3年ぶりの「うっかりドーピング」事例 | DESIRE TO EVOLUTION「DNS」

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3年ぶりの「うっかりドーピング」事例

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3年ぶりの「うっかりドーピング」事例

3年ぶりの「うっかりドーピング」事例

2022年5月、「うっかりドーピング」のニュースが流れました。私たちDNSがインフォームドチョイスを介して他のメーカーとも協力してアンチ・ドーピング活動を進めてきた成果もあってか、ここ3年ほどはサプリメントによるうっかりドーピングで違反になる日本人選手はいなかったのですが、残念ながら本件により当該選手に対しては資格停⽌5ヶ⽉などの処分が確定してしまいました。

■3年ぶりの「うっかりドーピング」

JADA(日本アンチ・ドーピング機構)の発表によると、ラグビー、リーグワンに所属する日本人選手 からWADA(世界アンチ・ドーピング機関)が禁止物質と指定するオスタリン(enobosarm)が検出されたとのことです。実際に違反が発覚したのは202112月でしたが、日本アンチ・ドーピング規律パネル委員会での決定事項が発表されたのは、20224月でした。

JADAから公表されている規律パネル決定文書(※1)を読み解くと、違反の詳細が見えてきます。その中で私が注目したのは、当該サプリメント(クレアチンを含む)が国産であることと、検出された禁止物質がオスタリンであるという2点です。

オスタリンとは、欧米では「合法」とされるSARMs(選択的アンドロゲン受容体修飾薬)というクラスのステロイドの一つで、蛋白同化薬になります。全ての細胞に効いてしまう一般的なステロイドとは異なり、筋肉細胞に特異的に作用するため、副作用も少ないとされています。ごく一部の悪質なボディビルダーが好んで使うことで知られており、インターネットでも購入できるのですが、禁止物質ですのでアスリートは絶対に使ってはいけません。

オスタリンは20182019年に日本の競泳選手2人が立て続けにドーピング違反となった原因の物質としても知られています。いずれのケースも汚染サプリメントの非意図的な摂取が原因であったことが認められ、制裁期間は短縮されました。しかし、本人たちの選手生命には大きなダメージが残ることになったことは想像に難くありません。

■「国産サプリメント」

競泳選手による2件の違反も、国産のサプリメントの汚染が原因とされています。特にうち1名の選手の詳細が示されている「仲裁判断の骨子JSAA-DP-2019-00120191112日付)」によれば、この選手が摂取した国内メーカー産のサプリメントからオスタリンが検出されたとのことです。現在は公益財団法人日本スポーツ仲裁機構のウェブサイトでこの文書を確認することできないのですが(※2)、私が以前このサイトからダウンロードした文書には、この競泳選手の担当トレーナー、その友人であるこの国内メーカーの社長を含め、当該選手が汚染サプリメントを摂取するに至った経緯が詳細に記されています。

当然ながら今回のラグビー選手の件も、競泳選手の件も、問題となった国産サプリメントは第三者によるアンチ・ドーピング認証は受けていません。実は、サプリメントの中にオスタリンが含まれているかどうかを分析することができる機関は国内にはありません。WADA認定分析機関であるLSIメディエンスは、ヒトの検体を分析しているので分析することは可能ですが、仲裁機構などによる調査目的以外の分析では、サプリメントの中にオスタリンが入っているかどうかの分析を行うことはできないのが実状です。

■アンチ・ドーピング認証の必要性

信頼あるアンチ・ドーピング認証を受けていない製品を口にしてしまうアスリートの認識の甘さと、国内の分析体制の脆弱さなど、課題はまだまだあります。国内のアンチ・ドーピングプログラム及び「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」にも問題点が多いと感じます。詳細については、以下の記事にて取り上げましたのでご参照ください。

アンチ・ドーピングプログラムの「ピンキリ」:https://www.dnszone.jp/magazine/2021/21279

アスリートがサプリメントを摂取する際には、第三者によるアンチ・ドーピング認証を受けている製品であることが絶対です。そして、インフォームドチョイスをはじめ、第三者によるアンチ・ドーピング認証を受けた製品であれば、「うっかりドーピング」は確実に回避することができます。DNSは今後も「うっかりドーピング」の根絶に向け、啓発活動を推進していきます。



