山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年11月26日

(令和3年11月26日(金) 14:45~15:05  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日、新しい資本主義実現会議を開かせていただきました。ご報告いたします。
 本日の会議では冒頭、労使の経済同友会、日本商工会議所、日本労働組合連合会、日本経済団体連合会の4団体の委員から、賃上げや人的資本について意見表明をいただき、その後、民間議員の方からもご意見を頂き、以下のような結論となりました。
 成長の果実を国民一人一人が実感できる新しい資本主義を実現する鍵は、人への投資であること。人への投資が生産性向上や消費の投下をもたらすことで経済の付加価値を示す国民総所得を引き上げ、それが更なる人への投資につながる好循環を官と民が協力して実現していく必要があること。賃上げはコスト増ではなく、人への投資の一環であること。それによってイノベーションが起き、成長を実現するという考え方であること。他方で、コロナの影響を受け、製造業などはコロナ前の水準、またはそれ以上に回復する一方、悪影響が続いている業種もあり、業績回復に差が生じていること。このため、一律の賃上げは困難であり、来春の労使交渉では、自社の支払能力を踏まえ最大限の賃上げを期待されること、などの指摘がございました。
 また、岸田総理からは、中小企業が原材料費、エネルギーコスト、労務費の上昇分を適切に転嫁できるよう、自分としても働きかけを行っていくとの発言がございました。
 その上で岸田総理から、政府としては、民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、保育士等・幼稚園教諭、介護、障害福祉職員を対象に、収入を継続的に3%程度引き上げるための措置を来年2月から前倒しして実施する。また、地域でコロナ医療など一定の役割を担う看護職員を対象に段階的に収入を3%程度引き上げていくこととし、今年末の予算編成過程において必要な措置を講じる。と発言された上で、民間側においても、来年の春闘において、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の軌道にふさわしい3%を超える賃上げを期待すると言及し、民間側の労使で議論していくこととなりました。
 加えて岸田総理から、政府としては、民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組むこととして、第一に、従業員お一人お一人の給与を引き上げる企業への支援を強化するため、企業の税額控除率を抜本的に強化することを検討し、今年末の税制改正大綱で決定する。第二に、税制の効果が出にくい赤字の中小企業の賃上げを支援するため、ものづくり補助金や持続化補助金において、赤字でも賃上げした中小企業への補助率を引き上げる特別枠を設ける。第三に、人的資本への投資を抜本的に強化するため、3年間で4,000億円規模の施策パッケージを新たに創設し、非正規雇用の方を含め、職業訓練、再就職、ステップアップを強力に支援することとし、一般の方からアイデアを募集し、良いものに仕上げていく。第四に、中小企業の賃上げの環境を整備するため、下請けGメンの倍増を図り、取引適正化のための監督を強化する。第五に、政府調達において、賃上げを行う企業に対して加点を行うなど、調達方法の見直しを行うと述べた上で、経済界におかれては、来年の春闘においては2019年2.18%、2020年2%、2021年1.86%と低下する賃上げの水準を思い切って一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待するとの発言がありました。
 これを踏まえて十倉委員から、岸田総理のご発言を踏まえ、会員企業等へしっかりと呼びかけてまいりたいとのご発言がありました。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今ご説明のあった新しい資本主義ではないテーマで恐縮ですが、新型コロナウイルスに関連してお伺いします。南アフリカで変異株が発見されている状況ですが、これに対する日本政府の対応について、どのように臨んでいくかお聞かせください。
(答)新型コロナウイルスの新たな変異株、「B1.1.529」という名前だそうですが、これが南アフリカを中心に感染が広がっているという報道があることは承知しております。
 現時点では、この変異株は日本国内では確認されていないということでございますが、引き続き、WHOあるいは諸外国の動向等の情報を収集しているところです。
