GR東葛 選手が実践する栄養学的リカバリー戦略 -後編- | DESIRE TO EVOLUTION「DNS」

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選手が実践する栄養学的リカバリー戦略 -後編-

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DNSは20223月、NECグリーンロケッツ東葛とのオフィシャルサプライヤー契約を締結した。ここでは、DNSNECグリーンロケッツ東葛に派遣し栄養サポートを行う、管理栄養士・飯澤拓樹が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えする。

選手が実践する栄養学的リカバリー戦略 -前編-はこちら

■傷ついた身体を修復するための栄養戦略

ラグビーの特徴として、タックルやモール、スクラムといった激しいコンタクトプレーがあります。その他にも、スプリント(ダッシュ)を繰り返したり、80分動き続けたり、他の競技に比べても動きのバリエーションが多いスポーツです。つまり選手達は、ラグビーの試合の中で「筋トレ」、「短距離走」、「マラソン」をいっぺんに行っている様なものなのです。

これだけ身体に負荷のかかる試合を毎週末行っているのですから、筋肉へダメージは計り知れません。疲労の蓄積は怪我に繋がりますので、試合後から次の試合に向けて、身体をしっかりとリカバリーさせることが大切です。


練習中のGR東葛の選手達とWTB/CTB マリティノ・ ネマニ選手(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


■栄養摂取の継続性を高める「プロテインの有用性」

激しい試合やトレーニングで筋肉が傷つくと、筋肉はさらに強く・大きく成長するべく、筋タンパク質の合成が高まります。このような筋タンパク質合成の高まりは、運動後48時間程度持続するとされており5、それゆえに試合や練習日のみならず、翌日や翌々日まで戦略的に栄養摂取を行うことが求められます。さらに、アスリートがたんぱく質摂取の効果を最大化させるためには、1日あたり1.4~2.0g/kg体重のたんぱく質6を摂り、その際数時間置きに小まめに分けて摂取することが重要7と考えられています。

つまり、選手達は1日中、何度もたんぱく質を口にする必要があるのです。

しかし、それを食事のみで達成するのは難しいでしょう。準備の手間も、片付けの手間もかかります。栄養摂取は継続して初めて効果が出るものですので、「継続するためにいかにラクするか」を考える事も大切だと私は考えます。


チームではいつでもプロテインを飲めるよう常備している(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


たんぱく質摂取という点において、プロテインは非常に便利なサプリメントです。シェイカーに水を入れ、スプーンで粉を入れて数回シェイクすれば必要なたんぱく質が摂れてしまいます。選手達は、クラブハウスや自宅にプロテインを常備し、適切なタイミングで摂取できるよう環境を整えています。

■プロテインをスムージーにすればさらに完璧に?!

プロテインをはじめとするサプリメントの良いところは、「特定の栄養素を狙い撃ち」出来る点です。一方、サプリメントの課題は、「特定の栄養素しか摂れない」点でしょうか。プロテインであれば、(一部の商品を除いて)たんぱく質しか摂ることが出来ません。しかし、身体のリカバリーの為には、当然たんぱく質以外にも多くの栄養素が必要になります。

そこで私は、チームにスムージーレシピを紹介しました。朝や夕方に家で飲むプロテインにひと手間加えることで、プロテインパウダーだけでは摂れない栄養素も補い、リカバリーの助けになってくれることを期待しています。


クラブハウスに掲示するスムージーレシピ:作成 管理栄養士・飯澤(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


こちらのメニューは、プロテインに加えて、冷凍フルーツや低脂肪乳、バナナをミックスするものです。フルーツからは様々なビタミン・ミネラルを摂取することが出来ますし、バナナはトレーニングで消費したエネルギーの回復に役立ちます。それぞれを別々に摂ろうと思うと大変ですが、ミキサーで混ぜてスムージーにすれば簡単に摂ることが可能です。

プロテインスムージーを最も活用してくれているのが、NECグリーンロケッツ東葛のキャプテン、レメキロマノラヴァ選手です!レメキ選手はもともとプロテインを好んで飲まれるタイプではなかったのですが、シーズンが進み、リカバリーを強化する一環でこちらのスムージーを紹介したところ、大好評。

レシピを紹介して以降、毎日の様に飲んでくれている様です。

チームの管理栄養士としてとても嬉しいことに、レメキ選手からスムージーブーム(?)がチーム内に伝播している様で、今では様々な選手がスムージーを飲んでくれています。つい先日は、チームスタッフの一人である、スポーツサイエンティストの大前さんにも「スムージー飲むためにミキサー買いました!」と言っていただきました()

■リカバリーのサポートが期待される栄養素/サプリメント

今回、リカバリー戦略として前編では水分補給、後編ではプロテインをご紹介しましたが、選手のリカバリーサポートが期待される栄養素はこれ以外にも多く存在します。

EPAをはじめとするオメガ3系脂肪酸には、筋肉痛や疲労によるパフォーマンス低下を抑える効果8,9が期待されます。今回紹介したプロテインスムージーのレシピに使用している、ホエイプロテインSPに配合されるグルタミンHMBにもそれぞれ、免疫系のサポート10や、筋分解の抑制効果11などが期待出来ると考えられています。DNSから今年発売されたEAA PROも、プロテインと同様に筋肉のリカバリーを大いに助けてくれるでしょう。

