スポーツ時はもちろん、デイリーウェアとしても活躍する「ジャージ」。そんな身近な「ジャージ」というウェアは意外に顧みられることが少ないプロダクトの一つです。
スニーカーやアウターについてはこれまでも、そのテクノロジーやこだわりを語る記事が多く発信されてきましたが、ジャージの歴史的な進化はあまり語られてきませんでした。
そこで、GetNavi編集部の出番です。デジタル系ガジェットの記事制作で培ったノウハウを駆使し、デサント「ジャージ」の進化を探ります。
東京での国際大会を機にニット素材を開発
1965年の資料。
今から遡ること約85年前。1935年、当時としてはそれほど多くなかったスポーツウェアを専業とするメーカーとしてデサントの前身である石本商店を創業。ベースボールウェアやスキーウェアの開発に成功し、1951年にはトレーニングパンツの開発を行っていました。
そして、1964年の東京での国際大会を機に、体育の時間以外でも運動をする機会が広がっていきます。当時、バレーボールがママさんバレーとして広がったのが良い例です。
当然、ウェアの着心地も注目され、基本的に布帛(ふはく)が素材として使われていた体操服から、動きやすく、伸びる素材、ニット素材を開発。1965年にジャージが誕生しました(ジャージ自体の成り立ちは後述)。
以降、デサントは「トップ選手が、最大限のパフォーマンスを発揮できる商品を作ること」を商品開発のベースに、常にモノ創りの限界に挑戦し続けています。
2018年には、大阪府茨木市に本格的なスポーツアパレル開発拠点「DISC OSAKA」を設立。
「世界一、速いウェアを創る」をコンセプトに、競技で勝つための「スピード」を追求したウェアと、グローバルで世界に先駆けて良いモノを創っていこうという気概で、さらに開発のスピードを加速させています。
現在では、さまざまな革新的なスポーツウェアを開発すると同時に、競技の世界で培った機能やテクノロジーは一般のアパレルウェアにも落とし込まれ、スポーツだけでなく、あらゆるシーンで快適に過ごせるウェアを提供しているのです。
革新的な技術を経て進化し続けたジャージの軌跡
ここからは、デサントのジャージ創りのこだわりを、デサントマーケティング部門付デザインディレクターの湯田博徳さんと、同マーケティング部門1部SP担当の伊藤友紀さんに、革新的な機能の解説とともにジャージの進化について話を聞きました。
「ジャージはそもそもワークウェアからスタートしているんですね。イギリスにあるジャージー島という島の漁師たちが仕事をするとき、それまでは伸びない素材・生地の作業着で仕事をしていました。
それでは動きづらく仕事がしにくい、ということで誕生したウェアが『ジャージ』と言われて、これがジャージの起源と紹介されています。」(湯田)
しかし、当初のニットは非常に分厚く、重く、すぐに乾く半面、汗を吸いにくいデメリットもありました。また、ダボっとしたシルエットも特徴的でした。
その後、伸びる、薄くて軽いなど、より体にフィットしても動きを妨げない素材へと進化。競技ウェアとしては細身になり、体にフィットして空気抵抗を与えない、足さばきなども動きやすいウェアへと進化していくのです。
1981年のスケート用オーバージャージトップス。
1981年のスケート用オーバージャージパンツ。
1984年のトレーニングジャージ。
素材の変化とともに、デサント独自のテクノロジーも生まれています。その一つが、1989年に誕生した「ソーラーα」です。
「これはスキーウェアから発想したジャージです。太陽光を蓄積する材料を入れた糸を使用することで暖かくなり、そのぶん薄くできるようになりました。
それまでは分厚い生地でないと暖かさはなかったのですが、それではアスリートは動きにくく、移動時にも荷物が重たくなるという悩みがありました。
『ソーラーα』は1988年カルガリーでの国際大会のときに発表し、その後はアスリート向けとしてトレーニングジャージを開発。その後製品に改良を加えて翌年一般ユーザー向けに市販しました。」(湯田)
ソーラーαジャージトップス。
ソーラーαジャージパンツ。
その後もいくつもの機能を開発し、進化を続けたデサントのジャージですが、2005年に一般ユーザーにジャージのファッション性が認められる象徴となった「Move Sport」シリーズが誕生しました。
「当初はアスリートのための移動着ということで、『Move Sport』シリーズにはポロシャツやアウターなどたくさんのアイテムがありました。それが、アスリートから一般のスポーツを楽しむ方にもニーズが広がり、どんどん人気が拡大していきました。
私たちもですが、アスリートの方が活躍され、そのときに着ているウェアがかっこいいなと思うと、スポーツをされていない方でも手に取って着てみたくなる。スポーツをされている方だったら、なおさらそれがモチベーションになったりしますね。
Move Sportのジャージを着ることでパフォーマンスが上がる気持ちになる。そういった経緯でお求めいただく機会が増えたと思います。」(湯田)
2007年の「Move Sport」ジャージ。雑誌Numberとのコラボモデル。
2008年の「Move Sport」ジャージ。
そして2016年、これまでの技術を集約した「ZERO STYLE」シリーズに到達。パンツから始まったこのシリーズは、パンツに合わせたTシャツやポロシャツ、ジャケットなど、さまざまなアイテムへの展開が今後も予定されています。
「アスリートがいかにストレスをゼロにしてパフォーマンスを向上できるか、競技に集中できるかを追求したのがこのZERO STYLEです。大きな特徴は、膝から足首にかけての部分。少し外側に開いている足の軸の構造を考えたパターン設計をしていて、素材は布帛です。
