで、1回の性行為で感染する確率は約30%。男性の場合は、感染機会から2~7日の潜伏期間のあと、尿道炎や精巣上体炎を引き起こします。

女性の場合は、感染後も症状が現れないことが多いです。また、子宮頸管炎、子宮内膜炎、卵管炎などの原因となります。結膜炎、咽頭炎、直腸感染などの発症も見られ、妊娠中に感染すると産道感染により新生児結膜炎を引き起こすことも少なくありません。

症状

淋病の症状は、男性では顕著に現れることが多く、尿道に違和感があり、排尿時に痛みを伴って色の付いた膿のような分泌物が出ます。女性の場合、おりものの増加や不正出血を認めることもありますが、症状が明らかでない場合も多いです。

進行し、卵管炎、腹膜炎などを起こしてから初めて気付くこともあり、放置すると骨盤感染症や不妊になる恐れもあるので注意しなくてはなりません。PCR法などによる正確な診断を行うことができるようになってきているため、気になったら恥ずかしがらずに早めに受診しましょう。

治療法

淋病の治療には、非常に効果の高い2種類の抗生物質が用いられます。一般的にはこれらの抗生物質を1回注射するだけで淋菌を殺すことができますが、精巣上体や骨盤内に炎症が広がり、重症化した場合は複数回の投与が必要です。

またパートナーも感染している可能性があり、治療が必要になることも珍しくありません。治癒したと確認するまでは、感染する可能性があるので性行為は控えましょう。症状がなくなっても、決められた用量の抗生物質を服用しなければ再発することがあります。

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