国際塩基配列データベース「DDBJ」に対するサイバー脅迫に関するご報告

情報・システム研究機構
2024年10月22日
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJセンター(センター長:有田正規)は、国際ハッカー集団から、DDBJ(国際塩基配列データベース連携)の公開データを窃取したと2024年10月8日深夜にX(旧Twitter)上で脅迫を受けました。徹底した調査を実施いたしましたが、現在のところ、システムへの不正侵入、システム内部の改ざん、データ消失等は検出されていません。

【詳細】

  • DDBJは国際塩基配列データベース連携(INSDC:インスディーシー)と呼ばれる事業を、米国及び欧州とともに1987年より30年以上実施し、全世界の誰でも、自由に学術情報を利用できるオープンサイエンスの基盤を築いてきました。この世界的なオープンサイエンスの取組に対して、10月8日深夜、サイバー脅迫を受けました。
  • 犯行声明を発表したのはCyberVolk(サイバーフォルク)と名乗る国際ハッカー集団です。DDBJのデータ5%を公開し、1万ドルを支払わなければ残りの95%も公開すると、X(旧Twitter)上で脅迫しています。
  • 知識とデータの無償公開を推進する大学共同利用機関配下のDDBJに、このような犯行声明が出されたことは大変遺憾です。犯行グループが窃取したと主張し公開したデータは、BioSampleと呼ばれるデータベースの情報であり、もともと誰でも無料でダウンロードでき、脅迫は無意味です。
  • DDBJではシステムへの不正侵入等が無いか、徹底した内部調査を実施いたしました。現在のところ、システムへの不正侵入、システム内部の改ざん、データ消失等は検出されていません。
  • 研究者の方々へのサービスは通常通り継続していますが、DDBJに新規登録されたデータは10月10日以降、米国及び欧州に反映されていません。登録された研究者の方々には多大なご迷惑をおかけしており、大変申し訳ありません。10月22日より通常のデータ交換を再開させていただく予定です。
  • 誰でもダウンロードできるデータであったとしても、サイバー脅迫は、科学と社会をつなぐ公共事業に対する脅威であり、この行為に対し、DDBJは断固として反対いたします。オープンサイエンスを掲げる学術機関に対する攻撃は、世界に対する攻撃でもあります。今後こうした行為を断固として許さない社会の構築にも尽力したいと考えています。

【問い合わせ先】
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 情報基盤ユニット
情報基盤ユニット長・教授 黒川 顕
電話:055-981-9437

情報・システム研究機構 本部事務部長 足立 充
電話:03-6402-6220

【用語解説】
(1) DDBJ
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所に設置された生命情報・DDBJセンターが運用する塩基配列の公的リポジトリ。研究者から投稿された DNA及びRNAの塩基配列データを収集、注釈付けし、無料で公開している。データの自由な共有と利用を促進することで、生命科学分野のみならず幅広い分野の研究者にとって不可欠なリソースであり、生命科学の発展に大きく貢献している。

(2) INSDC
「International Nucleotide Sequence Database Collaboration(国際塩基配列データベース連携)」の略称。DDBJ(日本)、ENA(欧州)、GenBank(米国)の3つの塩基配列リポジトリ間の連携体制を指す。INSDCの主な目的は、DNAとRNAの塩基配列データを世界規模で収集、注釈付け、公開することである。上記3機関は日常的にデータを交換し、研究者が産出したデータを共有している。この連携により、世界中の研究者が最新の遺伝子情報に自由にアクセスでき、生命科学研究の発展に大きく貢献している。

(3) オープンサイエンス/オープンデータ
科学研究のプロセスと成果を広く公開し、誰もが自由にアクセスできるようにする取組。2013年のG8科学大臣会合における科学研究データのオープン化への合意を受けて、昨年の広島サミットにおいても首脳コミュニケでオープンサイエンスの推進が提言された。この取組により、科学の進歩が加速し、研究の信頼性が向上するとともに、公的資金を用いた研究成果を社会に還元し、イノベーションを促進する効果も期待されている。