【連載】ハブでも分かる！？遺老説伝 Vol.63 黄金の瓜子-1

むかし、玉城の百名に一人の男が住んでいました。
名前は白樽（しらたる）といい、生れつき孝行者で、思いやりの心が深く、日頃常に正しい行いをして、決して悪いことはしませんでした。
玉城按司は白樽の日頃の行いに大層感心なさって、長男の免武登能按司（めんとんあんじ）の娘を白樽の妻にしました。
ある日、夫婦が野や山にいって、あっち、こっちの美しい景色をながめ、愉快（ゆかい）に、楽しく遊んでいますと、たちまち東の方に、ぼうーと、かすんだ中に一つの小さい島が、波の間に間に見えかくれしています。
白樽は、この小島を見て大層おどろき、あやしみ、それからは時々、野にでかけていって気をつけて、よくよくその小島を見ていました。
この頃、村では皆が勢力争いをして、くる日も、くる日も戦が絶（た）えませんでした。
毎日、人々の争いを眼の前に見せつけられるので、白樽は、この騒々（そうぞう）しい所からはなれたいと思っていました。
その折、東の方の島が見えたので夫婦は相談して、小舟でその島にゆくことになり、東へ東へとこぎだしました。
しばらくこぐうちに、間まなくかつて野で見た島につきました。
舟を岸につないで上陸し、島のいたるところを見てまわりますと、水はとても美味（おいし）く、土は質がよく、野は広く、山は低く、まことに村をたてるに適（てき）していました。
が、食べものを作ることが出来ませんので、毎日海辺にでては、貝をひろい集めて、その日その日の食べものにして暮していました。