デジタル社会の実現に向けた重点計画|デジタル庁 本文へ移動

デジタル社会の実現に向けた重点計画

デジタルの活用で一人ひとりの幸せを実現するために

2024年6月21日、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。
閣議決定された重点計画の資料は、ページ下部の資料をご確認ください。

本ページでは、重点計画の内容を要約してご紹介しています。本ページ掲載内容の紹介資料からもご確認いただけます。ぜひ、ご覧ください。

目次

はじめに

誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を
2021年9月1日、日本のデジタル社会実現の司令塔としてデジタル庁が発足しました。
デジタル庁は、この国で暮らす一人ひとりの幸福を何よりも優先に考え、国や地方公共団体、民間事業者など関係者の方々と連携して、社会全体のデジタル化を推進する取組を牽引していきます。
この資料では、これからの日本が目指すデジタル社会の姿と、それを実現するために必要な考え方や取組について紹介します。

重点計画とは

目指すべきデジタル社会への羅針盤
この計画は、目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記し、各府省庁が構造改革や個別の施策に取り組み、それを世界に発信・提言する際の羅針盤となるものです。
また同時に、デジタル庁のみならず、各府省庁の取組も含め工程表などスケジュールとあわせて明らかにするものでもあります。

重点計画に記載した施策は、進捗や成果を定期的に確認しながらPDCAサイクルの徹底を図ります。そして、デジタル化の進捗を大局的につかむ指標として、国民や民間企業の満足度、利用率などを把握・公開しながら、必要な施策の追加・見直し・整理を行います。

概要

  1. デジタルにより目指す社会と6つの姿
  2. デジタル社会の実現に向けた理念・原則
  3. 重点課題
  4. 重点課題への対応の方向性
  5. 重点課題に対応するための重点的な取組

1. デジタルにより目指す社会と6つの姿

高齢の人が乗っている車椅子を押している人と、子供の手を引いた人が描かれたイラスト。4人とも右に進もうとしている。
デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会
社会全体のデジタル化は、国民生活の利便性を向上させ、官民の業務を効率化し、データを最大限活用しながら、安全・安心を前提とした「人に優しいデジタル化」であるべきです。
デジタル技術の進展により、一人ひとりの状況に応じたきめ細かいサービスが低コストで提供できるようになり、多様な国民・ユーザーが価値ある体験をすることが可能となってきました。
デジタルの活用で目指すのは、これをさらに推進し、誰一人取り残されることなく、多様な幸せが実現できる社会です。

デジタル社会で目指す6つの姿

  1. デジタル化による成長戦略 
    社会全体の生産性・デジタル競争力を底上げし、成長していく持続可能な社会を目指す。
  2. 医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化
    データ連携基盤の構築等を進め、安全・安心が確保された社会の実現を目指す。
  3. デジタル化による地域の活性化
    地域の魅力が向上し、持続可能性が確保された社会の実現を目指す。
  4. 誰一人取り残されないデジタル社会
    誰もが日常的にデジタル化の恩恵を享受できるデジタル社会の実現を目指す。
  5. デジタル人材の育成・確保
    デジタル人材が育成・確保されるデジタル社会を実現する。
  6. DFFTの推進をはじめとする国際戦略
    国境を越えた信頼性ある自由なデータ流通ができる社会の実現を目指す。

2. デジタル社会の実現に向けた理念・原則

手旗を持った人物が描かれたイラスト。
誰一人取り残されないデジタル化の恩恵を享受できる社会を実現するため、理念・原則をあらゆる施策や取組において徹底。

デジタル社会形成のための基本10原則

  1. オープン・透明
  2. 公平・倫理
  3. 安全・安心
  4. 継続・安定・強靭
  5. 社会課題の解決
  6. 迅速・柔軟
  7. 包摂・多様性
  8. 浸透
  9. 新たな価値の創造
  10. 飛躍・国際貢献

国の行政手続オンライン化の3原則

  1. デジタル第一原則(デジタルファースト)
    個々の手続 サービスが一貫してデジタルで完結
  2. 届出一度きり原則(ワンスオンリー)
    一度提出した情報は二度提出が不要
  3. 手続一か所原則(コネクテッド・ワンストップ)
    民間サービスを含む複数の手続き・サービスをワンストップで実現

構造改革のためのデジタル原則

  1. デジタル完結・自動化原則
  2. 機動的で柔軟な政策形成・実施(アジャイルガバナンス)原則
  3. 官民連携原則
  4. 相互運用性確保原則
  5. 共通基盤利用原則