これらの栄養素は、普段の食事で補えることもあれば、現実的にはサプリメントから摂取するほかないものもあります。食事とサプリメントを上手く組み合わせ、目的を達成したいと考えます。


GR東葛キャプテン レメキロマノラヴァ選手(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


長かった2022-2023シーズンもいよいよ終わりが見えてきました。選手の皆さんが良いコンディションで最後まで戦い続けられるよう、私も全力でサポートします。このコラムを読んでくださった皆様も、是非NECグリーンロケッツ東葛の応援をよろしくお願いいたします!



飯澤 拓樹

飯澤 拓樹 │ Hiroki_Iizawa

管理栄養士 / 修士(スポーツ健康科学)
新潟医療福祉大学を卒業後、福岡大学大学院にて修士号を取得。株式会社DNS マーケティングDiv.所属。契約アスリート/チームへの栄養サポートのほか、商品企画をはじめとしたマーケティング業務に従事している。主なサポート競技はラグビー、アメリカンフットボール、競泳など。自身も幼少期より競泳に打ち込む現役アスリートであり、日本社会人選手権出場に向けて、日々仕事とトレーニングに奮闘中。

【参考文献】

  • 5. Churchward-Venne, T. A., Burd, N. A. & Phillips, S. M. Nutritional regulation of muscle protein synthesis with resistance exercise: strategies to enhance anabolism. Nutr Metab (Lond) 9, (2012).
  • 6. Jäger, R. et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr 14, 1–25 (2017).
  • 7. Areta, J. L. et al. Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. Journal of Physiology 591, 2319–2331 (2013).
  • 8. Maughan, R. J. et al. IOC Consensus Statement: Dietary Supplements and the High-Performance Athlete. Int J Sport Nutr Exerc Metab 28, 104–125 (2018).
  • 9. Van Dusseldorp, T. A. et al. Impact of varying dosages of fish oil on recovery and soreness following eccentric exercise. Nutrients 12, 1–15 (2020).
  • 10. Castell, L. M., Poortmans, J. R. & Newsholme, E. A. Does glutamine have a role in reducing infections in athletes? Eur J Appl Physiol Occup Physiol 73, 488–90 (1996).
  • 11. Wilson, J. M. et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB). Journal of the International Society of Sports Nutrition vol. 10 Preprint at https://doi.org/10.1186/1550-2783-10-6 (2013).
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DNSは20223月、NECグリーンロケッツ東葛とのオフィシャルサプライヤー契約を締結した。ここでは、DNSNECグリーンロケッツ東葛に派遣し栄養サポートを行う、管理栄養士・飯澤拓樹が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えする。

選手が実践する栄養学的リカバリー戦略 -前編-はこちら

■傷ついた身体を修復するための栄養戦略

ラグビーの特徴として、タックルやモール、スクラムといった激しいコンタクトプレーがあります。その他にも、スプリント(ダッシュ)を繰り返したり、80分動き続けたり、他の競技に比べても動きのバリエーションが多いスポーツです。つまり選手達は、ラグビーの試合の中で「筋トレ」、「短距離走」、「マラソン」をいっぺんに行っている様なものなのです。

これだけ身体に負荷のかかる試合を毎週末行っているのですから、筋肉へダメージは計り知れません。疲労の蓄積は怪我に繋がりますので、試合後から次の試合に向けて、身体をしっかりとリカバリーさせることが大切です。


練習中のGR東葛の選手達とWTB/CTB マリティノ・ ネマニ選手(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


■栄養摂取の継続性を高める「プロテインの有用性」

激しい試合やトレーニングで筋肉が傷つくと、筋肉はさらに強く・大きく成長するべく、筋タンパク質の合成が高まります。このような筋タンパク質合成の高まりは、運動後48時間程度持続するとされており5、それゆえに試合や練習日のみならず、翌日や翌々日まで戦略的に栄養摂取を行うことが求められます。さらに、アスリートがたんぱく質摂取の効果を最大化させるためには、1日あたり1.4~2.0g/kg体重のたんぱく質6を摂り、その際数時間置きに小まめに分けて摂取することが重要7と考えられています。

つまり、選手達は1日中、何度もたんぱく質を口にする必要があるのです。

しかし、それを食事のみで達成するのは難しいでしょう。準備の手間も、片付けの手間もかかります。栄養摂取は継続して初めて効果が出るものですので、「継続するためにいかにラクするか」を考える事も大切だと私は考えます。


チームではいつでもプロテインを飲めるよう常備している(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


たんぱく質摂取という点において、プロテインは非常に便利なサプリメントです。シェイカーに水を入れ、スプーンで粉を入れて数回シェイクすれば必要なたんぱく質が摂れてしまいます。選手達は、クラブハウスや自宅にプロテインを常備し、適切なタイミングで摂取できるよう環境を整えています。

■プロテインをスムージーにすればさらに完璧に?!

