令和5年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」
令和5年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」の受賞作品および審査員講評です。
審査員
山田 吉郎
最優秀賞 加藤 和子
今度いつと尋ねる母に又来ると別れしままの永き歳月
離れ住む母とひとときを過ごしての別れ際、「今度いつ」と尋ねた母の言葉が切ない。下の句の「別れしまま」という感慨が読む者の胸を打つ一首。
優秀賞 相川 和子
父母は亡く帰る家なきふる里や正月なればやはり恋しき
ふるさとの父母も亡くなり、生家もなくなった人の思郷の想いがさりげなく吐露されている。「正月なればやはり恋しき」に生活感がにじみ出ている。
優秀賞 詩音
旅立ちの花を貰った翌日は心の穴を花瓶がわりに
新たな人生の旅立ちにあたって花を贈られたのであろう。そこには希望と同時に「心の穴」もあるという。青春期のまぶしく繊細な心情を詠んで印象的。
優秀賞 高橋 スミ※高ははしご高
花の有る道を選びて散歩する今日はソヨゴの赤い実光る
端正で美しい写生詠。「花の有る道を選びて」にしっとりとした落ち着きのある心境がうかがわれる。下の句の「赤い実」が鮮やかな映像を結んでいる。
優秀賞 長谷川 杏莉
三度目の試験を受けに行く大学今度こそはと風吹き飛ばす
受験に正面から向き合う歌。下の句の「今度こそはと風吹き飛ばす」に若々しい力が感じられ、まっすぐにうたいきったところに清々しさが流露する。
優秀賞 二方 久文
あの頃とおんなじ笑顔すこしだけ大人びている君の遺影は
しみじみとした追悼歌。「あの頃」の君の笑顔を回想し、今見つめている君の遺影が「少しだけ大人びている」と感じとる繊細さが、読者の胸に沁みる。