ホンダ シビックRS ▲ついに発売されたホンダ シビックRSは、サーキット志向ではない「フツーの運転好き」としては気になって仕方ない1台ですが、発表された車両価格は、シビック タイプRとさほどの大差はない419万8700円。残念ながらちょっと高いかも……ということで、その約半値で買える「シビックRSとほぼ同様の魅力を備えた中古モデル」を探してみることにしましょう!

シビックRSの新車価格は、微妙に手が届きづらい「約420万円」

「街乗り最高スポーツ」を標榜するホンダ シビックRSが9月12日、ついに発売された。今年1月の東京オートサロン2024でプロトタイプが世界初披露されて以来、シビックRSの発売を心待ちにしていた人も多いだろう。

それもそのはず、レブマッチング機構付き6MTや軽量フライホイール、専用チューンの足回りなどを「普通のパワーユニット」に組み合わせたシビックRSは、サーキットへ行かなければ本領を発揮できないタイプRと違い、いついかなる局面でも胸のすく走りが存分に味わえるはずの1台。世の車好き/運転好きの多くは、そういったモデルの登場こそを待ち望んでいたのだ。

だが――正式発表されたホンダ シビックRSの車両価格は、意外とぜんぜん安くなかった。

具体的には、現行型シビック タイプR(※現在は受注停止中)の499万円7300円と約80万円しか違わない419万8700円。支払総額は、「高すぎる!!」というほどではないが、「ちょっと厳しいかも……」と感じる人が多いはずの450万円以上となる。

まぁそれでも歯を食いしばってシビックRSの新車を注文してみるのもひとつの手だが、別の考え方として「シビックRSの半額ぐらいで狙えて、なおかつシビックRSとおおむね同等の“街乗りスポーツ性能”が堪能できる即納中古車を買う」というのも、悪くない作戦であるように思える。

ということで、シビックRSの代わりになるかもしれない総額200万円級のモデルを5車種、ピックアップしてみることにしよう。
 

ホンダ シビック▲すっきりしたインテリアデザインの中に程良い量の赤い差し色と、運転好きにとってはたまらない装置である「6MT」を配したホンダ シビックRS。これが買えるなら、それに越したことはないのだが……
 

候補その1|ホンダ シビック タイプRユーロ(FN2型)
→予算目安:総額160万~200万円

ホンダ シビック タイプRユーロ▲欧州向けのハッチバック型シビック タイプRを日本へ輸入した「ホンダ シビック タイプRユーロ」

候補その1は、2009年に2010台が限定発売された「ホンダ シビック タイプRユーロ」。シビックRSと比べると年式はいささか古くなるが、その分だけ「珠玉のK20A型2L自然吸気i-VTECが堪能できる!」というのが、この選択のキモとなる部分だ。

ご承知の方がほとんどかと思うが、2009年に登場したシビック タイプRユーロは、欧州市場向けに販売されていたシビック タイプRを日本へ輸入したモデル。

パワーユニットの型式は日本市場向けの3代目シビック タイプR(FD2)と同じK20A型2L自然吸気i-VTECだが、圧縮比がやや低めに設定されたため、最高出力はFD2の225psに対して201psと若干デチューンされている。だがサーキットでタイムを競いたいわけではない我々「街乗りスポーツ派」としては201psでもぜんぜん十分であり、むしろハイパワーすぎない方が好都合でもある。

トランスミッションは6MTのみの設定で、ギア比もFD2とまったく同じ。そして足回りはノーマルの現行型シビックと比べれば残念ながら硬めだが、同時期の国内向けシビック タイプR(FD2)の拷問のような(?)硬さと比べればマイルドではあるため、ファミリーカーとして使うことも可能だ。
 

ホンダ シビック タイプRユーロ▲宇宙船をイメージしたというシビック タイプRユーロのインパネまわり。トランスミッションは6MT
ホンダ シビック タイプRユーロ▲日本向けシビック タイプR(FD2)の最高出力225psには及ばない同201psとなるi-VTECユニットだが、「リッター100ps」を達成しているだけあって、動力性能への不満はほぼ感じないはず
 

