【事務局長のつぶやき】CiNet(脳情報通信融合研究センター)における研究
先日開催の応用脳科学アカデミー特別コース「CiNet」では、大阪大・中野先生、前田先生、高野先生の3人にご登壇頂きました。
CiNetの正式名称は脳情報通信融合研究センター(Center for Information and Neural Networks)(https://cinet.jp/japanese/)といい、総務省傘下の国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)と大阪大学が共同で創設した研究所です。施設は大阪大学吹田キャンパスの中にあり、CiNetの研究者の中には大阪大学に所属し、CiNetに兼務されている方々がいらっしゃいます。今回、お話を頂きました3人の先生方は皆、大阪大学に所属され、CiNet兼務です。
第一部は、中野珠実先生から「自己を表象する脳の仕組み」というタイトルでご講義頂きました。
人間は何人の顔を覚えていると思いますか?という最初の一言から講義に引き込まれてしまいました。正解は、約5,000人だそうです。ちょっと自信を失いました。歳のせいか、そんなに覚えていないなとショックでした(苦笑)。顔のレタッチをやりすぎると逆効果!だそうですが、自分の顔、他人の顔、他人の眼に映る自分の顔などなど、顔表情に関する科学的研究によって顔表情の意味、価値が解明されてきています。ビジネスにも役立ちそうな顔の話が色々ありました。
中野珠実先生の講義概要はこちら⇒https://www.can-neuro.org/2023/s1_2_1_lecturer/
第二部にご登壇の前田太郎先生からは「ヒトと世界をつなぐもの:テレイグジスタンスと感覚伝送」についてお話頂きました。
テレイグジスタンスはVR技術の一分野とも言われていますが、遠隔操作や仮想世界において、あたかも自分がその空間に存在しているかのようにモノを動かすとか自分が動いて環境を変えるとか、色々出来る技術です。講義では単に運動だけでなく、味覚や触覚等の感覚情報をセンサーを使って転送することであたかもその空間で触ったり、味わったりしているような錯覚を生じさせることができるなど、まさにメタバース・VRの中核となる最新技術としてのテレイグジスタンスについてご紹介頂きました。そのほか、テレイグジスタンスの応用例で、3本目の手を自由に操ることができるようになるなど身体拡張技術としてさまざまな可能性をご紹介頂きました。時間があっという間に過ぎてしまうほど、盛り沢山な内容で面白かったです。
前田太郎先生の講義概要はこちら⇒https://www.can-neuro.org/2023/s1_2_2_lecturer/
第三部の高木優先生のお話は「深層生成モデルとヒト脳活動の融合研究」で、システムニューロサイエンスとAIの比較という多変興味深い研究で、Stable Diffusionと脳、GoogleのMusicLMと脳、そして意思決定AIと脳という3本立てで、AIと脳の違い、共通点等についてお話を頂きました。意思決定AIのお話では、将棋AIを例に、人間の有段者(4段)には有段者レベルの将棋AIが、初段には初段レベルのAIが意思決定をそれぞれ精度良く予測できるということで、人間の脳レベルに合わせたAIが存在するということでした。これはメチャクチャ面白い研究のお話でした。脳とAIを比較することによって、脳の理解が進み、将来、脳型AI、人型知能ロボット等、色々研究成果が活用できそうで、この先が楽しみです。
高木優先生の講義概要はこちら⇒https://www.can-neuro.org/2023/s1_2_3_lecturer/
ラップアップミーティングでは、3人の先生がかなり専門的な脳科学のお話をされていたので、興味深かった半面、議論についていけず、冷や汗でした(苦笑)。しかし、3人の先生たちのお話が終わり閉会した後、何か知のシャワーを浴びたような爽快感がありました(笑)。
CAN会員の方で受講できなかった方は、ラップアップミーティングを除き、後日オンデマンドで視聴できますので、ぜひ視聴ください!