ここ数年でメーカーが「楽天市場」に公式店を構える事例がずいぶん増えました。小売店を介さずに、ECを活用して販売しているのです。しかし、メーカーにとっては卸先である小売店の売上を伸ばすことも欠かせません。そこで、今回はメーカーの販促支援を行っている株式会社CARTA COMMUNICATIONS(以下、CCI)Commerce Containerチームの西奈津紀さんと、楽天グループ株式会社(以下、楽天)マーケットプレイス事業 アカウントイノベーションオフィス(以下、AIO)(※1)浅貝健人さんに、「楽天市場」におけるメーカー販促の現状と、メーカー向けのソリューションについて伺いました。
(※1)アカウントイノベーションオフィス(AIO)…メーカー向けのソリューションを提供する部署
この記事の目次
アフターコロナにおける消費者とメーカーの動向
――新型コロナウイルスが5類へと変わり、社会全体に変化が起きているかと思います。「楽天市場」を利用している消費者や、販売しているメーカーの動向もそれに合わせて変化しているのでしょうか?
浅貝さん:まず、消費者の動向からお話します。コロナ禍ではお買い物の手段として、「楽天市場」を含めてECを選択される方が増加したため、EC市場全体の売上が伸びました。楽天の国内EC流通総額(※2)においては、2022年度は5.6兆円(前年同期比+12.3%)と継続的に伸長しています。昨今の5類への移行後も、コロナ禍で「楽天市場」などさまざまなECサービスにおいて新規・既存ユーザーが定着し、引き続き利用いただいている傾向にあると捉えています。
(※2)国内EC流通総額(一部の非課税ビジネスを除き、消費税込み)=市場、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ブックスネットワーク、Kobo(国内)、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、Rakuten24 などの日用品直販、Car、ラクマ、Rebates、楽天西友ネットスーパー、クロスボーダートレーディング等の流通額の合計
一方でメーカーの動向は少し変わったと感じています。コロナ禍と同様にECを1つの販路として活用することに変化はないようですが、商品やブランドの認知や検討の場所として「楽天市場」に価値を感じて取引するメーカーが増えています。購買意欲を持った消費者が多く訪れる「楽天市場」にメディアとしての価値を感じていただいているのです。
――元々小売店や中小規模の事業者が多い印象の「楽天市場」ですが、メーカーが参入し始めたのはいつ頃からなのでしょうか?
西さん:コロナ以前からメーカーの参入は増加傾向ではありましたが、新型コロナウイルスが参入の勢いを後押しした印象を受けます。特に、化粧品メーカーの勢いがすごかったですね。今まで腰が重かった百貨店に売場をお持ちのメーカーが世界観を表現しやすいということで、続々と「楽天市場」に投資を始められました。
浅貝さん:業界ごとに流れがあると感じています。最近になって家電メーカーの動きが活発になりました。「楽天市場」に出店の選択肢を持っていなかった日系メーカーが公式店をオープンされたり、AIOのソリューションを活用してマーケティングのご支援をしたりということが、ここ1~2年でかなり増えています。
西さん:Amazonはベンダー契約で商品を卸すと販売できるため、少ない負担で始められますが、「楽天市場」で販売を開始するには体制を整える必要があります。しかし、負担が掛かるとしても、顧客からのニーズに応えるべく「楽天市場」と向き合い始めるメーカーがこの数年で増えてきたのです。
メーカーの出店による小売店からの懸念は?
――「楽天市場」ではメーカー企業の公式店の出店が増えているとのことですが、卸先である小売の出店店舗の売上が落ち込むといった、懸念の声が上がったりすることはないのでしょうか?