そんなホンダ シビック タイプRユーロは、国産絶版MTスポーツ全般の中古車価格が超絶高騰している時代にあっても、総額160万~200万円付近のレンジにて好条件なフルノーマル車が狙える。

年式の古さと硬めな足を許容できるのであれば、「半値で買える現行型シビックRSの代わり」としては最高レベルの選択肢だと言えよう。
 

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ホンダ シビック タイプRユーロ(FN2型) × 全国
 

候補その2|ルノー メガーヌR.S.(3代目)
→予算目安:総額180万~240万円

シビック タイプRユーロと同じ方向性の選択肢、つまり「足は硬めだが許容範囲ではある、珠玉のパワーユニットを搭載する6MT車」としては、先代のルノー メガーヌR.S.が挙げられる。
 

ルノー メガーヌ▲こちらが先代ルノー メガーヌR.S.。写真は一部仕様変更が行われた2012年後半のモデル
 

これまたほとんどの人がご承知とは思うが、メガーヌR.S.は、ルノーのスポーツモデル開発とモータースポーツの運営を担当している「ルノースポール」が、フツーの5ドアハッチバックであるルノー メガーヌを超絶スポーティに仕上げたモデル。2014年5月には「R.S.275トロフィーR」が、ニュルブルクリンク北コースで当時のFF市販車最速記録をマークしている。

そんなルノー メガーヌR.S.の先代モデルは、「シャシーカップ」という路面追従性を追求したシャシーに最高出力250psの2L直4ターボエンジンと6MT、専用スポーツサス、LSD、ブレンボ製フロントブレーキキャリパーなどを組み合わせて2010年に上陸。2012年7月のマイナーチェンジで2L直4ターボの最高出力は265psとなり、2014年にはフロントマスクのデザインを一新した。また通常モデルの他、さらに高性能な「トロフィー」「トロフィーS」「トロフィーR」なども台数限定で導入された。

先代ルノー メガーヌR.S.は、クーペボディではあるが後席もまずまず広いため、家族での使用もまあまあOK。そしてシャシーカップではなく「シャシースポール」という快適なシャシーを採用した「モナコGP」なるグレードであれば、乗り心地もかなり快適である。
 

ルノー メガーヌ▲トランスミッションは6MTで、シートはレカロ製のバケットシートが標準装備となる
ルノー メガーヌ▲こちらは比較的コンフォートな「シャシースポール」を採用した限定車、メガーヌR.S.モナコGP。中古車の流通量はきわめて少ないが、もしも見つけたら即座にチェックしたい逸品だ
 

ただしモナコGPは30台しか輸入されなかったため、その中古車は超希少。そのため実際にはシャシーカップのモデルを選ぶことになるが、「トロフィーR」などの特殊なグレードでさえなければ、そして硬めの足に耐性がある人であれば、特に問題なく普段使いできるはずだ。

2024年10月上旬現在、トロフィーRなどを除く「素の先代メガーヌR.S.」の中古車は、総額180万~240万円付近が狙い目の価格帯。これもまたシビック タイプRユーロと並んで「半値で買える現行型シビックRSの代わり」としては素晴らしい選択肢である。
 

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ルノー メガーヌ(3代目)×R.S.系グレード×全国
 

候補その3|フォルクスワーゲン ゴルフGTI(7代目)
→予算目安:総額170万~220万円

フォルクスワーゲン ゴルフ▲ゴルフ7こと先代フォルクスワーゲン ゴルフのスポーティモデルである「ゴルフGTI」

先代ルノー メガーヌR.S.と似た方向性の選択としては「先代フォルクスワーゲン ゴルフGTI」も考えられる。

ご承知のとおりフォルクスワーゲン ゴルフGTIは、世界的な定番ハッチバックであるゴルフのスポーティ版。ゴルフ7こと先代のGTIは、最高出力220psの2L直4直噴ターボユニットと専用サスペンション、電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS+」などを採用して2013年に登場。2017年5月のマイナーチェンジで2Lターボユニットの最高出力は230psまで強化された。またトランスミッションは当初6速DSGのみの設定だったが、2015年6月には6MTも追加している。

