今回は映画ではなく、演劇の感想です。新国立劇場で『THE BANK ROBBERY』を見て来ました。元々はイギリスの戯曲を日本版にかなりアレンジした銀行強盗計画をめぐるドタバタコメディ。
舞台の感想の前に、ツイッターのモーメントでいかにして僕がキャプテン沼にはまっていったかの経緯をまあ読んで欲しい。
映画『あさひなぐ』。この時は主演の西野七瀬さんに目がいきつつも「このヤンキー女、どっから連れてきたんだろうな…って乃木坂のキャプテンなのかよ！演技うめー」という感じでした。
萩尾望都の原作を野田秀樹が戯曲にした『半神』。この時点でもう完全にキャプテンの演技力にやられていますね。これ難解でしたが、すっごい良い舞台でした。
そしてミュージカル『レベッカ』。大塚千弘さんや平野綾さんという格上の先輩女優とのトリプルキャストでみごとにヒロインを務めた。
と、
観劇を重ねるごとに僕が桜井玲香キャプテンの演劇スキルにやられていくのがよくわかりますね。この人、本当にすごいと思うんですよ。
上記のモーメントの中でも書いているんですが、声がものすごく良い。しかも何段階もギアを切り替えられる。
今回の『THE BANK ROBBERY』、俳優陣が相当な早口でギャグをまくしたてるシーンの連続なんで、ベテラン俳優でもともすれば台詞がききとりにくい場面もあるんですが、劇場で聞くと桜井玲香さんの声がまるで別のアンプとマイクを使っているかのように声がクリアで聞き取りやすいんですね。大きな声を出すというより、声の輪郭が鮮明なんですよ。これ、客席で見た人なら同意してもらえると思うんですが、役者としてすごい武器だと思います。
今回の舞台では結婚詐欺師の女の子役なんですが、ボーイフレンドの原嘉孝演じるサムを部屋に招き入れてたらしこもうとしたら刑務所帰りの元木聖也さん演じる彼氏が帰ってきてさあ大変…という爆笑ドタバタコメディシーンがあるんですが、けっこう相当に長い時間を一人でキリキリ舞いする大変な場面なんですね。これを右に左にとサッカー選手のドリブルのように切り返す桜井玲香さんの声と身体のスキルがすごく高い。モタモタすると面白くなくなくなってしまうシーンなんだけど、まるで早回しのようなキレキレの演技で演じている。
乃木坂46では生田絵梨花さんがミュージカルの世界でも活躍していて、菊田一夫演劇賞も受賞している。桜井玲香さんはまだ生田絵梨花さんほどスポットライトが当てられていませんが、全般的な演劇スキルの高さでは桜井さんもかなりのものだと思う。
生田絵梨花さんは将来の目標がミュージカル女優にかなり定まっていて、自分の心の中にある目標に向かって突き進む人に見えるんですよね。打者で言えば全球フルスイングで打席にのぞむホームランバッター、投手で言えば一球入魂の全力投球みたいなところがある。
桜井玲香さんのスキルって生田さんに比べるともっと演技全般に広がっているというか、『あさひなぐ』みたいなヤンキー少女も演じるし『レベッカ』みたいなお嬢様も演じる。『半神』ではシュラという醜い女の子も声をつぶしてみごとに演じる。状況にあわせてスタイルを柔軟に変えていくんですね。生田絵梨花さんは天性のホームランバッターで、塀ぎりぎりも場外も同じホームランだとしても自分の心の中にある理想の放物線を描いてフルスイングする求道者みたいな所があると思うんですが、桜井玲香さんは状況に応じてバントもするし四球も選ぶ。ランナーが三塁にいて1アウトなら犠牲フライを打って点を入れるというような、作品に対する解釈、判断力がいつも鋭いと見ていて思うんです。ピッチャーなら打たせて取る投球もできる。ルールを理解する解釈力が高いというか、ゲームの勝ち方を知っている、最少失点、最少得点でさらっと勝つための合理的なプレーができるクレバーさがあって、そういう所もすごくキャプテンらしいと思う。キャプテンとしても管理のきつくない自由主義、個人主義的な良いキャプテンだったんですよね。いやほんとこの人、卒業後に篠原涼子や菅野美穂みたいに女優として大化けする可能性おおいにあると思います。
と、すっかり桜井玲香さん推し推しトークになってしまいましたが、『THE BANK ROBBERY』舞台としてもかなり面白いです。イギリス演劇というと敷居が高そうですが、ドリフ的なドタバタもあるし、主演の原嘉孝（宇宙Six/ジャニーズJr.）さんのサムも、優しさと面白さのある青年を演じつつ、すごくかっこいい殺陣を演じる見せ場がある。『ルパンレンジャー』に出演していた元木聖也さん（高尾ノエル / ルパンエックス）のアクロバットな体技もすごい。劇場が大きいので当日券も見込めます。大阪公演もあるのでお時間のある方はおすすめ、すごく楽しめる舞台です。