業務改革(BPR)の必要性

以下のサービス設計12箇条に基づき、BPR(※1)に取り組みます。

  1. 利用者のニーズから出発する
  2. 事実を詳細に把握する
  3. 一気通貫で考える
  4. 全ての関係者に気を配る
  5. サービスはシンプルにする
  6. デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
  7. 利用者の日常体験に溶け込む
  8. 自分で作りすぎない
  9. オープンにサービスを作る
  10. 何度も繰り返す
  11. 一遍にやらず、一貫してやる
  12. 情報システムではなく、サービスを作る

クラウド第一(クラウド・バイ・デフォルト)原則

クラウドサービスの利用を第一候補として検討するとともに、共通的に必要な機能は共用できるように、機能ごとに細分化された部品を組み合わせて適正(スマート)に利用する設計思想に基づいた整備を推奨します。

個人情報等の適正な取扱いの確保および効果的な活用の促進

個人の権利利益の保護と個人情報の適正かつ効果的な活用のバランスを考慮します。

3. 重点課題

3人の人物が肩を組んでいるところを上から見たイラスト。

人口減少および労働力不足(リソースの逼迫)

人口減少や大都市圏への人口集中などにより労働力が不足し、公共サービスを維持できなくなることが懸念されています。
行政手続等に残存している無駄や不便を解消する必要性が増しており、デジタル技術を適用した、さらなる最適化・効率化が求められます。

産業全体の競争力の低下

「データの蓄積・利活用が進んでいない」、「生成AI等の活用が進んでいない」などから、産業全体の競争力の低下が進むとともに、デジタル収支は悪化・拡大傾向にあります。
デジタル化を進め、生産性の向上や新ビジネスの創出が求められます。

災害やサイバー攻撃などの脅威

自然災害や自然資産の喪失、廃棄物処理の環境負荷の増大、感染症の世界的流行などの脅威に対して、データ連携をはじめ、デジタル技術を活用した課題解決が求められます。
また、サイバー攻撃への対処能力など、デジタル自体における持続可能性も課題となっています。

「デジタル化」に対する不安やためらい

「社会の『デジタル化』について良いと思わない」、「デジタル化に適応できていない」といった声が一定数あります。また、諸外国と比べて、オンラインサービスに対する満足度が低調であり、デジタルツールを「使ってみる」ことにも消極的であるという調査結果もあることから、デジタル社会を目指すにあたっては、このような状況を念頭に置く必要があります。

4. 重点課題への対応の方向性

2人の人物が歩きながら手をつなごうとしているイラスト。

デジタル産業基盤の強化

産業競争力の強化と労働生産性の上昇を実現していくには、最先端技術の利用やデータ駆動型経営への転換も含めた「デジタル化」によって、効率化によるコスト削減、既存事業の付加価値向上および新規ビジネス創出を図ることにより、持続的な成長につなげることが重要です。そこで、「AI・データの徹底した利用」、「デジタルに関する供給側・需要側双方の産業のモダン化(※2)」、「デジタル活用やDX推進のための人材育成」を強化します。

「デジタル化」が「当たり前」となる取組の強化

デジタルを活用して様々な課題を具体的に解決し、極力人の手を介さないこと、無駄・不便を発生させないことにより、良質な体験と満足につなげ、デジタル化のメリットを実感できる分野を着実に増やしていきます。また、政策データの可視化(政策ダッシュボード等)の取組を強化し、目指す社会に向けた進捗確認と継続的改善を行うとともに、情報発信・広報も積極的に行います。

データ連携による持続可能性の強化

データ連携の推進や、信頼性を確保しつつデータを共有できる標準化された仕組み(データスペース)の構築など、国際的な視点も持ち、官民で協調して取組を強化していきます。
また、有事や大規模災害の発生に備えた、データ自体の消失やネットワークや電力供給の途絶などのデジタル化に伴う危機管理(リスクマネジメント)も強化します。

国と地方が共通利用できるデジタル基盤の整備・運用

人口減少社会においても公共サービスをデジタルの力で維持・強化していくためには、約1,800の自治体が個々にシステムを開発・所有するのではなく、国と地方が協力して共通システムを開発し、それを幅広い自治体が利用する仕組みを広げていくことが重要であり、国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に取り組みます。

国際連携の強化

世界規模での持続可能性に関する課題解決のためには、国際展開を常に視野に入れた市場形成や施策が必要です。サイバーセキュリティや信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)など、デジタルに関する基盤整備について有志国との国際連携を強化していきます。