そんな先代フォルクスワーゲン ゴルフGTIは、当然ながら「街乗りスポーツ」としては十分以上の俊敏性と加速力、そして痛快性があり、それでいて「足が硬すぎて、これはもう一種の拷問だ……」的に感じることもない。そしてパッケージングは基本的に普通のゴルフ7と同じであるため、後席も荷室もそれなりに広く使える――ということで、現行型ホンダ シビックRSのような「きわめて楽しく運転できる普通の車」を求めるユーザーには、最適解のひとつとなるはずなのだ。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ▲タータンチェック柄のシートは、初代ゴルフGTIの時代から続く伝統。写真のトランスミッションは6MTではなく6速DSGで、現在流通している中古車の約9割が6速DSGという状況だ
フォルクスワーゲン ゴルフ▲シビックRSの全長が4560mmであるのに対し、先代ゴルフGTIの全長は4275mmということで、積載性は若干劣る。しかしゴルフGTIも決して小さなハッチバックではないので、5名乗車時の荷室容量は380Lと、まずまずのスペースが確保されている

惜しむらくは6MT車の流通量が少なく、大半の中古車が6速DSGになってしまうことだが、運転の楽しさとは、「MTか否か」だけで決まる単純なものではない。もちろん「自分はMT車以外は認めねえ!」という硬派な方もいらっしゃろうが、湿式6速DSGの先代ゴルフGTIは車総体として見た場合、十分以上に「運転行為を楽しめる車」である。そしてついでに言うなら、湿式6速DSGは耐久性も高い。

総額200万円前後で狙える「走りも実用性もかなり高レベルな車」としては、これ以上の選択肢はそうそうあるものでもない。
 

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フォルクスワーゲン ゴルフ(7代目)×GTI系グレード×全国
 

候補その4|スズキ スイフト スポーツ(4代目・現行型)
→予算目安:総額170万~200万円

ここまでに挙げた候補は、いずれも「街乗りスポーツ」としてはきわめて素晴らしいモデルであると確信している。しかし、最新世代であるシビックRSと比べると「年式的にちょっと古すぎる」と感じる人も少なくないだろう。

もっと新しめの年式、具体的には3年落ち以内ぐらいの年式で、現行型ホンダ シビックRSと似たような「街乗りスポーツ性能と実用性および快適性」を、総額200万円以内の予算で味わえるモデルはないものか――と考えたときにパシッと該当するのがこちら、現行型スズキ スイフト スポーツだ。
 

スズキ スイフト スポーツ▲名作ホットハッチの誉れ高い現行型スズキ スイフト スポーツ

ご承知のとおり現在まだ新車として販売されているZC33S型スイフト スポーツは、全長3890mm×全幅1735mm×全高1500mmのコンパクトな高剛性ボディに、最高出力140psのK14C型1.4L直4ターボエンジンを組み合わせたホッチハッチ。トランスミッションは6MTまたは6速ATだ。

「最高出力140ps」という数値自体にさしたるインパクトはないが、2500~3500rpmで230N・mの最大トルクが発生するこのエンジンのパンチ力は十分、いや十分以上。軽量なれど超高剛性なボディと相まって、その気になればかなりホットな走りを堪能できる。

しかしその乗り心地は「ホットハッチ」という言葉から連想されるようなガチガチに硬めなものではなく、「確かに引き締まっているが、しなやかでもある」といったニュアンス。ファミリーカーとして使う場合でも、同乗する家族から苦情が出ることはまずないはずだ。
 