布帛もテクノロジーがかなり向上してきまして、すごく伸びる素材、薄い素材ができてきています。ニットに比べて非常に軽くて、強度が高い。すべてにおいてストレッチ性があります。
ZERO STYLEのパンツはスタイリッシュで動きやすいので、1本あると便利。
例えば、アスリートの方が家からこれをはいて車や電車に乗って競技場へ向けて移動します。競技場に着いて、ジャージにはき替えずにこのままでトレーニングをします。
そして競技を終えた後は、またこのウェアのまま移動することができ、荷物も減らすことができ、ストレスを軽減。」(湯田)
デサント2021S/Sで注目のジャージ3選。
デサントのジャージの進化をここまで見てきました。2021S/Sアイテムでは、これまでの技術やノウハウを集約した最新のジャージが販売されています。
1965年にスタートしたジャージの進化が、半世紀以上を経た今、3つのジャージセットアップに凝縮されています。それぞれの特徴やジャージに対するこだわりを紹介していただきました。
デサント テクニスタ ハイブリッドフルジップパーカー:9,900円(税込)
テクニスタ ロングパンツ:9,130円(税込)
適度な厚みを持つ軽量ワッフル素材と、ストレッチ性に優れるニット素材を組み合わせた「テクニスタハイブリッドフルジップパーカー」。
「テクニスタ ロングパンツ」の膝裏には切り替えが入り、脚が曲げやすくなっています。さらに、ウエストをフラットに仕上げることですっきりとした見た目に。
「今までの『Move Sport』はグラフィックが主張するスポーティーなタイプが中心でしたが、普段のさまざまなシーンでも着れるようグラフィックを小さくした新しいタイプになります。」(湯田)
「パーカーの前面の素材感を高級感のあるワッフル状に。パッと見、重く感じますが実はすごく軽いんです。」(湯田)
「ストレッチ性がありながらパッと見はシンプルなパンツ。汎用的に着られるアイテムとなっています。」(湯田)
デサント PT ZERO スタンドジャケット:12,100円(税込)
PT ZERO ロングパンツ:10,890円(税込)
ZERO STYLEシリーズとして販売されている「PT ZERO スタンドジャケット」と「PT ZERO ロングパンツ」。
パンツと同じ生地を使ったトップスが欲しいとのリクエストに応え、スタンドカラーのジャケットとのセットアップが実現しました。
幅広いスタイリングができるシンプルなデザインで、トレーニング時はもちろん、ジムの行き帰りの移動着など、幅広いシーンで活用できます。
「パンツと同じように、ジャケットも通気が必要になってきますので、背中の上部にパンチング加工が施されています。そこから空気を出したり入れたりすることで換気を促進します。」(湯田)
「軽量のストレッチ素材を用い、襟の見返しの裏には楕円の形状記憶の芯が入っています。そうすることで前立ての襟がしっかり立ち、ストレスを軽減します。」(湯田)
「パンツのウエスト後部内側、デサントロゴと凸部分にはっ水の糸を使用。それ以外は吸水ゴムになっているので流れ落ちる汗を吸い取り、肌面に当るところははっ水糸でサラサラです。」(湯田)
デサント スウェット フルジップパーカー:13,090円(税込)
スウェット ロングパンツ:10,890円(税込)
ストレッチ性と軽量感を追求したニット素材のスウェットのセットアップ。
パーカーには肩まわりを大きく動かしやすいパターンを採用し、肌当りを良くするために内股の切り替えをなくしたパンツもポイントです。カラーラインナップは各3色。
「胸の小物収納に便利なポケットのファスナーは、ニットの生地を2枚折り返すと分厚くなるので接着仕様で薄くしました。」(湯田)
「額の前までくる深めのフード。後ろの襟に代襟が付いているので、フードが後ろに引っ張られるのを防ぎ、首まわりの収まりを良くしています。」(湯田)
「生地がすごく伸びる素材なので、ウエスト部にシャーリング(細かいギャザーを寄せたデザイン)がないのも特徴。ウエストサイズをより小さくすることで、伸ばしてはく感覚でデザインしています。」(湯田)
デサントジャージ56年の機能美
最後にデサントの湯田さんと伊藤さんはこうも話しました。
「コロナ禍においてさまざまな在宅のシーンがあると思いますが、今回紹介している21年S/Sモデルのスポーツウェアはちょっと近所のコンビニへとか、ワンマイルウェアのような部屋着として使っていただいてもまったく遜色ありません。スポーツをしていない方にも着てほしいアイテムになりますね。」(湯田)
「PT ZERO ロングパンツは、ジャケットやトップスと合わせたスタイリングも可能です。スウェットロングパンツは少しボリュームがあるので、カジュアルなパーカーなどと合わせたスタイルで、街着として使っていただけますので、そういうファッションスタイルがお好みの方にもおすすめです。」(伊藤)
スポーツをするためのジャージから、より身近な日常のあらゆるシーンで快適性が実感できるジャージに。その想いは確実に商品に落とし込まれているようです。ジャージ開発56年の実績に裏付けられた高い機能の数々。
これからのファッションには、デザインや着心地だけでなく、どれだけ快適で美しいかという、デサントブランドが追求している「機能美」が求められるようになるのではないでしょうか。
撮影/木村心保
文/マイヒーロー
大人のFUN LIFEをあらゆる角度から提案するファッション・ライフスタイル誌「OCEANS」。編集長を務める江部寿貴氏が、先ごろオープンしたデサントららぽーと横浜店に初めて足を踏み入れた。目的は、ずばりパンツ。実は最近、ゴルフを始める[…]
![OCEANS編集長・江部寿貴、デサントで気になるパンツに出会う](https://www.descente.co.jp/media/wp-content/uploads/2021/04/1-min-300x300.jpeg)