5. 重点課題に対応するための重点的な取組

ノートパソコンに向かっている人と、鉛筆を持って何か書いている人のイラスト。二人は背中合わせに位置している。

  1. デジタル共通基盤構築の強化・加速
  2. 「制度・業務・システム」の三位一体での取組
  3. デジタル行財政改革の実行
  4. デジタル・ガバメントの強化(システムの最適化)
  5. デジタル化に関わる産業全体のモダン化
  6. データを活用した課題解決と競争力強化
  7. セキュリティ
  8. 最先端技術における取組

1. デジタル共通基盤構築の強化・加速

1. デジタル完結の基盤となる取組

個人向け

  • マイナンバー制度の推進
    法律に基づき、社会保障制度、税制、災害対策分野以外の行政手続においても、マイナンバーの利用の推進を図るとともに、2024年夏までに各事務におけるマイナンバー制度の利用可能性に関しての網羅的な調査を実施。
    次期通常国会への法案提出を目指します。
    また、マイナンバー情報総点検を踏まえて、マイナンバー法の特定個人情報の正確性の確保のための支援規定に基づき、紐付け実施機関に対する丁寧な支援を実施します。
  • マイナンバーカードの普及と利活用の推進
    円滑なカード取得のための申請環境および交付体制整備をさらに促進するとともに、スマートフォンから様々な行政手続ができる「オンライン市役所サービス」の徹底と、日常生活で利用できるようにする「市民カード化」を推進。マイナンバーカードが持つ本人確認機能の民間ビジネスにおける利用普及も推進します。
  • マイナンバーカードの普及と利活用推進のための具体的な取組
    • 健康保険証との一体化
    • 救急業務の迅速化・円滑化
    • 健康・医療・介護分野におけるデジタル化への活用
    • 運転免許証との一体化
    • 在留カードとの一体化
    • 障害者手帳との連携強化
    • 年金情報との連携強化
    • 資格情報のデジタル化
    • 確定申告の利便性向上に向けた取組の充実
    • 引越し手続のデジタル化のさらなる推進とデジタル完結の検討
    • 死亡相続手続のデジタル完結
    • 在外選挙人名簿登録申請のオンライン化等の検討
    • 「市民カード化」の推進
    • 公金受取口座の活用推進
    • スマートフォンへの搭載など利便性の向上
    • 様々な民間ビジネスにおける利用の推進
    • マイナポータルAPI(※3)の利用拡大等による官民のオンラインサービスの推進

事業者向け

  • 公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)の整備
    公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)について、公的基礎情報データベース整備改善計画を策定し、総合的かつ計画的に整備や利用を推進。
    また、データの品質を確保するため、関係機関の役割や具体的な取組を検討します。商業登記・不動産登記関係データベースについては、整備改善計画で定めた行政機関や自治体が利用できるデータベースの整備を行います。住所・所在地関係データベースについては、2024年度中に町字情報を整備し、データの最新性を保ちます。
  • 全体最適を意識した事業者向けサービスのシステム整備
    事業者向けの行政サービスについても、全体最適を意識したシステムの整備が重要です。以下の3点を大きな課題として整理します。
    • 事業者向け行政サービスの利用者体験向上に向けた環境整備
      事業者が様々な行政サービスにアクセスできる事業者ポータルについて、e-Govの機能の活用可能性検討および実証版構築を進める。次期調達ポータルにおいて、国の調達全般に係るポータルサイトを目指すことで、事業者への利便性向上を図る。
    • 事業者向け行政サービスで利用する共通機能の整備
      GビズIDについて、原則すべての行政手続での採用を目指す。行政手続において共通的に必要な機能等は、既存機能・システムの活用可能性等を検討し、実装計画を整備する。官民取引や企業間取引のデジタル完結とデータ相互運用性の確保を目指す。
    • 各府省庁における事業者向け行政手続・補助金申請等のデジタル化
      年間手続件数の少ない行政手続は共通機能の活用等を通じて、効率的な開発・費用負担低減を目指す。
      大規模な行政手続システム等については、モダン化を検討する。
      補助金申請については、2025年度以降、補助金の電子申請対応を原則とし、電子申請率の向上を図る。
2. 包摂的なデジタル社会に向けた環境整備

誰一人取り残されない人に優しいデジタル化」を目指し、ユーザーである国民・事業者・行政職員等のデジタル行政サービスに対する満足度や各サービスの浸透度、「デジタル化」に対する国民の不安やためらいなどについて調査・モニタリング・結果公表を行うとともに、継続的な改善を実施します。また、環境整備について、以下の3つの枠組みで取組を進めます。

