令和4年度大和市さくら文芸祭「俳句の部」

更新日:2023年03月23日

令和4年度大和市さくら文芸祭「俳句の部」の受賞作品および審査員講評です。

審査員

梶原 美邦

最優秀賞 高橋 桂子

産土は肺に沁み入る雲雀東風

生まれた土地に帰って、思い切り深呼吸をする。天上と地上の使者である雲雀が来る頃の硬い東風を吸い込む。胸に幼い頃の懐かしい痛みを感じて微笑む。

優秀賞 安齋 行夫

晴天へ駆け登り行く出初式

江戸の火消が創めた出初式。今は新春に放水や梯子乗り等行われるが、伝統の梯子乗りが圧巻。梯子を素早く登った団員は青空の人となって演技を始める。

優秀賞 金丸 尚

秋茄子の水やり任せ入院す

茄子は「水で作る」と言われるように、秋茄子は柔らかく瑞々しいものだ。だから土が乾いたなら、水をたっぷり遣って欲しいと家族に頼んで、入院した。

優秀賞 高浪 國勝(※高ははしご高)

桂から淀へ変れば春が行く

京都の桂駅のある西京区から電車で染井吉野を眺めながら行くと、淀駅のある伏見区。街を桃色に染めた河津桜も早や葉桜の兆し。春が過ぎてゆくようだ。

優秀賞 竹岡 和奏

鉄棒をくるりと回っていわし雲

校庭の遊具の鉄棒に両手で掴まり、空に向かって跳ね上がり、眼を瞑り、回転して降りると、心に空の鰯雲のような歓喜の後の不安がちょっぴり残った。

優秀賞 中村 文江

伐採の札付けし裸木凜と立つ

樹木名と番号の札が取り付けられた裸木。落葉し尽した冬木である。地区で意見や苦情により年々伐採してゆくが、裸木は最期まで毅然と立ち続けている。

優秀賞 真壁 繁子

春立てり湯気立ち上ぐる橅の幹

橅は高さ三〇mで太さは一m、樹齢三〇〇年にもなる森の神。森は積雪に強く、保水力に富み、生物を育む。幹に陽が射してくると湯気をたてて春を告げる。

優秀賞 和田 加代子

訛りある友とのんびり初電話

故郷に帰るとスーツを脱いだような気軽さになる。それは訛が昔に連れてゆくからだ。友からの初電話。里訛が長閑な声を醸し、受話器を置くのも忘れた。

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