西さん:メーカーが「楽天市場」に出店する目的は、自社商品の売上を伸ばすことが一番だといえます。これは公式店のみで売上を伸ばそうと考えているのではなく、メーカーの商品を取り扱っている小売店を含めた売上を伸ばそうということです。
あくまでメーカービジネスの売上構成比はほとんどがオフラインであり、その主要な販路はドラッグストアや家電量販店のような小売店です。こういった小売店は「楽天市場」にも出店しているため、両社の関係を考えるに全体の売上を伸ばすことがメーカーにとっても良いことがわかります。
浅貝さん:そこで、AIOのソリューションが注目されています。メーカーの公式店を伸ばすだけではなく、そのメーカーの商品を購入できる「楽天市場」に出店する小売店とともに販促を行えるソリューションをご用意しています。そのソリューションを活用すると、メーカーは公式店に並ぶ商品だけをプロモーションするのではなく、専用のブランドページ上に対象の小売店も一緒に掲載し、プロモーションしたい商品の流通量を「楽天市場」全体で伸ばせるのです。
新商品が発売される際など、ECの部署より宣伝部やマーケティング部といったメーカーのブランド全体、市場全体を盛り上げる目的の部署から予算を頂くことが多いです。なぜなら、「楽天市場」を認知や検討のきっかけを与える場(メディア)として活用いただいているからです。商品自体の認知・検討層が拡大すると、公式店以外の、「楽天市場」に出店する小売店を含めた売上を伸ばすことにもつながります。
西さん:メーカーが公式店を構える目的の1つに値崩れを抑えることが挙げられます。公式店から適切な商品情報をお届けすることで値崩れを抑え、安売りの抑止が消費者からのイメージ改善につながります。ブランド・エクイティが保たれることは、そのブランドの流通全体の底上げになるでしょう。
メーカー向けソリューション「RMP-Showroom」と「RMP-Brand Gateway」
――公式店の参入やAIOのソリューションによって「楽天市場」に出店する小売店にも良い効果を与えていることがわかりました。メーカーに向けて具体的にどのようなソリューションを提供しているのか教えていただけますか。
浅貝さん:広告メニュー自体はたくさんありますが、先ほどお伝えした最近活用事例が増えているメニューはRMP-Showroom(以下、Showroom)とRMP-Brand Gateway(以下、Brand Gateway)です。メーカーが取り扱うブランドを紹介する「楽天市場」内の特設ページ「BRAND PLACE」にブランドの公式のページやポータルページを作成し、マーケティング施策が可能となるソリューションです。
浅貝さん:メーカーごとに「楽天市場」に期待されることが売上アップや認知の拡大など、さまざまです。そのため、ShowroomとBrand Gatewayでは、コンテンツをオーダーメイドで作成し、認知から購入、その後のロイヤル化までフルファネルでデータ分析可能な、メーカーの目的に寄り添ったブランドページを立ち上げています。
両ソリューションの異なる点は掲載期間とご提供するデータです。Showroomは1~2カ月の短期間、Brand Gatewayは6カ月から掲載でき、「楽天市場」内の各カテゴリ別の流通における自店舗の商品の占めるシェアを開示しています。
このソリューションの特徴に、「楽天市場」のマーケティングデータを活用できることが挙げられます。このデータをもとにAIが商品を購入しそうなペルソナを作成し、「楽天市場」内外から集客をするのです。このとき、ブランドページに集客するため、「楽天市場」内に公式店を構えていないメーカーでも、このソリューションを利用できます。
浅貝さん:ブランドページに訪れたユーザーに商品の理解を深めてもらうため、キャンペーンを行います。商品に関する動画の視聴やアンケート、お気入り登録やメルマガ登録など、ユーザーがアクションしたインセンティブに楽天ポイントを付与しているため行動喚起を促しやすい仕組みになっているのです。キャンペーンはメーカーの目的に合わせて柔軟に設計できます。
流通増だけじゃない!幅広い用途で活きるソリューション
――Showroom やBrand Gatewayを活用することは、メーカーが自社商品の流通金額を「楽天市場」内で伸ばすこと以外にどのような効果をもたらすのでしょか。
浅貝さん:Brand Gatewayは6カ月からブランドページを掲載できるため、公式店を設けるのに近い感覚でマーケティングができます。また、すでに公式店を構えているメーカーは公式店内でしか行えなかった施策が、卸先の小売店を巻き込んで販促できるようになります。キャンペーンを通して検討層に上がったユーザーを対象にメール送信するなど、リテンションを行うこともできるため、継続的にユーザーとコミュニケーションを取れるのです。
「楽天市場」のみならず幅広くマーケティング活動に利用可能なデータを提供している点も好評です。楽天IDに紐づいているユーザーの情報や購買行動と、ユーザーが施策に対してどのような行動を取ったのか、ページをどこまで読んで離脱したのか、競合ブランドに関する問いを入れたアンケートの回答など、さまざまな情報を掛け合わせたデータを提供可能です。そのデータをもとに、「楽天市場」以外での販路でのマーケティングに活用されているメーカーの話をよく伺います。
特に購入までの検討期間が長い商品では、広告を出してもユーザーが興味を持ってくれたのか、最終的に購入したのか、どのような行動につながっているのかわからないと言われていました。Brand Gatewayではキャンペーンによって認知したユーザーが、「楽天市場」内で行われるさまざまなアクションから検討層に引き上がっていることを確認できます。アクセス数から確認できる認知と、購入されることでしか判断できなかった従来の広告ではなく、検討層がどのような行動を取って購入するのかファネル分析できる点が明らかになったのは喜んでいただけています。
西さん:ブランディングの観点でも「楽天市場」の評価は高いです。ブランドの世界観を表現するにあたって、キャンペーンやページ作成の自由度の高さや企画用の販促品の提供など、メーカーの希望を形にしやすくなっています。
ロボット掃除機「アイロボット」の活用事例
――実際にこのソリューションを活用した具体的な事例をお話しいただけますか?