  • デジタルの利用環境やインフラの整備
    光ファイバの未整備地域の解消や、5Gの人口カバー率拡大、非居住地域における利用用途に応じた通信環境の整備、非地上系ネットワークやデータセンターの整備を推進するなど、利用環境およびインフラの整備を引き続き進めます。
  • 情報を正しく読み解き活用できる能力(デジタルリテラシー)の向上
    デジタル活用支援推進事業や、デジタル推進委員などの取組により、動画などの分かりやすいコンテンツ等も活用して、高齢者や障害者をはじめ、デジタル機器やサービスに不慣れな方の不安解消に取り組みます。
    また、ネット上に流通・拡散する、偽情報や誤情報への対応などについて、国際的な動向を踏まえつつ、プラットフォーム事業者の取組の透明性やアカウンタビリティの確保、デジタル広告に関する課題への対応等、制度面も含む総合的な対策を進めます。
  • 誰でもデジタルに関する製品やサービスを利用できる環境(アクセシビリティ)の確保
    ウェブコンテンツ(行政サービス、オンラインシステム、ホームページ、動画や資料などを含む)や放送におけるアクセシビリティの確保を徹底。国際的な最新技術動向も踏まえたウェブアクセシビリティ導入ガイドブックの改定など、すべての方にとって、アクセス可能となる情報コミュニケーション基盤を確⽴します。
    利用者中心のデジタルサービスを提供するにあたっては、アナログとデジタルのメリットを組み合わせ、利用者にとって最も利便性が高く、体験が良くなる手段を選択できることが望ましいです。
    そこで、各サービス利用者が得られる価値を利用者の立場に立って最大化するため、各サービス間で情報を連携して利用体験を連動させることで、すべての方々にサービスの利用機会・体験が保障されるようにします。
3. デジタル人材の育成
  • デジタル人材の育成
    デジタルを活用した課題解決を進め、実際に生活を便利にして「デジタル化」を「当たり前」にしていくためには、その担い手たる人材が質・量ともに欠かせないことから、デジタル人材育成の取組を強化します。
  • デジタル人材育成のための具体的な取組
    • 個人が持つデジタルスキル、スキルアップ状況、試験によるスキル評価のデータを蓄積・可視化し、保有スキルの証明をデジタル資格証明(※4)で発行していくことで、個人における継続的な学びと、目的をもったキャリア形成の実現を目指す。
    • 教育カリキュラム等の充実や専門性の高い指導者・教員の確保等に引き続き取り組んでいくため、数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムにおける活動や、大学等の優れた教育プログラムを国が認定する制度、大学院における人文・社会科学系等の分野と情報系の分野を掛け合わせた学位プログラムの構築等を通して、大学等における数理・データサイエンス・AI教育を進めていく。
    • 地方公共団体におけるDX推進体制の構築を加速化し、 都道府県による市町村のDX支援のために、人材プール機能の確保を進める。

2. 「 制度・業務・システム」の三位一体での取組

「構造改革のためのデジタル原則」等をさらに徹底し、政策の企画・立案段階から、「制度・業務・システム」を一体として
捉えた検討を実施。これらの整合性を確保して「三位一体」で取組を推進することをデジタル政策における大前提とします。

  • デジタル化のメリットを実感できる分野の拡大
    「三位一体の大前提」に基づいて、既存制度・業務のデジタル化においても、システムだけではなく制度・業務も同時に改革を実施。毎年、重点分野を定めて政府のリソースを集中させ、デジタル関係制度改革検討会などにおいて、三位一体での取組を推進し、デジタル化のメリットを実感できる分野を着実に増やしていきます。
  • デジタル原則適合性確認プロセス機能等の強化
    新たな政策立案・制度創設等においても、企画・立案段階から業務設計、情報システムの整備・運用に関わる検討が行われるよう、新規法令等のデジタル原則適合性確認プロセス(デジタル法制審査)の機能等を強化。
    政府情報システムのプロジェクトにおける予算要求段階、執行段階といった各段階に応じたレビューを通じて、「制度・業務・システム」の整合性の確保を、「三位一体の大前提」に基づいて進めます。
  • 革新技術を活用するための、ハード・ソフト・ルールの整備
    ドローン、自動運転など、フィジカル空間で革新をもたらす技術を活用することで、物理制約を超え、人の手が介在する余地を減らす可能性があります。
    実際に効率化や利便性・体験の向上につなげるためには、「三位一体の大前提」で取り組まなければならないため、デジタル技術の導入支援を含め、「デジタルライフライン全国総合整備計画 」によりハード・ソフト・ルールの整備を進めていきます。

