第9期のオープニング講義は、国立環境研究所の社会システム領域 地域計画研究室の室長である「松橋 啓介先生」をお招きして「変わるまち、続くまち~カーボンニュートラルと都市計画~」というテーマで講義をしていただきました。環境学に関しては、第1回講義からテーマとして継続しています。

まずは、松橋先生の自己紹介からスタート!
幼少期から引っ越しをすることが多かった先生は、いろいろな街を比較して見てきたそうです。そして次第にその違いや共通点、変化などに興味を持つようになり、中学2年生頃からまちづくりに関心を持ち始めたとのこと。

そして講義にはいると、一枚の写真を見せながら「ここはどこでしょう?」と問いかけました。学生の中には、山や平野というヒントから、正解であるつくば市を言い当てた学生もいました。つくば市は計画された都市として、有名な場所だそうです。実際に、つくば市の写真を見てみると山や川、林などの自然のものと、田畑やゴルフ場、太陽光パネル、家や大学などの人工のものが見えました。これらはただ不規則に並んでいるわけではなく、ルールがあります。

例えば、「似たような使い方の土地はまとまっている」、「道路の幅が太いものから細いものの順につながっている」、「公園や学校などの施設の量と場所が調整されている」などです。このように、人が暮らしやすくするために考えてまちをつくることを、「まちづくり」や「都市計画」と定義されています。

今回の講義のタイトルは、鴨長明の方丈記、「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」から着想されたそうです。川の流れと同じように、まちや都市も同じようでありながら変わっている、変わらないように見えるけど、家も人も元のままではないという意味を込めてのタイトルですね。

では、まちはどのように変わっていくのでしょうか?変わるものと変わらないものはなんでしょうか?
先生によると、まちの中でも変わりやすいものは、上に乗っているものだそうで、反対に変わらないものは、土地(地面)です。道路の場所や緑地の量など、変えるのが容易ではないものは、特別なときを除いて変わりません。このような土地の利用の仕方が変わるのは、区画整理や再開発などまちづくりの事業があるときだけです。しかし、変えるために労力や、住民の合意が必要だったりといったこともあり、大体10年~30年ほどの、長い時間がかかるとのこと。

このように、変化しながら続いていくまちですが、時代に合わせて、みんなが使いたいと思うように変化したまちが生き残るそうです。そのためには、仕事、学校、家があることが最低条件で、これらが無いまちに人は住み続けることができません。また、道路や鉄道、公園などの環境が整備されていることも重要です。魅力があるまちには、人が集まり始め、そこが便利になり、さらに人が集まるという好循環が起きます。

しかし、反対に人がどんどん減っていくような場所もあります。これから、日本は人口が減少していくと考えられていますが、これにより、人が住まないゴーストタウンとなってしまうところもあるそうです。そのような場所に対しては、どうゴーストタウン化を防いでいくのか、ゴーストタウン化によってどう環境の変化が起こるのかを考えて、何をしなければいけないのかみんなで考えていく必要がありそうですね。

後半の講義では、「変わる町」「続く町」というテーマに基づいて、人口ピラミッドと居住状況の予測図を用いて町が変化する必要がある理由から開始です!

なぜ、まちが変わらないといけないのでしょうか?
その大きな原因として少子高齢化があげられました。「変わる町」では、少子高齢化により、年々若者の数が減少することで町の維持が難しくなってしまいます。人口ピラミッドによると、約30年前の1990年と2020年を比較すると、年少人口(14歳以下)が30%減少しており、老年人口(65歳以上)が2、3倍増加していることがわかりました。

更に、約30年後の2050年と2020を比較すると、全体的に人口が減少しているにもかかわらず、働き盛りの生産人口(15歳以上65歳未満)が30%減少すると予測されており、後期老年人口(75歳以上)が30%増加してしまうのです。凄い時代が来るのが分かっているわけですが、この問題に対して日本は対策を十分に取ってきたとは言えない状況

その結果、まちがさびている、手入れされていない、カーテンがないなどの空き家が増えてしまい、2040年には、住居の空き家率が70%を超えてしまうと予想されています。この問題により町のゴーストタウン化が進んでしまうだけではなく、これまでに整備したインフラまでもが無駄になってしまうというのです。そんな未来を避けるためにも、町やその仕組みを変えていく必要があると松橋先生はおっしゃいます。

そして「続く町」では、今世界中で問題視されている地球温暖化などの原因の一つである二酸化炭素の排出について考える必要があります。私達が住んでいる町に、これからも住み続けるには、避けて通ることのできない問題です。先生は、私達に出来ることとして、日々の生活の中で二酸化炭素の排出について気を遣うことを挙げられました。例えば、自家用車ではなく、公共交通機関などを皆が使うことで排気ガスの量を減らすことなどです。そのように、二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルを目指すことで今住んでいる町に住み続けることが可能になると教えていただきました。

※質疑応答は「Zoom」で行い、たくさんの質問がシームレスで続きました。直接、質問に答えてもらう良い機会です。

まとめとして、これから「続く町」には、カーボンニュートラルに対応して「変わる」ことが条件になり、人口減少やカーボンニュートラルに対応して変わらなければ、継続していかないということを、今日1番の学びのポイントとして強調されていたのが印象的でした!

その上で、「断熱性がいい住宅を選ぶ」「太陽光や風力により発電された電気を使う」「移動じはできるだけ歩いたり、自転車や電車を使う」「電気自動車のカーシェアリングを使用する」。そして近所で働き、遊ぶことができるまちを選ぶといった意識を持ち、これらを応援するまちづくり、しくみづくりを大事にし、関心を持って生活することの大切さを教えていただきました。


※抽選で当選した現地受講者で集合写真!今回のポーズは「コンパクトシティー」です!
※撮影時のみマスクを外しております。

松橋先生、ありがとうございました!
都市計画を知ったことで、自分の住んでいる「街」を見る視点が変わったと思います。

第2回講義は、7月2日(土)です。
TBSアナウンサー・蓮見孝之先生による、「アナウンサーって一体、会社員なの?芸能人なの?~プライベートな情報はどこまで開示すべきなのか~」です。お楽しみに♪