 また、新たに変異株が確認された場合には、その感染性や重篤度、ワクチン効果に与える影響等を併せて評価していくことが重要と考えておりまして、政府としては引き続き緊張感を持って対応していくということです。
(問)先ほどの新しい資本主義実現会議の最後の挨拶で、総理が経済界に対して、春闘でコロナ禍前の業績を回復した企業については3%以上の賃上げを期待したいという発言をされていました。これは、去年までの春闘に関しては賃上げの要請というような形だったと思いますが、その要請とは何が違うのかというところを、改めて大臣の口から教えていただければと思います。
(答)私の理解では、総理のお考えとしては、今日のこの会議の中で、労使の側からのまずご発言がありました。この発言を聞いていても、業績が回復している社に関しては賃上げを進めていこうというのは、これは労使ともにそういうお考えをお持ちだということが確認できました。
 ですから、その環境整備を政府の方でしっかりしながら労使できちんと議論をしていただく。また、企業側の方も、経済団体皆さま方、今日十倉委員が最後にご発言されたように、持って帰っていただいて、この考え方に基づいて議論していただくということになりました。
 そういう意味で言うと、総理が期待しているという言葉を使われているのは、強制力を持つということではありませんが、これまでのやり方のように何かを要請して、企業の業績が良かろうが悪かろうが政府の方針としてこれをお願いするといったようなものではなく、しっかりと各ステークホルダーがそれぞれ置かれている役割というものを果たす中で、それで議論をしながら賃上げの方向にみんなで進んでいくということを期待しているということだと思います。ですから、そういう意味で、要請という言葉とはちょっと違うかと思います。
(問)政府側としてはそういう意図を持っていらっしゃるというのは分かりますが、発言の中には、19年、20年、21年と賃上げ率が下がっていますという発言もされていて、そこを反転させるために賃上げすることを期待するというかなり強い意志も示されているので、受け取る側からしてみれば、要請とほとんど変わらないのではないかと私は聞いていて思ったのですが、そこはどう思われますか。
(答)それは、聞く方の立場によってどういう受け取り方かというのは、恐らく色々なものがあると思いますので、そのような受け取られ方をされたのだとすれば、より丁寧にご説明をしていく必要があると思います。
 冒頭申し上げたように、今日の会議の中で、労使ともに意見表明をしていただいて、それが賃上げを行っていくという方向性で一致していたということは非常に重要だと思います。ですから、自らの意志に反して、何かを要請されたからやるということではなくて、自発的にこれから政府がやろうとしている新しい資本主義、要するに成長と分配が好循環するようなことを、賃上げを通してこれから実現していこうというコンセプトに労使ともに賛同していただいて、その方向で何ができるかということをそれぞれが工夫し、知恵を絞ってやっていこうということを考えていただけるものだと。そういう思いで期待しているという言葉をお使いになられたと思います。
 ですから、どうしても要請というと、多少強制的な雰囲気を持ちますが、我々としては、これも総理がおっしゃっているように、業績が回復しているところは3%を超える賃上げを期待するとおっしゃっていますが、当然、まだ難しい状況にある企業もあるということも、あるいはそういう分野、業態があるということも分かっているわけですから、一律に何かをするという意味ではなくて、繰り返しになりますが、各分野、各ステークホルダーが知恵を絞って、そのコンセプトに基づいてやれることをやっていこうということを期待しているということだと思います。
(問)労使ともに、その場では賃上げする必要があるというのは一致しているので、期待を示しても強制力のある要請ではないという理解でよろしいですか。
(答)そういう理解です。
(問)今の賃上げの関係で、これまで要請という強い言葉を使ってお願いしてきた中で、3%というのはなかなか届かなかった部分だと思いますが、今回、進めるに当たって、どう実効性を担保していくかというのが重要だと思いますが、その辺りは大臣としてどのような考えで取り組んでいくのか教えてください。
(答)基本的には、公的価格に関しては公的価格の検討委員会でやれる話ですが、民間の賃金に関して、政府の方で強制的にこうしろ、ああしろというのは、当然限界があるというのはこれまでの経緯を見てもそういうことです。
