達人が語る、カヌー・カヤックの魅力│まめ知識│キャンプ場ドットコム:LOGOS

No.25

ACTIVITY

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達人が語る、カヌー・カヤックの魅力

カヌーの達人、西沢あつしさんに聞きました。

海でも川でも、湖でも。水辺のアクティビティとして老若男女に人気のカヌー&カヤック。国内唯一のカヌー専門誌『カヌーワールド』のディレクターで、カヌー・カヤックの達人として知られる西沢あつしさんに、その魅力を聞きました。(写真提供:西沢あつし)

「急流下りだけでなく、旅ができるのも魅力です」

子供の頃から旅が好きで、中学生の時には“青春18きっぷ”を片手に国内を旅していました。カヌーを始めたのは、20代半ばの頃。作家でカヌーイストの野田知佑さんの著書を読んで、こんな旅があるのかと。すぐに、組立て式のカヤック・ファルトボートを購入し、キャンプ道具を積んで川旅を始めました。

しかし、その翌年には、早々に転機が訪れます。きっかけは、アウトドア雑誌で読んだ、シーカヤックで父島の境浦に座礁した船を探検に行くという特集記事。そこに掲載された1枚の写真に目が釘付けになったんです。そうして、ファルトボートを担いで父島へ。自分でパドルを漕いで前へ進み、カヤックでしか近づけない座礁船を見に行く旅。父島の海は驚くほど美しく、イルカやクジラといった巨大生物たちが暮らしている……まるで冒険しているような高揚感でしたね。この旅を機に、シーカヤックの世界にどんどん魅了され、現在も奄美大島で開催されているシーカヤックマラソンの第1回大会に出場しました。そこで出会った仲間たちとの交流も、シーカヤックにハマり込んだ理由のひとつだと思います。

父島の座礁船を見ることができたのは、カヤックだからこそ。カヌー・カヤックなら、ふだんは見られない風景を自分の力だけで見に行くことができます。急流を下るリバーカヤックのイメージが強いかもしれませんが、自然の中をツーリングするのも楽しいですし、キャンプ道具を積み込めば、旅だってできます。カヌー・カヤックの旅は、非日常の連続です。私が経験したのはせいぜい1週間程度ですが、旅をして気づいたのは、日本はコンパクトな中に様々な風景が凝縮されているということ。たとえばカナダのインサイド・パッセージは、断崖からの迫力ある滝に最初こそ感動しますが、1週間漕いでもほとんど景色が変わりません。でも、日本の西伊豆なら、海沿いを3日間漕ぐだけでまったく景色が違います。川も同じで、ウィルダネスな上流部から徐々に街が開け、都心部へ移ろう景色はなかなかおもしろいもの。日本の多様な風景を楽しめるのが、カヌー・カヤックなんです。

さらに素晴らしいのは、それを五感で体験できるところ。ボートに乗ると、エンジン音がしたりガソリンの匂いがしたり、どうしても人工的なものを排除できません。でも、カヌー・カヤックは、海や川の音、パドルが水をかく音、鳥の声、水の匂い……と、自然のものしかないんです。目的地があったとしても、その行程まで楽しいのはカヌー・カヤックならでは。たしかに、フィールドの状況によっては危険なこともありますが、そうしたリスクをいかに減らし、回避できるように考えて工夫することも、おもしろさのひとつです。リスク回避のスキルを身に付けることによって、より深く、広く、フィールドを楽しめると思います。

パドルを漕ぐ度、船の先端が水を切り裂いて進んでいく様子を見ると、どこまでも行けるように気持ちになります。そういう冒険者のような感覚をぜひ味わっていただきたいですね。

PROFILE
西沢あつし

にしざわあつし。日本唯一のカヌー・カヤック専門誌『カヌーワールド』(舵社)のプランニング、ディレクションから、写真、原稿に至るまで、ほぼすべてに関わっている。カヌー・カヤックの中でも、とくにシーカヤッキングでは多くのメディアに写真、記事を寄稿している。2004年には、カナダ観光局カナダメディア賞特別賞受賞。おもな著書に『シーカヤックで海を遊ぼう―ビギナーのためのトータルガイド―』(舵社)、『日本全国シーカヤッキング55Map』、『親子で楽しむSL旅行+撮影ガイド』(ともに山と渓谷社)。

Facebook:
https://www.facebook.com/atsushi.nishizawa.5

『カヌーワールド』編集部:
http://www.kazi.co.jp/canoe/

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