ROOTS of 810s
ムーンスターの靴づくり VOL.6
2020SSのデビューコレクションの中で、ファーストモデルであるKITCHE(キッチェ)は、厨房で料理人が履くことを想定した靴、KITCHENSTAR 01をデイリーユースに整えたモデル。今回はルーツとなるキッチンシューズとKITCHEの特徴について、デザイナーが語ります。
ー2024.4.26 UP
厨房靴の機能とミニマルなデザインを
兼ね備えた、コートスタイルのスニーカー
厨房靴の機能とミニマルな
デザインを兼ね備えた、
コートスタイルのスニーカー
ーKITCHEの大きな特徴を教えてください
機能性に優れたプロユースのシューズの魅力を再構築し、日常履きの視点で新たに提案するプロダクトライン「810s」。1シーズン目のラインアップは、STUDEN、HOSP、CAF、KITCHEの4型。その中のファーストモデルであるKITCHEは、キッチンシューズをルーツとした「KITCHENSTAR 01」をベースに生まれました。厨房や食品工場などで使われることを想定しているため、水や油で滑りやすい床面に適したソールや手入れが楽なアッパー素材に着目しながら開発を行っています。
着脱しやすいよう、紐ではなくゴアを使用。アッパーの素材は汚れを拭き取りやすい。
ソール部分には濡れた床面でも滑りにくい「マルチストッパーソール」を採用しています。接地面をしっかり確保するためにフラットな作りにしている点と、流れるような曲線のデザインがポイントです。これは水や油を分散させてソール部分に残さないための機能的な設計で、細部まで精巧な作りになっています。
KITCHE(左)とルーツモデルのKITCHENSTAR 01(右)
履き心地に関わる踵周りにはくびれを持たせると同時に、シルエットも意識した。
ールーツとなった「KITCHENSTAR 01」とは?
KITCHEのルーツモデルである「KITCHENSTAR 01」は、ロングセラーのキッチンシューズ。ソール部分には床面に吸い付くマルチストッパーソール、アッパー素材には丈夫で耐油性に優れた合成皮革を採用しています。
これらの機能に加え、KITCHEの場合はサイドに通気穴を設けるなど、デイリーユースの視点での快適性を追求しています。ルーツとなるシューズの優れた機能を活かしながら、シンプルで飽きのこないコートスタイルになるようにリデザインしました。
ー日常生活に馴染む靴に仕上げるためにこだわった点は?
極力装飾はせずに、素材の質感や光沢、ステッチワークの形状や幅を意識するとともに、裁断面を見せないといった細やかな部分にも配慮しました。プロユースのシューズを上質かつ洗練された日常履きとしてアップデートするために、甲周りをすっきりさせるなど、ラスト(足型)のシルエットにもこだわっています。
試作品から製品へと移る中で、細部にこだわりミニマルな佇まいに。
履き心地の部分では、長時間でも快適に着用いただけるように指先の形状はタイトにならないようにし、足に触れる部分は柔らかく、ベースとなる部分は強度のある素材の2層構造の中敷を採用しました。
また、KITCHEに限ったことではないですが、810sのカラーバリエーションはベーシックなニュアンスカラーが中心なので、スタイリングの主役になり過ぎずに程よく馴染む靴、使い勝手の良い佇まいを目指しています。
コートスタイルのスニーカーはさまざまなバリエーションがありますが、KITCHEはオーソドックスな外羽根のタイプなので、シーズンを選ばず履いていただけます。以前、通勤電車の中で黒のKITCHEを履いたスーツ姿の男性を見かけたことがあるのですが、とてもお似合いでした。あらゆるシーンやライフスタイルにフィットするモデルとして、幅広くご活用いただけたらうれしいです。