ラーメン屋とは
中華麺とスープ、チャーシュー、メンマ、ネギなどの具を組み合わせたラーメンは、中国発祥でありながら、今では日本の国民食と言える食べ物になりました。江戸時代末期、開港とともに港周辺の街に多くの外国人が移り住んだ際、中国から日本に流入した麺料理がラーメンのルーツとされています。
日本で初めてのラーメン屋は、1910年(明治43年)、当時の東京市浅草区(現在の東京都台東区浅草)にオープンした「來々軒」(らいらいけん)でした。現代ではラーメンは日本全国に広まり、ご当地ラーメンのように地域色豊かな食べ物として親しまれるようになってきています。
ラーメン屋の歴史と種類、現代のラーメン屋に見られる変化などを見ていきましょう。
目次
- 1.ラーメン屋の歴史
- 2.ラーメン屋の種類
- 2.1スープによる分類
- 2.2ラーメン屋の系統による分類
- 2.3地域による分類
- 3.現代のラーメン屋
- 3.1サイドメニューが充実
- 3.2自分好みにオーダーできる
- 3.3店内を清潔、お洒落に
- 3.4高単価なラーメンも人気
ラーメン屋の歴史
日本初のラーメン屋は、1910年(明治43年)に「尾崎貫一」(おざきかんいち)が横浜中華街から中国料理人を招いてオープンした來々軒。
ラーメン、ワンタン、シュウマイなどを初めて提供した庶民的な店で、「東京ラーメン」と呼ばれる醤油ラーメンの草分けでもあります。連日多くの客で賑わってラーメンブームを巻き起こし、続々とラーメン屋がオープンするきっかけを作りました。
一方、北海道では1922年(大正11年)に、現在の北海道大学(北海道札幌市)正門前に「竹家食堂」(たけやしょくどう)が誕生。あっさりした味わいの醤油ラーメンの販売を始め、これが現代の札幌ラーメンにつながると言われます。
1937年(昭和12年)には、九州初のラーメン屋「南京千両」(なんきんせんりょう)が営業を開始。豚骨ラーメンの祖と言われますが、当時のスープは豚骨を少し煮た透明感のある物でした。
やがて1947年(昭和22年)に開業した福岡県久留米市の屋台「三九」(さんきゅう)で、ある日偶然白く濁った豚骨スープが誕生し、九州全域のラーメン屋に大きな影響を与えます。
うっかり豚骨を煮立たせてしまったことでできた、白濁したスープが想像以上においしかったため、ラーメンに取り入れたのです。
このように、原型となる中国発祥のラーメンに独自のアレンジを加えたラーメン屋が日本全国で開業され、ラーメンは一大国民食へと進化を遂げていきました。
ラーメン屋の種類
ラーメン屋の分類は、スープの種類、ラーメン屋の系統、地域性などによって様々です。
スープによる分類
ラーメンの味を決めるスープには、大きく分けて「清湯」(ちんたん)と「白湯」(ぱいたん)の2種類があります。
清湯は濁りのない透き通った出汁で、すっきりとした風味が特徴。豚骨、鶏ガラ、鶏ガラ豚げんこつ混合、魚介出汁など材料によって味が異なります。
白湯は、主に動物や魚の骨、野菜などを強火で長時間煮込んだ物で、白濁した色と濃厚な風味が特徴。豚骨出汁と鶏白湯が代表的です。
ラーメン屋ではスープに醤油、味噌、塩ダレなど独自の調味料を加えて、様々な味のラーメンを提供しています。なかには清湯と白湯を複数混ぜ合わせてスープを作っているお店もあるのです。
ラーメン屋の系統による分類
独自の新しいラーメンで他店へ影響を与えているラーメンや、弟子、孫弟子が独立の際に基本を継承しながらも個性を出したラーメンを「〇〇系ラーメン」と呼びます。
代表例のひとつが「家系」(いえけい)です。総本山は、1974年(昭和49年)に創業された神奈川県横浜市の「吉村家」(よしむらや)。吉村家で修業を積んだ弟子が自分の店を構えた時、屋号に「〇〇家」と名付けることが多かったことから、「家系ラーメン」と呼ばれるようになりました。
濃厚な豚骨醤油ベースのスープと太いストレート麺、チャーシュー、ほうれん草、海苔のトッピングが特徴。今では、吉村屋とは直接関係がなくても、似たスタイルの濃厚な豚骨醤油ラーメンを提供するラーメン屋も家系ラーメンに含めるようになり、ラーメン屋の一大ジャンルとなっています。
一方、ボリューム満点の豚骨ラーメンで有名なのが、「二郎系」(じろうけい)。本店は、1970年(昭和45年)に慶應義塾大学三田キャンパス近くで開業した「ラーメン二郎」です。豚骨ベースの醤油ラーメンに山盛りの野菜とチャーシューが特徴。
小サイズでも一般的なラーメンの特盛以上のボリュームがあり、愛好者は「ジロリアン」と呼ばれます。のれん分け店は数多く、さらには直系店でも亜流店(弟子、孫弟子店の派生店)でもないけれど二郎風のラーメンを提供する「インスパイア系」のラーメン屋も少なくありません。
