後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年2月15日

(令和5年2月15日(水) 18:56~19:11  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日の新しい資本主義実現会議におきましては、三位一体の労働市場改革の方向性について議論を行いました。主な内容は以下のとおりであります。
 賃上げは、新しい資本主義の最重要課題で、足元でのエネルギー高騰対策や低所得者世帯への支援などと併せて、物価上昇を超える賃上げを目指す。更には、その先に「構造的な賃上げ」を実現し、同じ職務であるにも関わらず、日本企業と海外企業の間に存在する賃金格差の解消を目指していくということでございます。
 働き方は大きく変わってきております。「キャリアは会社から与えられるもの」、から、「ひとりひとりが自らのキャリアを選択する」時代となってきております。職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリスキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要です。
 そうすることにより、社外からの経験者採用にも門戸が開かれ、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、労働者が自らの選択によって労働移動ができるようにしていくことが、日本企業と日本経済のさらなる成長のためにも急務であると考えています。
 国の取組についてでありますが、個人の自律的なキャリア形成を促すために、国の学び直し支援策について個人への直接支援中心に見直していく。また、海外と同様に、在職期間中のリスキリングの習慣の形成を図っていくことが重要だという議論です。
 その際の支援については、キャリアコンサルタントが求職に関する幅広い現場情報に基づき助言が行えるように、官民の持つ情報の共有化を進める。ハローワークについても、コンサルティング機能の強化を図っていくということが意見として出ています。
 さらに、労働移動を円滑化するため、自己都合で離職した場合の失業給付の在り方の見直しを行う。非正規労働者の賃金を上げるために、同一労働同一賃金制の徹底した施行を図る。そうしたようなことが今回の新しい資本主義実現会議で議論になりました。
 私のほうからは実現会議についての内容の説明については以上のとおりです。