3. デジタル行財政改革の実行

急激な人口減少等を見据え、利用者起点で行財政の在り方を見直します。また、デジタルを最大限に活用して公共サービスなどを維持・強化等を実現すべく、「デジタル行財政改革取りまとめ2024 」に基づく取組を実行します。

  • 国・地方デジタル共通基盤の整備・運用
    「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づいて、国・地方公共団体間の連絡協議を深め、縦割りの弊害を排して政府横断的な推進体制の下で業務見直しとシステム構築を行います。
  • 専門人材の確保とデジタル公共インフラの整備等の推進
    デジタル庁を中心に必要な専門人材を確保しつつ、初期開発や移行・普及支援、デジタル公共インフラの整備、地方への普及支援などを推進します。
    また、都道府県に公共サービスDX推進のハブ機能を形成。
    都道府県は域内基礎自治体を支援するとともに、国は専門人材の採用支援を行います。
  • 政策進捗モニタリングの実施
    重要分野の改革推進のため、中長期的KPIの設定と政策手段と政策目的の論理的なつながりを図示化したもの(ロジックモデル)の構築などにより、政策の進捗モニタリングと改善を行います。

4. デジタル・ガバメントの強化(システムの最適化)

1. 公共分野における取組
  • 国・地方デジタル共通基盤の整備および運用に関する基本方針
    「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づき、以下の3つの行政を目指し、基本的価値とすることを国と地方が共有。連絡協議の枠組みの下、「各府省庁による所管分野のBPR(※1)とデジタル原則の徹底(タテの改⾰)」と「デジタル公共インフラ(DPI(※5))の整備・利活用と共通SaaS(※6)利用の推進(ヨコの改⾰)」の取組を進めます。
    1. システムは共通化、政策は地方公共団体の創意工夫という最適化された行政
    2. 即時的なデータ取得により社会・経済の変化などに柔軟に対応し、有事の際に状況把握などの支援を迅速に行うことができる強靭な行政
    3. 規模の経済やコストの可視化および調達の共同化を通じた負担の軽減により、国・地方を通じ、トータルコストが最⼩化された行政
  • 政府情報システムの最適化
    政府情報システムは、クラウドに最適化されたシステムをガバメントクラウド上に構築し、クラウドサービス事業者が提供するサービスを活用して効率的に運用します。
    個別スクラッチ開発は極力避け、機動的なシステム構築を推進するとともに、既製SaaSを可能な限り活用し、システムの統廃合や共通化・共同化の検討も徹底。
    このため、業務にシステムを合わせるのではなくシステムに業務を合わせて、業務やその前提となる制度を改めていきます。
    デジタル庁は、共通で利用できる機能の部品化(コンポーネント化)を進め、認証・署名・決済・ポータル・申請・手続処理・データベース・端末・サーバー・ネットワークなどの共通機能、API、SaaSのカタログを整備するとともに、ガバメントクラウドを活用した政府情報システムの効率的な活用を支援します。
    さらに、より良い行政サービスを低コストで国民に提供するという観点と予算全体の抑制の観点から、デジタル化による利便性の向上や行政の効率化等を進めます。
    また、その成果を国民の皆さんに実感してもらうため、システム経費や費用対効果の「見える化」の取組も進めていきます。
  • 地方公共団体情報システムの統一・標準化
    基幹業務システムを利用する全ての地方公共団体が、原則2025年度までに、標準準拠システムヘ円滑かつ安全に移行できるよう、環境を整備します。
    また、移行困難システムを含む基幹業務システムの標準準拠システムヘの円滑かつ安全な移行に向けて、積極的に支援します。
  • 公共サービスメッシュ(情報連携の基盤)の推進
    標準準拠システムがデータ要件・連携要件に関する標準化基準に適合することを踏まえ、公共サービスメッシュ(情報連携の基盤)について、行政が保有するデータを安全・円滑に連携できるよう、 機関間の情報連携・地方公共団体内の情報活用・民間との対外接続を一貫した設計で実現します。
2. 準公共分野等における取組

準公共分野等(※7)においても、「制度・業務・システム」の整合性を確保した三位一体を前提とした取組を進めます。
無駄・不便を除去し、利便性を実感できる具体的な成果が重要であり、「デジタル化」が「当たり前」であると受け止められることを目指します。
なお、以下は主な取組です。