また「大勝軒系」(たいしょうけんけい)という系統もあります。ルーツは、1948年(昭和23年)に東京都杉並区荻窪に開業した「丸長」(まるちょう)です。日本そばの技法を取り入れ、日本で初めてスープにかつお節など魚介系の食材を使用して、画期的なラーメンを開発しました。
丸長の創業メンバーのひとりが1951年(昭和26年)に東京都中野区に開店したのが「中野大勝軒」(なかのたいしょうけん)で、1955年(昭和30年)には初めてつけ麺を開発し、特製もりそばという名前で人気メニューとなりました。
1961年(昭和36年)、のれん分け店となる「東池袋大勝軒」(ひがしいけぶくろたいしょうけん)が東京都豊島区に開業。約20年間でのれん分けしたラーメン屋は100以上におよび、孫弟子のラーメン屋を含めると200以上が全国に開業しています。
その他、魚介系と動物系の混合スープを使った、東京都中野区の「中華そば青葉」(ちゅうかそばあおば)を総本山とする「青葉系」ひとつの店舗で、2種類の屋号を使ってラーメンを提供する「二毛作ラーメン」のパイオニアとして知られる、東京都世田谷区の「せたが屋」「ひるがお」をルーツとした「せたが屋系」などが「○○系ラーメン」の代表格です。
地域による分類
1960~1970年代(昭和30~40年代)、「札幌ラーメン」の名を冠したラーメン屋チェーンが展開され、インスタントラーメンの商品名に起用。観光資源としてPRに用いられ、町おこしに貢献するご当地ラーメンがブームを巻き起こしました。例えば、北海道では札幌、旭川、函館、釧路の4つが「4大ラーメン」と呼ばれています。
代表的なご当地ラーメンは、以下の表の通りです。
地域 | ご当地ラーメンの 名称 |
特徴 |
---|---|---|
青森県弘前市 | 津軽ラーメン | どろどろの「濃厚煮干し系」とさっぱりした「王道系」がある |
福島県喜多方市 | 喜多方ラーメン | 醤油ベースのスープにコシが強い縮れた平打ち麺 |
栃木県佐野市 | 佐野ラーメン | 醤油スープに青竹打ちの平麺 |
岐阜県高山市 | 高山ラーメン | 鶏ガラベースのあっさり醤油味に細麺のちぢれ麺 |
富山県富山市 | 富山ブラック | 濃い醤油スープに大量の粗びき胡椒 |
和歌山県紀北地方 | 和歌山ラーメン | あっさりした「醤油系」とコクのある「豚骨醤油系」がある |
広島県尾道市 | 尾道ラーメン | 豚の背油を浮かせた醤油ベース |
徳島県徳島市 | 徳島ラーメン | 甘辛く煮付けた豚バラ肉と生玉子トッピング |
福岡県久留米市 | 久留米ラーメン | 濃厚で骨髄の匂いの強い豚骨スープに固めのストレート麺 |
熊本県熊本市 | 熊本ラーメン | 揚げニンニク、マー油(ニンニクを揚げた油)を豚骨スープに入れる |
鹿児島県 | 鹿児島ラーメン | 豚骨ベースの半濁スープにストレート麺、甘みの強い醤油味 |
現代のラーメン屋
現代のラーメン屋は、ラーメン以外のメニューやお店作りを工夫。一人一人の好みに合ったラーメンを提供できるよう、カスタマイズも可能になってきています。
サイドメニューが充実
ラーメン屋では、ラーメン以外に餃子・炒飯などのサイドメニューが充実。定食、カレー、チャーシュー丼などお腹を満たせるメニューの他、メンマ、味玉などをおつまみにお酒を飲める居酒屋として利用する人が増加しているのです。
デザートが火付け役となりSNSなどで拡散され、人気店となるケースも見られます。
自分好みにオーダーできる
野菜の量、スープの濃さ、背油の量、麺の固さなど、細かい部分まで自分好みのラーメンをオーダーできるラーメン屋が増えてきました。こだわりのラーメンを、さらに自分好みにカスタマイズして食べるスタイルが浸透してきています。
店内を清潔、お洒落に
清潔感があり内装がお洒落なラーメン屋も多く、男性だけでなく女性も気軽に訪れることが可能。カウンターを半個室にして食事中の姿が周囲から見えないよう工夫していたり、外観をカフェ風にして店内にジャズを流したりするラーメン屋もあります。
高単価なラーメンも人気
具材にこだわり抜き、手間暇をかけて提供される高額のラーメンも人気。例えば、2012年(平成24年)に、東京都豊島区巣鴨にオープンした「Japanese Soba Noodles 蔦」(ジャパニーズソバヌードルつた)は、2016年(平成28年)に世界で初めてラーメン屋としてミシュラン一つ星を獲得しています。
看板メニューである「特製醤油Soba」は3,000円と高額ですが、国内外から注目を集め、一時は整理券を配布していたほどの人気ぶりでした。