2.質疑応答

(問)本日示された論点の中で、6月の労働移動の指針に向けて、いわゆる日本型ジョブ型雇用の導入方法を類型化して提示するという考え方が明示されています。これについてどういった議論があったのか。提示する場合はどういった提示方法、企業が参考にしやすい提示方法を考えているのかというのをお願いいたします。
(答)構造的な賃上げに向けては、個々の職務に応じて必要となるスキルを設定し、スキルギャップの克服に向けて、従業員が上司と十分に相談をしつつ、自ら職務やリスキリングの内容を選択できる制度に移行していくことが重要だと思います。
 そうすることにより、社外からの経験者採用にも門戸を広げ、また内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、労働者が自らの選択によって労働移動できるようにしていくことが日本企業と日本経済の更なる成長のための急務であると思っています。
 分かりやすく言えば、そういう対応を日本企業、また日本の労働市場がしていかなければ、人材の流出に対抗できない、そういう時代が来ていると思っています。
 よく議論になるAT&T、今日の資料にも出ていますけれども、81%はこうした職務給やリスキリングを導入して、それでも社内でそのまま仕事をしているということでもあります。そうしたことをしっかりと理解しながら、企業にとっても、労働者の立場からとっても重要な市場改革であるという認識でおります。
 その際、職務給については、企業の特性等に応じた導入の在り方が考えられます。
 職務給を一度にではなく、順次導入していく、あるいはその適用にあたっても、スキルだけではなく、個々人のパフォーマンスや行動の適格性を勘案するといった導入方法もあり得ると思います。
 6月の指針ではこういったように職務給の導入方法を類型化し、既に導入している企業のモデルのお示しするような形で進めていきたいと思っています。
 また、非常に重要なテーマであるので、新しい資本主義実現会議の場でしっかりと今日も御議論いただいたわけですが、並行して実務的な作業を進めることも意味があると考えておりまして、実現会議の場の下に小委員会を設置することも含めて検討をしていきたいですし、また、大いに現場の声を聞きながら議論を進めていきたいと考えています。
(問)2点お願いします。今日の実現会議で失業給付の在り方について議論があったということですが、見直しの方向性を含めて、労働移動の実現に向けてどういったセーフティーネットが必要なのかということについて、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)今、日本の労働政策であれば、自己都合で退職をした方と企業側で退職した方で給付の内容等が異なっています。本当に労働移動というものをしっかりと担保していこうということであれば、この辺の失業給付の在り方についても見直しもしていく必要があるだろうと思います。もちろん関係者にもいろんな御意見もあると思いますから、そうした皆さんの意見も聞きながらでありますが、労働移動の円滑化という点から、そういう労働法制についても制度的な見直し、検討の対象にしていく必要があると考えています。
(問)もう1点、昨日、政府が日銀の新総裁について人事案を提示されたわけですけれども、大臣として新総裁候補に対するどういった期待を持っていらっしゃるのかということと、日銀と政府のアコードについての見直し等も含めて、今後どのような検討をされるお考えか、お聞かせください。
(答)日銀総裁の人事、人選に当たっては、引き続き政府との連携のもとで、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、構造的な賃上げを伴う経済成長と、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営に取り組まれる方を念頭に、加えて、リーマンショック後には、主要国中央銀行トップとの緊密な連携や、内外市場関係者に対する質の高い発信力や対話力が問われていると思いまして、そうした点も十分に考慮して人選が進められたと思っています。
 植田和男総裁候補の人事につきましては、国際的にも非常な有名な経済学者であり、日銀にも籍を置かれて、理論、実務両面で金融分野に高い見識を持つ方であると思い、最適任と判断して総裁候補者として選任されたものと思っています。
 副総裁についても、日銀や金融庁において要職を歴任して、金融政策あるいは金融行政について非常に豊富な経験を持つ上に、国際感覚のある人たちであって、内田真一氏、氷見野良三氏が選任されたものと承知をしています。ワンチームとして非常に良いチームができているのではないかと思っています。
 それから金融政策への期待ということで申し上げると、現在、我が国経済はウィズコロナの下で景気が緩やかに持ち直している状況にあります。こうした動きを腰折れさせることなく確かなものにしていくために、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現させていく、そのことが重要であると思っています。
 このために政府・日銀が一体になって取り組んでいくということが重要でありまして、日銀には新総裁のもとで、引き続き政府と連携のもとで、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営が行われることを期待しています。
 また、政府としても物価上昇の継続や世界経済の減速などの下振れリスクに対応しつつ、民需主導の持続的な経済成長軌道に乗せていくという持続可能な経済のための対策を、総合経済対策・補正予算等で取っているわけですが、1,300全事業の進捗管理を徹底していくとともに、しっかりと早期の実行を図っていくことが必要ですし、それからその上で今後の経済・物価動向を注視して、必要な政策対応に躊躇なく取り組んでいくということでやっていきたいと思っています。
 同時に、新しい資本主義のもとで、イノベーション強化や構造的賃上げに向けた労働市場改革など、供給サイドの取組を着実に実行してまいりたいと思っています。私としてはマクロ経済政策の担当大臣として、構造的な賃上げを行う経済成長と物価安定の目標の持続的、安定的な実現を図るべく、日銀と密接に連携しながら、経済物価情勢に応じて機動的な政策運営にしっかりと取り組んでいきたいと思います。
 それから、政府、日銀の共同声明についてでありますが、経済財政諮問会議が金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、物価安定目標に照らした物価の現状と今後の見通し等を定期的に検証することとしておりまして、専門的又は中立的な知見を有する学識経験者なども参画する形で、絶えず政策の検証を行いながら、幅広く経済財政運営について議論を行ってきているところでありまして、今後ともこうした検証をきちんと行っていくことが必要だと思っています。
(問)今日の実現会議は別の話になってしまいますけれども、昨日、トヨタ自動車の名誉会長で、経団連の会長なども歴任した豊田章一郎氏が亡くなりました。愛知万博の開催に尽力されるなど、各方面で活動されていた方ですけれども、受け止めをお願いいたします。
(答)トヨタ自動車を世界的な自動車メーカーに大きく羽ばたかせた方でもありますし、経団連の会長としても御活躍もされました。私も何度も御一緒させていただいておりますけれども、非常に自らに厳しく、またおごることを大変に慎しまれた、そういう方で、非常に残念に思います。
 一つの時代の終わりと新しい時代の始まりという、そんな感じを持ちました。御冥福をお祈り申し上げるとともに、我々がしっかりと今後の日本の経済、日本の社会をしっかりと進めていかなければならない、そんなふうに思いました。

(以上)