  • 健康・医療・介護分野
    • 電子カルテの標準化
    • 診療報酬改定のDX推進
    • オンライン診療の促進
  • こども分野
    • 必要な情報を最適に届ける仕組みの構築
    • 出生届のオンライン化
    • 母子保健分野におけるデジタル化の推進
    • 里帰りする妊産婦への支援
    • 保育業務の届出一度きり原則(ワンスオンリー)実現に向けた基盤整備
    • 保活ワンストップシステムの全国展開
    • 就労証明書のデジタル化
    • 保育現場におけるICT(※8)環境の整備
    • 放課後児童クラブのDXの推進
    • こどもに関するデータ連携の検討
  • 教育分野
    • 校務DXの推進
    • オンライン教育・民間人材活用の促進
    • デジタル教材の活用促進
    • 教育データの効果的な利活用の推進と環境整備
  • モビリティ分野
    • モビリティ・ロードマップの策定および施策の推進
3. SaaSの徹底した活用
  • SaaSの徹底した活用
    「作る」から「使う」への転換に向けて、SaaSなどを国・地方公共団体が迅速・簡易に調達するカタログサイトを利用した新しいソフトウェア調達手法(デジタルマーケットプレイス)について、国・地方公共団体の会計制度を踏まえた上で、調達プロセスを設計するとともに、2024年度後半の本格稼働を目指します。
    また、ISMAP およびISMAP-LIUについても、信頼性・安定性の保持を前提に制度運用を合理化する観点から在り方を検討し、活用拡大などを推進していきます。

5 デジタル化に関わる産業全体のモダン化

  • デジタル化に関わる産業全体のモダン化
    デジタル化に関わるユーザー(需要側)、ベンダー(供給側)の双方を含めた産業全体において、情報システムの最適化を進めるとともに、セキュリティや冗長性・回復性・強靱性(レジリエンス)の向上、多重下請構造からの脱却と賃金上昇、デジタル人材の育成、産業全体の即応性・適応性・生産性・効率性の向上を実現することで、デジタル化に関わる産業の今後の発展やイノベーションの基盤となることが期待されています。
    そこで、業種ごとに現状と課題を把握して、レガシーシステム(※9)からの脱却やクラウドへの最適化を進める方策を定め、公共分野も含め実施していく必要があり、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)を事務局として、デジタル庁と経済産業省等の参画を得て、「レガシーシステム脱却・システムモダン化協議会(仮称)」を立ち上げ、同協議会において、レガシーシステムの現状と業種特有・業界特有および横断的な課題の把握、対応策を検討します。

6 データを活用した課題解決と競争力強化

  • 信頼性を確保しつつデータを共有できる標準化された仕組み(データスペース)の構築とDFFTの推進の推進
    DFFT具体化のための国際的な枠組み(IAP)にて、データ越境移転時に直面する課題を解決するプロジェクトを実施します。二カ国間では、より野心の高い取組やより政治的配慮が必要な各国の国情に照らし機微なデータなどについて議論を進めます。
    また、このような国際的な国境・産業等を跨いでデータの連携、保護措置を促す枠組み(データガバナンス)について、国内外で一体となって進めるため、国際データガバナンスアドバイザリー委員会や国際データガバナンス検討会を活用。
    産業界のニーズを踏まえ、国際的なデータ流通や利活用に関する、官民協力および関係省庁の連携強化を図ります。
  • トラストおよびデジタル上における属性情報の集合(デジタル・アイデンティティ)
    国際標準化をはじめとした議論に参画し、データのやり取りにおける新たな信頼の枠組みを構築する取組(Trusted Web)の検討も踏まえながら、実装にあたっての制度的・技術的課題の整理等を進め、デジタル上における属性情報の集合(デジタル・アイデンティティ)の在り方を検討します。また、検証可能なデジタル証明書(VC(※10))や分散型識別子(DID(※11))の社会実装を促すため、行政における先行的なユースケースの創出に関係省庁が連携して取り組むとともに、個人・法人の属性や資格情報を保存し提示できる仕組みおよびアプリ(デジタル・アイデンティティ・ウォレット)の実装に向けたロードマップを策定します。
  • 防災DXの推進
    防災DXを危機管理政策として捉え、さらなる改善・推進を図るべく、主に以下の取組について進めます。
    • 防災デジタルプラットフォームの構築
      2024年4月に運用を開始した新総合防災情報システム(SOBO-WEB)を中核として、各防災情報関係システムのデータを自動連携等で集約し、災害対応機関等で共有する防災デジタルプラットフォームを2025年までに構築する。また、災害情報の集約等を支援する災害時情報集約支援チーム(ISUT(※12))の強化に取り組み、データ連携基盤やLアラートとの連携等、防災分野のデータ流通促進に向けた取組を行う。
    • 防災アプリ開発・利活用の促進等/データ連携基盤の構築
      優良なシステム・サービスの開発促進および早期社会実装・横展開を進めていくとともに、防災アプリ・サービス間でのデータ連携や新総合防災情報システムと連携を図っていくため、防災分野のデータ連携基盤の構築を推進する。
    • 一人一人の状況に応じた被災者支援の充実
      災害時に被災者一人一人が災害の状況に応じた適切な支援を受けられるよう、マイナンバーカードの活用促進を図り、
      避難所等における受付や、薬剤情報をはじめとする健康医療情報の取得、罹災証明のオンライン申請等、被災者の利便性を向上させる取組を促進する。
    • 官民連携による防災DXのさらなる推進
      2024年(令和6年)能登半島地震では、民間のデジタル人材が被災地方公共団体の現場に入り、災害対応をデジタル面から支援し、活躍した。こうした経験を踏まえ、民間のデジタル人材等を派遣する仕組みについて検討を行い、実現を図る。
    • 通信・放送・電力インフラの強靱化
      災害時に災害対応機関等が行う情報収集・共有、被災者視点重要となる災害関連情報の取得等の前提となる、市町村役場や避難所等における通信・放送・電力のサービス継続およびその早期復旧に向け、これらのインフラの強靱化や冗長性の確保、点検の効率化、被災した際の早期応急復旧のための機器の設置等に官民が連携して取り組む。
    • 防災デジタル技術のさらなる発展と海外展開
      産官学による将来予測、デジタルツイン(※13)、AI活用等の技術研究開発を促進し、未来に向けた構想を推進していくとともに、我が国の優れた防災DX技術・産業の海外展開を推進する。

