【消防科学総合センター理事長賞】ミニ防災展の開催
中村医院(愛知県名古屋市)
事例の概要
■経緯
昭和38年老人福祉法が施行された。それに対応し名古屋医師会では高齢者福祉事業を新しく設け、当医院の中村医師が担当することとなった。その際、中村医師は医師会の情報とは別にライフワークとして、高齢者特有の病気以外で健康を邪魔するリスクを除く運動を医師の立場から取り組むことにした。現在まで、この他に健康診断・交通事故防止等も行ってきた。
■内容
昭和40年頃より、毎年9月の「防災週間」に当医院待合室にて「ミニ防災展」を開催し、その都度テーマを決め、収蔵の火災・地震・津波・風水害・焼死等関係の防災史料を来院者・一般に公開し、防災意識の高揚を呼びかけている。また、自作・編集の「防災スライド」を高齢者や地域集会で上映、作詞「自主防災のすすめ」をPR等をしている。この他、行政主催の防災展への資料の出品、新聞社・テレビ局の取材、防災番組への出演等を通じて防災意識の高揚・地域自主防災の推進啓発を行っている。
■特色
活動内容の基盤が私設「祐猿文庫」の収蔵物件によるものが多いところに特色がある。もともと中村医師の主催する文庫は「郷土史と小学校教科書」の収集と研究にある。したがって、天変地異(災害など)をキーワードに収蔵の明治以前からの科学書・教科書や郷土史料を探索すれば未知の新しい史料の発掘もあり、またアイデアも生まれてくる。濃尾大震災のスライド用のガラス原版など、防災関係の史料も身近な古書店などからの好意により入手することもよくある。今も全国の古書店から多くの目録や即売会の案内が多いので、東西に足を延ばしており、そこで新しい史料が手に入る。それら史料が少しでも災害を少なくする啓蒙手引きになることを願っている。
濃尾大震災100年記念展風景
非常持ち出し袋内容の一例
中村医院備え付けの非常持ち出し袋など
阪神・淡路大震災翌日の中日新聞
消防署員による救急蘇生など研修風景
毎年9月には自主防災の呼びかけを
防災意識高揚に編集自作したスライド
各種災害史料・教科書・写真帖など
テレビ局の報道で防災意識の高揚に一役
成果・展望
地道にこつこつ新鮮味のある活動を、関心を持つよう興味深く繰り返すことが大切である。そういった意味で、従業員の協力を得ながら展示を続け、時にはテーマを設けて展示の活性化に努めてきた。幸い次の展示に期待を寄せる方々など支援の声も増え、この輪を広げていくことを考えている。また、今後も中村医師の健康の許す限り防災の推進に力を注いでいくとともに、収蔵品も役に立つものがあれば寄贈していく予定である。
苦労・成功のポイント
防災という観念をいつも頭のどこかに入れ、常に「健康と安全」を忘れないことは豊かな生活の基本である。しかし、私たちのまわりには防ぐことのできない天変地異も幾つかあり、自ずと限界がある。その中で成功したポイントは、防災意識の高揚に始まり、なぜそうしなければならないかを一人一人がしっかり自覚して、その確固たる自覚により自発的な行動が自然に生まれてくるような学習と教育の徹底にある。
事業年度
昭和40年度~平成10年度
事業費
史料費等代表者(中村医師)負担
団体概要
当医院の中村医師を中心に看護婦等5名
受賞歴
- 昭和61年度
- 国土庁長官賞
- 防災功績者