深川災害時支援ボランティア
(東京都江東区)
事例の概要
■経緯
平成17年は、聴覚障害者への災害時の意思疎通手段として手話カードを作成した。平成18年度は、更に発展させ、区総合防災訓練、震災訓練、地城の防災訓練等で活用し、多くの地域住民との意思疎通手段として知ってもらっている。
また、聴覚障害者、手話通訳者等が災害時支援ボランティアとして登録し、「助ける側」として、積極的に訓練に参加している。
■内容
【継続性】
平成8年4月から現在に至るまで、手話通訳者、聴覚障害者はボランティアとして登録するとともに、普通救命講習、リーダー講習に参加し、リーダー的役割を担っている。また、各方面に広げるべく、あらゆる集まりの機会で障害者、健常者と手話カード等による災害時の繋がりについて広めている。
【発展性】
ボランティアの一員として、「助けられる側」から「助ける側」に回ることにより、防災意識の向上が図られ、さらに積極的に防災訓練、農災訓練、区民まつり等で防災広報を行うことにより、地域に対する障害者との交流を深めている。また、ボランティアの減少に伴い、自らが新規登録者増員のため近隣者に働きかけ、210名の増員を図った。また、平成17年度より手話カードを作成して、様々な訓練で活用している。
【連携】
消防署と毎月連絡を取り合い、訓練への参加、訓練内容を打ち合わせるとともに、情報交換を行っている。また訓練では、ボランティア本部を作り、発災対応型訓練を行い、任務分担による実戦的防災訓練を行っている。
【自主性】
自分たちで手話カードを作成するとともに、聴覚障害者を通じて検討を重ね、より見易さを改善して、訓練の中で取り入れている。また、手話カードをより活用した訓練〔障害者対象〕、地域行事への積極的参加等の意見を取り入れ、改善を図っている。
【地域特性の反映】
(1)各地域の防災訓練に参加して、訓練内容を手話にって通訳した。
(2)区民まつり、子供まつり等に参加して、応急救護指導を行った。
発災対応型防災訓練
区防災訓練での活動
区総合防災訓練での手話通訳
震災訓練での手話
手話カード1
手話カード2
区民まつりでの活動
手話カードによる救出
苦労した点
- 1.手話カード作成により、聴覚障害者の方々が不安から安心に変わり、また自信のなかった聴覚障害者が自信を持って行動している。
- 2.訓練の際、多くの人とのコミュニケーションが図れるようになった。
- 3.職員とボランティアが中心となって、平成17年10月から現在に至るまで210名の増員を図り、手話カード等、訓練内容の充実が図られた。
委員のコメント【防災まちづくり大賞選定委員 梅原 直(総務省消防庁予防課長)】
東京都江東区の深川地区は、東京湾と隅田川に面して位置し、古くから縦横に走る河川を利用しての木材・倉庫業、米・油問屋の町として栄え、現在も下町風情が残る一帯である。また、埋め立て開発も進み、都営団地も多く存在し、災害時要援護者の方も多く入居している。
平成7年阪神淡路大震災を教訓に、平成8年に防災ボランティア団体として「深川災害時支援ボランティア」が結成されたが、結成当初、登録者は健常者のみであり、障害者の方は救出される側のみであったが、区が実施した防災訓練時、見学参加で聴覚障害者及び手話通訳者が来場し、三角巾や応急手当の訓練を実施したことで、障害者であってもボランティアの一員として活動できるのではという気運が高まった。また、健常者であっても痛み等で話せない状況になる場合の活用を考慮し、聴覚障害者と健常者の共同作業により試行錯誤しながら双方が活用できる「手話カード」が作成された。
この「手話カード」は防災訓練、区民まつり、子供まつり等で使用することにより聴覚障害者や健常者が日常的にコミュニケーションが図れ、災害時のボランティア活動では円滑に障害者側の情報が充実した内容で収集できることが見込まれる。
なお、この「手話カード」は消防署の全面的協力のもと、救急セットと共に消防署で保管され、有事の際には確実に活用できる体制をとっており、さらに防災の輪が広がることが期待される。
団体概要
- ・深川災害時支援ボランティア:登録者410名
実施期間
平成8年4月~