7. セキュリティ

日本を取り巻くサイバー脅威の変化に対しては、情報システムに対して効率的にセキュリティを確保するため、企画から運用まで一貫したセキュリティ対策を実施する考え方(セキュリティ・バイ・デザイン)が改めて重要です。国民目線に立った利便性向上の徹底とサイバーセキュリティの確保、この2つの両立を図っていくため、国家安全保障戦略およびサイバーセキュリティ戦略に基づき、サイバーセキュリティの強化に努めます。

  • サイバーセキュリティ強化の取組
    レッドチームテスト(※14)の実施に向けた検討など、横断的なアタックサーフェスマネジメント(※15)による脆弱性の把握や、プロテクティブDNS(※16)による情報収集を2024年度から新たに開始します。
    また、「政府情報システムの管理等に係るサイバーセキュリティについての基本的な方針」に基づく、政府情報システムの整備・運⽤を実施。特に、政府の共通基盤や国民・企業の認証システム等を構築・運用するデジタル庁は、総合的な運用・監視システムの構築・運用を含め、システムの強靱化および運用・監視・インシデント対応体制の整備強化を図ります。その際、セキュリティ・バイ・デザインを前提としたシステムの構築など、セキュリティ対策の強化を図るとともに、デジタル庁の専門家チームおよび情報処理推進機構(IPA)による必要な検証・監査を着実に進めます。

8. 最先端技術における取組

  • AIに関する取組
    生成AIを含むAIの様々なリスクを抑え、安全・安心な環境を確保しつつ、イノベーションを加速させる好循環の形成を図っていくため、「AIのイノベーションとAIによるイノベーションの加速」、「AIの安全・安心の確保」、「国際的な連携・協調の推進」を進めます。加えて、日本が主導する広島AIプロセスなどを通じて、今後も国際的にリーダーシップを発揮していきます。
  • Web3.0に関する取組
    非代替性トークン(NFT)や分散型自律組織(DAO)などの技術を様々な社会課題の解決を図るツールとするとともに、相談窓口の整備、ユースケースの創出、技術開発・人材育成、グローバル化、地方創生などに関わる様々な取組を行っていきます。
  • 量子技術に関する取組
    量子技術に関する基礎研究や応用研究に着実に取り組むとともに、量子技術と基盤技術(Al技術や古典計算基盤など)の融合を推進します。
  • デジタルツインに関する取組
    電子国土基本図の整備・更新や、3D都市モデルの整備・活用支援や地下インフラのデジタルツイン構築によるインフラ管理DXの実現をはじめとする先行的な取組を進めます。
  • Beyond 5G(6G)に関する取組
    超高速・大容量、低遅延・低消費電力で品質保証を可能とする、柔軟かつ低コストな次世代情報通信基盤であるBeyond 5G(6G)について、研究開発、国際標準化および社会実装・海外展開の取組を一体的に推進します。