プロテインをはじめとするサプリメントの良いところは、「特定の栄養素を狙い撃ち」出来る点です。一方、サプリメントの課題は、「特定の栄養素しか摂れない」点でしょうか。プロテインであれば、(一部の商品を除いて)たんぱく質しか摂ることが出来ません。しかし、身体のリカバリーの為には、当然たんぱく質以外にも多くの栄養素が必要になります。

そこで私は、チームにスムージーレシピを紹介しました。朝や夕方に家で飲むプロテインにひと手間加えることで、プロテインパウダーだけでは摂れない栄養素も補い、リカバリーの助けになってくれることを期待しています。


クラブハウスに掲示するスムージーレシピ:作成 管理栄養士・飯澤(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


こちらのメニューは、プロテインに加えて、冷凍フルーツや低脂肪乳、バナナをミックスするものです。フルーツからは様々なビタミン・ミネラルを摂取することが出来ますし、バナナはトレーニングで消費したエネルギーの回復に役立ちます。それぞれを別々に摂ろうと思うと大変ですが、ミキサーで混ぜてスムージーにすれば簡単に摂ることが可能です。

プロテインスムージーを最も活用してくれているのが、NECグリーンロケッツ東葛のキャプテン、レメキロマノラヴァ選手です!レメキ選手はもともとプロテインを好んで飲まれるタイプではなかったのですが、シーズンが進み、リカバリーを強化する一環でこちらのスムージーを紹介したところ、大好評。

レシピを紹介して以降、毎日の様に飲んでくれている様です。

チームの管理栄養士としてとても嬉しいことに、レメキ選手からスムージーブーム(?)がチーム内に伝播している様で、今では様々な選手がスムージーを飲んでくれています。つい先日は、チームスタッフの一人である、スポーツサイエンティストの大前さんにも「スムージー飲むためにミキサー買いました!」と言っていただきました()

■リカバリーのサポートが期待される栄養素/サプリメント

今回、リカバリー戦略として前編では水分補給、後編ではプロテインをご紹介しましたが、選手のリカバリーサポートが期待される栄養素はこれ以外にも多く存在します。

EPAをはじめとするオメガ3系脂肪酸には、筋肉痛や疲労によるパフォーマンス低下を抑える効果8,9が期待されます。今回紹介したプロテインスムージーのレシピに使用している、ホエイプロテインSPに配合されるグルタミンHMBにもそれぞれ、免疫系のサポート10や、筋分解の抑制効果11などが期待出来ると考えられています。DNSから今年発売されたEAA PROも、プロテインと同様に筋肉のリカバリーを大いに助けてくれるでしょう。

これらの栄養素は、普段の食事で補えることもあれば、現実的にはサプリメントから摂取するほかないものもあります。食事とサプリメントを上手く組み合わせ、目的を達成したいと考えます。


GR東葛キャプテン レメキロマノラヴァ選手(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


長かった2022-2023シーズンもいよいよ終わりが見えてきました。選手の皆さんが良いコンディションで最後まで戦い続けられるよう、私も全力でサポートします。このコラムを読んでくださった皆様も、是非NECグリーンロケッツ東葛の応援をよろしくお願いいたします!



飯澤 拓樹

飯澤 拓樹 │ Hiroki_Iizawa

管理栄養士 / 修士(スポーツ健康科学)
新潟医療福祉大学を卒業後、福岡大学大学院にて修士号を取得。株式会社DNS マーケティングDiv.所属。契約アスリート/チームへの栄養サポートのほか、商品企画をはじめとしたマーケティング業務に従事している。主なサポート競技はラグビー、アメリカンフットボール、競泳など。自身も幼少期より競泳に打ち込む現役アスリートであり、日本社会人選手権出場に向けて、日々仕事とトレーニングに奮闘中。

【参考文献】

  • 5. Churchward-Venne, T. A., Burd, N. A. & Phillips, S. M. Nutritional regulation of muscle protein synthesis with resistance exercise: strategies to enhance anabolism. Nutr Metab (Lond) 9, (2012).
  • 6. Jäger, R. et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr 14, 1–25 (2017).
  • 7. Areta, J. L. et al. Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. Journal of Physiology 591, 2319–2331 (2013).
  • 8. Maughan, R. J. et al. IOC Consensus Statement: Dietary Supplements and the High-Performance Athlete. Int J Sport Nutr Exerc Metab 28, 104–125 (2018).
  • 9. Van Dusseldorp, T. A. et al. Impact of varying dosages of fish oil on recovery and soreness following eccentric exercise. Nutrients 12, 1–15 (2020).
  • 10. Castell, L. M., Poortmans, J. R. & Newsholme, E. A. Does glutamine have a role in reducing infections in athletes? Eur J Appl Physiol Occup Physiol 73, 488–90 (1996).
  • 11. Wilson, J. M. et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB). Journal of the International Society of Sports Nutrition vol. 10 Preprint at https://doi.org/10.1186/1550-2783-10-6 (2013).
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