自然との共生 考え方・方針
自然との共生 考え方・方針
課題認識
2022年12月にカナダ・モントリールで開催された「生物多様性条約/第15回締約国会議(CBD/COP15)」において、愛知目標(2020年まで)の後継となる2030年までの国際目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択されました。このGBFの最も注目すべき点は、「2030年までのネイチャー・ポジティブの達成」であり、「カーボン・ニュートラル」「サーキュラー・エコノミー」と並ぶ、3つのキーワードが出そろったことになります。この3つは人類社会の基盤となる地球環境の課題解決において密接に関係しており、複合的に社会変容(トランスフォーマティブ・チェンジ)に取組むことの必要性が国際社会で認識されています。
このGBFの採択に向けた動きと並行して、企業の財務情報の新たなる開示指針としてTCFDに続くTNFDの検討が進められており、2023年9月に正式版(v1.0)がリリースされることで、ネイチャーポジティブ達成に向けた企業への投資が促されることが期待されています。これらの国際的な投資動向において、ネガティブに作用するのは生物多様性または自然資本に関連する自社の事業リスクへの認識の遅れまたは対応の遅れであり、逆に、ポジテジブに作用するのは自社本業でネイチャーポジティブへの貢献を事業として先取りし、収益を実現することでしょう。
カシオグループとの関わり
GBFによって示されているのは、より直接的に効果のある生物多様性の回復のための行動を迅速に起こすことですが、その達成度を測るために十分に有効と言える指標はまだ開発の途上とされています。しかしながらこれを待っていては遅れをとることになるため、まずは身近なところから生物多様性低下の現状を見つめ、これを回復するためにはどうすればよいか?について、自社の得意分野に照らして解決策を考える必要があるでしょう。
カシオには、これまで培ってきた小型の電子機器を実現するためのハードやソフトの技術があり、さらには、他社では真似しにくいユニークな着想やそれを認める経営判断があり、これまで他社の意表をつくような商品を世に送り出してきたところがあります。このような特性を生物多様性の回復という目的に振り向けることで、世界の投資家が注目するような新規事業を生み出すことが期待されているものと認識しています。
目標と行動計画
カシオでは2011年3月に「生物多様性ガイドライン」、2015年に「紙の調達方針」を策定しました。これは愛知目標の時代背景の中で構築したものであり、その後の今日までの歳月が経過する中で、昨年のCBD/COP15で採択されたGBFあるいはTNFDの要求に照らしても、見直しが必要となっています。
折しもカシオでは将来的な経営ビジョン等を再構築している最中であり、国際動向を踏まえてこれらと整合した改訂を行う予定です。
カシオグループ生物多様性ガイドライン
基本方針
カシオグループは、「事業活動が生物多様性からの恵みを受けて成立し、また、生物多様性に影響を与えている」との認識にたち、生物多様性の保全活動を地球温暖化防止への取り組みと並ぶ重要な環境活動として位置づけ、環境経営に取り込み、推進体制を構築したうえで、持続可能な社会の実現のため、グループをあげて取り組みます。
具体的な取り組み
1.(事業活動)
自然の摂理や伝統に学び、その知恵をいかした技術開発を行い、ユーザーの自然愛護の精神を喚起する製品やサービスを創造し提供することにより、持続可能な社会の実現に貢献します。
- ペーパーレス社会の構築を促進します。
- 独自の技術開発により省資源化へ貢献します。
- 自然を慈しむ商品開発を行います。
2.(影響評価)
研究/開発、設計、資材調達、製造、物流、販売、製品使用、廃棄、リサイクル等の事業活動、及び事業所や工場立地において、生物多様性に与える影響の調査・分析を行い、改善する施策を定め、影響の大きいもの、効果の高いものから実施していきます。
- 生態系サービスを利用/使用している部材(皮革、木材、紙等)、素材(鉱物資源等)の適正な調達に積極的に取り組みます。
- 製品を構成する部材/素材レベルでの生態系への配慮を確認するため、サプライチェーンを通じたアンケート調査を実施します。
- カシオグループとしての影響評価手法(チェックシート、指標導入)を確立します。
3.(情報開示)
環境活動の成果を積極的に開示し、社会の生物多様性への意識向上に努めます。
4.(社会連携)
NPO/NGO、行政機関、地域住民等による生物多様性保全に貢献する活動を積極的に支援します。
5.(全員参加)
全従業員に対して、生物多様性の保全に対する理解を高め、自主的な活動を実践していくための教育を行い、全員参加の活動をめざします。
カシオグループ 紙の調達方針
目的:紙の原料となる森林資源の保護と持続可能な利用を通じた生物多様性の保全を目的として、紙の調達方針を定める。
適用範囲:カシオグループが国内外で調達する紙製品全般
方針:以下の基準に沿って事業活動で使用する紙を調達する。
- 紙の原料木は、伐採地の法律・規則を守って生産されたものであること
- 保護価値の高い森林を破壊しておらず、重大な環境・社会問題にかかわる企業の製品ではないこと
- 信頼できる認証紙や再生紙を優先的に利用する
目標と実績
評価 ◎:すべての目標達成、○:目標をおおむね達成、△:成果より課題が残る、×:進捗なし
活動テーマ | 中長期目標 | 2022年度目標 | 2022年度実績 | 評価 | 2023年度目標 |
---|---|---|---|---|---|
自然との共生 | 「持続可能な紙」の利用比率を2030年度までに100%とする。 | 中長期目標の再設定に向けて検討する。 | 国内外の動向に関する情報収集・分析 | △ | 中長期目標の再設定に向けて検討する |
体制
カシオでは、2015年にCSRマテリアリティとして、環境分野で3つのマテリアリティを設定しました。このうち「自然との共生(生物多様性保全)」を環境分野の3番目と位置づけ、ISO14001環境マネジメントシステムの構成要素として「M3委員会」を2017年に立ち上げました。この「M3委員会」では、国内向け製品カタログの森林認証紙化を進めるとともに、国内の主要な事業拠点の生物多様性調査を進め、環境省レッドリストに掲載されている希少植物等が事業所敷地内に自生していることを発見しました。中長期目標については継続検討中ですが、ISO14001で管理する短期的な行動計画としては、希少植物等の保全活動をはじめとして、自社内から生物多様性の主流化を進めるべく、従業員の自発性を重視した施策(見守り隊、CASIOの森、河川清掃活動への参加)を推進しています。
また、社会の要求として本業を通じた社会課題への貢献がますます求められていることから、上記の主流化施策と事業部門の本業との連携や、社外に対する主流化促進のための教育啓発施策(WILD MIND GO!GO!)を推進し、社員有志による自発性を重視した施策をさらに拡大・強化していく方針です。