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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2022年5月、「うっかりドーピング」のニュースが流れました。私たちDNSがインフォームドチョイスを介して他のメーカーとも協力してアンチ・ドーピング活動を進めてきた成果もあってか、ここ3年ほどはサプリメントによるうっかりドーピングで違反になる日本人選手はいなかったのですが、残念ながら本件により当該選手に対しては資格停⽌5ヶ⽉などの処分が確定してしまいました。

■3年ぶりの「うっかりドーピング」

JADA(日本アンチ・ドーピング機構)の発表によると、ラグビー、リーグワンに所属する日本人選手 からWADA(世界アンチ・ドーピング機関)が禁止物質と指定するオスタリン(enobosarm)が検出されたとのことです。実際に違反が発覚したのは202112月でしたが、日本アンチ・ドーピング規律パネル委員会での決定事項が発表されたのは、20224月でした。

JADAから公表されている規律パネル決定文書(※1)を読み解くと、違反の詳細が見えてきます。その中で私が注目したのは、当該サプリメント(クレアチンを含む)が国産であることと、検出された禁止物質がオスタリンであるという2点です。

オスタリンとは、欧米では「合法」とされるSARMs(選択的アンドロゲン受容体修飾薬)というクラスのステロイドの一つで、蛋白同化薬になります。全ての細胞に効いてしまう一般的なステロイドとは異なり、筋肉細胞に特異的に作用するため、副作用も少ないとされています。ごく一部の悪質なボディビルダーが好んで使うことで知られており、インターネットでも購入できるのですが、禁止物質ですのでアスリートは絶対に使ってはいけません。

オスタリンは20182019年に日本の競泳選手2人が立て続けにドーピング違反となった原因の物質としても知られています。いずれのケースも汚染サプリメントの非意図的な摂取が原因であったことが認められ、制裁期間は短縮されました。しかし、本人たちの選手生命には大きなダメージが残ることになったことは想像に難くありません。

■「国産サプリメント」

競泳選手による2件の違反も、国産のサプリメントの汚染が原因とされています。特にうち1名の選手の詳細が示されている「仲裁判断の骨子JSAA-DP-2019-00120191112日付)」によれば、この選手が摂取した国内メーカー産のサプリメントからオスタリンが検出されたとのことです。現在は公益財団法人日本スポーツ仲裁機構のウェブサイトでこの文書を確認することできないのですが(※2)、私が以前このサイトからダウンロードした文書には、この競泳選手の担当トレーナー、その友人であるこの国内メーカーの社長を含め、当該選手が汚染サプリメントを摂取するに至った経緯が詳細に記されています。

当然ながら今回のラグビー選手の件も、競泳選手の件も、問題となった国産サプリメントは第三者によるアンチ・ドーピング認証は受けていません。実は、サプリメントの中にオスタリンが含まれているかどうかを分析することができる機関は国内にはありません。WADA認定分析機関であるLSIメディエンスは、ヒトの検体を分析しているので分析することは可能ですが、仲裁機構などによる調査目的以外の分析では、サプリメントの中にオスタリンが入っているかどうかの分析を行うことはできないのが実状です。

■アンチ・ドーピング認証の必要性

信頼あるアンチ・ドーピング認証を受けていない製品を口にしてしまうアスリートの認識の甘さと、国内の分析体制の脆弱さなど、課題はまだまだあります。国内のアンチ・ドーピングプログラム及び「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」にも問題点が多いと感じます。詳細については、以下の記事にて取り上げましたのでご参照ください。

アンチ・ドーピングプログラムの「ピンキリ」:https://www.dnszone.jp/magazine/2021/21279

アスリートがサプリメントを摂取する際には、第三者によるアンチ・ドーピング認証を受けている製品であることが絶対です。そして、インフォームドチョイスをはじめ、第三者によるアンチ・ドーピング認証を受けた製品であれば、「うっかりドーピング」は確実に回避することができます。DNSは今後も「うっかりドーピング」の根絶に向け、啓発活動を推進していきます。



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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