スズキ スイフト スポーツ▲赤の差し色も写真から感じるよりは大人びたニュアンスであり、「ちょっとホットな感じすぎて恥ずかしい……」みたいな印象は覚えないはず
スズキ スイフト スポーツ▲「家族4人とその荷物を満載させて走る」という使い方には不向きな車だが、「1~2名のための車」として考えるのであれば、このサイズ感でも特に大きな問題はない

とはいえシビックRSと比べればコンパクトなボディサイズであるため、現行型シビックと違って室内と荷室がさほど広くはないというのが、この選択肢のネックではある。しかし「車にどのぐらいの広さを求めるか?」というのは、人それぞれの問題でしかない。家族構成や使い方によっては「スイスポぐらいのサイズでもぜんぜんOK」という人もいるだろう。

そういった人には、総額180万円前後で、3年落ち以内かつ走行1万km台までの物件が買えてしまう現行型スズキ スイフト スポーツは、ホンダ シビックRSの不在を補って余りある選択肢となるはずだ。
 

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スズキ スイフト(4代目)×スポーツ系グレード×全国
 

候補その5|マツダ ロードスター(ND型・現行型)
→予算目安:総額180万~230万円

もしも想定ボディサイズをスズキ スイフト スポーツのあたりまで落とすことができるのであれば、いっそのことさらなるダウンサイジングを敢行して「2シーター車」を選んでしまう――という手もある。

そしてそれが可能な場合の選択肢は、当然ながら「現行型マツダ ロードスター」ということになるだろう。
 

マツダ ロードスター▲ご存じ、現行型マツダ ロードスター

この車に関しては、余計な説明はほぼ無用と思われる。1989年に始まったマツダ ロードスターシリーズの第4世代であり、「初代ロードスターのキャラに回帰した世代」でもある。パワーユニットは最高出力131psでしかない1.5L直4自然吸気だが、車両重量1tを切るグレードもある軽量な基本骨格との組み合わせによって生まれる“人馬一体”の気持ちよさは、シビックRSにもタイプRにも負けない、この車だけのものだ。

当然ながら2人乗りのオープンスポーツカーであるため「積載性能」や「居住性」などに関しては、ホンダ シビックRSとは比べ物にならない。それゆえ多めの乗車人数と多めの荷物を想定している人には、まったくもって不向きな選択肢である。

しかし世の中には「車には1人か2人でしか乗らないし、荷物も、さほど大きなモノは載せない」というユーザーもいる。そして筆者がまさにそのタイプなのだが、以前、初代マツダ ロードスターを我が家唯一の自家用車として使っていた頃は、買い物にも旅行にも特段の不便はなかった。いや「不便はなかった」と言うと嘘になってしまうかもしれないが、「なんとかなった」ということだけは間違いない。
 

マツダ ロードスター▲乗車定員は2名。インテリア各部の質感とデザインセンスが高いのも、この車の美点といえる
マツダ ロードスター▲もちろん広大ではないが、ほどほどの量の荷物は飲み込むトランクスペース。筆者は初代ロードスターのここにコストコで買った巨大トイレットペーパーなども積載し、“ファミリーカー”として普段づかいしていた

そういった意味で現行型マツダ ロードスターの中古車は、ある種の人だけには、「シビックRSの代わり」として十分に機能する。そして現行型ロードスターを手に入れることによって生じる「日々のドライビングプレジャー」は、現行型シビックRSを買った場合と比べて勝ることはあっても、劣ることはほぼないはず。

もしも現行型マツダ ロードスターを選ぶのであれば、走行3万km以下の2015~2017年式を、総額200万円前後で見つけることができるだろう。「運転好き」にとっては素敵すぎるほど素敵な選択肢である。
 

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マツダ ロードスター(ND型)×全国
文/伊達軍曹 写真/ホンダ、ルノー、フォルクスワーゲン、スズキ、マツダ、尾形和美、篠原晃一
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。

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