 ですから、我々としては今回、経済対策を相当大規模で打たせていただくことを決定しました。そして、さらには景気が良くなっていくように、成長戦略というものも、これからどんどん経済対策とともに実施していくと。結局、そのことによって経済が上向いていく環境を整備して、実際に経済が上向いていくという方向になれば、当然それがベースにあって、民間企業の皆さんも自分が可能な範囲で賃上げをしていくということになると思います。
 ですから、非常に間接的な話になるかもしれませんが、政府としてやるべきことをやっていくというのは、経済成長が確実に起こるような環境整備とその政策を打っていくということだと思います。
 ダイレクトに労使の間での賃上げ交渉というのは、春闘というのが当然あるわけですから、そこにおいて最終的には決まっていくものと思いますが、我々としては、それを最大限サポートしていくということを今日の会議の中でも総理からご発言をさせていただいたとご理解いただければと思います。
(問)賃上げのところで、先ほど総理の発言の中で、赤字企業の賃上げ支援についても発言があったと思います。その前の段階で、コロナ禍で業績が回復したところは3%超を期待されていると思いますが、そうではない厳しいところについても、3%にはいかないまでも、最低賃上げはしてくださいという理解でよろしいでしょうか。
(答)モメンタムとして、先ほど言ったように、労使ともに賃上げは必要だというコンセンサスは得られていると思います。でも、無理にということではないということです。
 2番目に総理がおっしゃった、税制の効果が出にくい赤字の中小企業の賃上げを支援するために、ものづくり補助金や持続化補助金において、赤字でも賃上げした中小企業への補助率を引き上げる特別枠を設けると発言をされているわけです。ですから、赤字の中小企業であっても、賃上げをしていただけるところには賃上げはしていただきたいという思いは、このご発言の中からも読み取れると思います。
 しかし、それは無理に賃上げをしてくださいということではなくて、そういう雰囲気という言い方は変ですが、社会の方向性として、賃上げというものが新しい資本主義を回していく上で非常に重要だから、それをコンセンサスとして皆さんに持っていただく中で、創意工夫の中でやれる部分をやれるように、政府としては最大限サポートしますということを総理はおっしゃっているということだと思います。
(問)総理の発言の中で、3%以上の賃上げを期待するという発言でしたが、3%という数字について、改めてどう意味というか、なぜ3%なのかという部分について、大臣の言葉で説明いただければと思います。
(答)もちろん賃上げができるところは3%でも4%でも5%でも、3%を超える賃上げを期待するという話をされているわけですから、それはその余力のある企業の皆さんには賃上げをしていただけるとありがたいという思いは当然あると思います。
 でも、それだけではなくて、今回、それに先んじて政府の側が公的価格の引き上げというものを3%という形で、もうやってきたということもあって、あとそれにプラスして、実際に日本の経済成長率がどれぐらいかということも見てくると、やはり3%は上げてもらいたいという話なのだろうと思います。
 何かある程度の基準のようなものがなければ先に進まないという意味で3%という数字が出てきたというよりは、全体としてのモメンタムを示しているものだと私は理解しています。だからこそ強制ではないということだと思います。だけど、上げられるところは上げていこう。政府は3%というものを一つの指標に公的価格の方は上げるということを発表していますから、ある程度それが基準に合っているということではないでしょうか。
(問)賃上げ税制の話も出ていますが、これまでも法人税減税など、いろいろ取り組まれてきた過去の政策というのも検証した上で、今後どうするのかという考え方も必要になると思うのですが、これまでの政策効果について大臣のお考えをお聞かせいただければ。
(答)これは、一言で政策効果はこうですということが言えるほど単純な話ではないと私は思っております。
 今の大臣を仰せつかる前に、私は長く自民党の中でも、税調の幹部として汗をかいてきましたので、色んな意味で税というものが持っている意味も複雑です。単純にご説明できるような話ではないわけです。
 ただし、今までのもちろん分析評価というものは党のほうでもやりますし、政府としてもやります。それもありますが、今申し上げたように、これから先何をやるかという時に、やはり賃上げというのは本当に大事だという思いがあって、その賃上げをより効果的にやっていくための手法として何ができるかという工夫の中から、この賃上げ税制の深掘りも含めて工夫というものをしていくということを、政府として総理を中心に決めてやろうと決断をしているということだと思います。
 ありがとうございました。

(以上)