浅貝さん:ロボット掃除機のルンバで有名なアイロボット様に、昨年2度Showroomに取り組んでいただきました。ロボット掃除機で最大シェアをお持ちのアイロボット様がさらに売上を伸ばすには、すでに自社製品の購入を検討している人を刈り取るだけではなく、ロボット掃除機を自分事ととらえられていなかったり、最新のロボット掃除機の進化を知らなかったりする人にも興味をもってもらい、楽天内の見込み顧客を拡大する必要があると考えました。
一方で、Showroomの活用により、ブランドページの閲覧を起点として、その後のユーザーの行動を調査し、検討層の測定を行いました。結果として、検討層に引き上がったユーザー数が見込み顧客の拡大に良い影響を与えたとして、アイロボット様には今年の6月からBrand Gatewayを継続してご実施いただいています。
何から始めたら良いかわからないメーカーはまずお問い合わせを
――最後に今後、このソリューションを通じてメーカー企業にどのような価値を提供していきたいかお伝えいただきたいです。
西さん:「楽天市場」にメーカー独自のプランがあることをもっとしていただきたいと思っています。具体的に何ができるのかわからない場合に、まずはドアノックくらいの気軽な気持ちでお問い合わせいただきたいです。
今回紹介があったBrand GatewayやShowroom以外のソリューションや、メーカー公式店と楽天24のような楽天への卸、そして通常の卸先となる小売店とのバランスの持ち方など、お困りごとを解決できるようサポートしたいと思います。
浅貝さん:メーカーからのロングセラー商品のマーケティングのお話をいただくことが多いですが、Showroomを活用した新商品のマーケティング事例も増えています。テレビCMなどマスメディアで宣伝を行うことに合わせて、データやセグメントからユーザーの態度変容を細かく取得可能です。
さらに今後は「楽天市場」のデータを活用し、新商品の開発を行うなど新しい取り組みを進めようと考えています。もし気になるメーカーの方がいらっしゃいましたら、トライアルとして一緒にやってみませんか。
インタビューを通して:「楽天市場」を活用し、オンラインとオフラインの両販路を強化
「楽天市場」をメディアとして活用しているユーザーが増えていることを取材中に伺って、私自身そういう使い方をしていることがあると気付かされました。アパレルなどのファッションアイテムを「楽天市場」で見て、店頭でサイズを確認してから購入。家電量販店で家電を見比べてから「楽天市場」で購入。こういった購買行動は一般的になっていると思います。
楽天グループ全体では月間3,900万人(2022年12月時点)のアクティブユーザーがおり、フルファネルでマーケティング施策を実施できるのはメーカーにとって魅力的なことといえるでしょう。キャンペーンを開始する前の要件定義から、フィードバックとなるデータの提供まで、メーカーからの評判が良いようです。
楽天メーカーソリューションナビ:https://maker-showroom.rakuten.co.jp/solution/
CCI Commerce Container(コマースコンテナ):https://www.commerce-container.cci.co.jp/
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