令和元年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」
令和元年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」の受賞作品および審査員講評です。
審査員
長澤 ちづ
最優秀賞 高橋 敦子
胸元に抱へきれない漣の放つ光をこぼしゆく鴨
透明で豊かな詩の世界が広がる。「~きれない」や「こぼす」の過剰を表す語が、この短歌では効を奏して豊かさへと導く。水辺という場の設定も透明感へといざなう。
優秀賞 熊谷 うめ
消しがたき過去と思へばアルバムもしまい置きたり盲しいの今も
過去を写真で振り返ることは叶わない現在だが、アルバムを処分できない心情が切々と伝わる。人生への哀惜は周囲の人々への感謝の念でもあろう。結句の収め方が巧み。
優秀賞 小林 宏子
受験する少女暗記の声ひびきばあばも合せる枕草子
健やかに育ち受験期を迎えた孫への愛が込められた一首。「ひびきばあば」を中心とした濁音が、孫歌の甘さを救う役を果たす。更に「枕草子」が利発な少女像を立ち上げる。
優秀賞 長谷部 誠一
氷山が解け水位増す海水はきっと地球の涙なんだね
目先の快適な生活が優先し地球の温暖化は益々深刻化する。そんな現状の打破を「地球の涙」と擬人化して訴える作者。詠う素材を社会問題に求めた点を評価したい。