推進体制の強化

2人の人物が並んで立っているイラスト。二人は遠くに建っているビルを見ている。

1. 3つの取組の強化と横断的機能の強化

重点計画に示す各取組を推進するために、バックオフィス機能(広報・人事)も含めたデジタル庁の体制をさらに強化することが不可欠です。
デジタル庁を当面1,500人規模の組織とすることを目安とし、外部の民間事業者の活用等も組み合わせつつ、継続的に必要な体制整備を行います。
特に強化する重点計画の3つの取組

  1. 「 制度・業務・システム」の三位一体の取組により、準公共分野をはじめとする様々な分野において無駄・不便を除去して、利便性を向上し、良質な体験を作り出していくこと
  2. 「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づいて、国と地方が共通利用できるデジタル基盤の整備・運用に取り組んでいくこと
  3. AIやデータの徹底した利用等によりデジタル産業基盤を強化していくこと

2. 関係機関との連携強化

デジタル化を進めていくためには、新規施策や新しいシステム開発を拡充していく必要がありますが、各システムには運用・保守が伴います。
そこで、これまでデジタル業務で実績のある独立行政法人情報処理推進機構(IPA)や独立行政法人国立印刷局をはじめとする関係機関との連携を強化し、各種施策の運用等を行えるよう、必要な体制整備を進めます。

3. 中長期的な方向性の検討

デジタル庁設置法では、デジタル庁の設置後10年を経過した際、デジタル庁の在り方を検討し、必要な措置を講ずることとされています。
この見直し規定に基づき、10年を経過する前から検討を進め、民間の知見を有する人材をどのような形で登用し活かしていくべきか等の人事制度の在り方の総括に加え、企画・立案と執行の好循環をどのように生み出すべきか、外部組織設立の可能性などについても検討します。

資料

本ページ掲載内容の紹介資料

参考資料

過去資料

デジタル社会の実現に向けた重点計画の過去資料は以下をご覧ください。

掲載内容について

重点計画について要約した紹介資料のご感想は、ご意見・ご要望よりお寄せください。今後の資料につきましても、皆様から声をいただきながら、よりわかりやすくお伝えすることを目指して参ります。
ご意見・ご要望

脚注

※1:Business Process Re-engineeringの略称。
※2:古いハードウェアやソフトウェアを使用しているレガシーシステムについて、「クラウド第一原則」に基づき、クラウドサービスの利用を行うとともに、マネージドサービスの組み合わせだけでシステムを構成するなど、継続的な改善(開発)等を行い、最新の技術トレンドや標準に合わせて最適化し、総合的に生産性・信頼性を向上させること。
※3:Application Programming Interfaceの略称。他システムの情報や機能等を利用することで、アプリケーションの開発やデータの共有・利活用を容易にするための仕組み。
※4:個人の経歴、資格、スキル等の広範な情報を記載したデジタル形式の証明書。
※5:Digital Public Infrastructureの略称。 
※6:Software as a Serviceの略称。利用者に、特定の業務系のアプリケーション、コミュニケーション等の機能、運用管理系の機能、開発系の機能、セキュリティ系の機能等がサービスとして提供されるもの。
※7:準公共分野として、「健康・医療・介護」、「教育」、「防災」、「こども」、「モビリティ」、「農林水産業・食関連産業」、「港湾(港湾物流分野)」、「インフラ」の8分野を引き続き指定する。また、横断的な連携が重要な相互連携分野として、「取引(受発注・請求・決済)」、「スマートシティ」の2分野についても引き続き指定する。
※8:Information and Communication Technologyの略称。情報通信技術。
※9:技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているシステム。
※10:Verifiable Credential の略称。内容の検証がオンラインで可能なデジタル証明書。
※11:Decentralized Identifier(分散型識別子)の略称。新しいタイプのグローバルに一意な識別子であり、個人や組織が、自らが信頼できるシステムを使って自分の識別子を生成できるように設計されている。この新しい識別子は、デジタル署名などの暗号証明を用いて認証することにより、エンティティがその識別子を管理していることを証明することが可能。
※12: Information Support Teamの略称。 
※13:サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)を融合し、常に変化し続けるダイナミックな好循環を生み出す社会へと変革することを目指すデジタル社会の形成のための基盤。
※14:テスト対象ごとの脅威分析を踏まえたシナリオに基づき、攻撃者を模した「レッドチーム」が攻撃を実施し、テスト対象側のサイバー攻撃への対応等の実効性等を検証する、実践的な侵入テスト。
※15:政府機関等の情報システムをインターネット上から組織横断的に常時評価し、脆弱性等の随時是正を促す取組。
※16:ドメインネームシステムを活用して悪意あるwebサイトやマルウェアなどの脅威からユーザを保護し、またそれらの脅威の使用するドメイン名やIPアドレスを蓄積する仕組み。