【消防庁長官賞】災害時要援護者支援対策~平常時の「きずな」が緊急時の「きずな線」に!~ - 消防防災博物館

第16回防災まちづくり大賞(平成23年度)

【消防庁長官賞】災害時要援護者支援対策~平常時の「きずな」が緊急時の「きずな線」に!~

消防庁長官賞(一般部門)
災害時要援護者支援対策~平常時の「きずな」が緊急時の「きずな線」に!~

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本荘まちづくり協議会
(岐阜県岐阜市)

事例の概要

■経緯

 平成17年春、ひとり暮らしの高齢者が死亡する交通事故が発生。身元確認に手間取った事を教訓に、社会福祉協議会本荘支部と婦人会で地域の絆を考える活動がスタート。同年12月、高齢者が安心して外出できるように連絡先やかかりつけ医等を記入する名刺大の「救急カード」を作成し、ふれあい・いきいきサロン(高齢者の地域サロン)において無料配付開始した。平成21年度には、本荘自治会連合会、社会福祉協議会本荘支部や民生児童委員会等の地域活動団体が協働して、地域防災・減災の活動を進める「まちづくり協議会」を結成。その事業の一つとして、従来から公民館で行っていた地域サロンを、喫茶店等の協力を得て地域単位に細分化して繋がり活動を開催している。こうした活動によって出来た「絆」や「つながり」を「個人」対「個人」のやり取りで終わらせるのではなく、地域住民、高齢者の見守りという地域全体の課題解決につなげていきたいと考え、「県域統合型GIS(地理情報システム)」を活用した地域防災活動の取り組みを進めている。

■内容

  • 1. 地域防災ネットワーク構築委員会の設置
     まちづくり協議会内に地域防災を考える場となる委員会を設置。構成メンバーは、災害時に連携を必要とする自主防災隊、民生委員、避難所となる学校(担当教諭)、地域防災指導員等。
  • 2. 県域統合型GIS(地理情報システム)を活用した福祉マップづくり
     県域統合型GISの基本操作講習を受講した構築委員会の委員を中心に、地域内の地理状況、高齢者や障害者等の緊急連絡先などの情報精査を行い、これをPCの地図上に表示。災害時のスムーズな安否確認に活用するシステムの構築と福祉マップを作成。
     なお、このシステムを活用して、岐阜県と岐阜市の合同によるモデル防災訓練も10月に実施する。
  • 3. 救急医療情報キット「命のバトン」の普及活動支援
     地域防災活動を進める中で、ひとり暮らし高齢者の緊急時支援策の必要性を痛感し、病歴やかかりつけ医、服用薬等を記した救急医療情報キット「命のバトン」を社会福祉協議会本荘支部が配付した。協議会は配付先の情報を共有しながら、災害時要援護者と言われる人々の「自助力」を高めている。

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災害時要援護者支援訓練対策

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災害時要援護者支援訓練での情報管理者によるGIS確認

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避難ブロックごとに避難路を確認して問題点を検討

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避難訓練(マップ表示)

苦労した点

  • 1. 地域の各種団体は、目的は同じであっても個々に活動していた。活動を増やすのではなく、重複事業等の課題を共有することで参加者が増えたり、情報収集の輪が広がることを理解して頂くための会議を重ねた。
  • 2. まちづくり協議会が取り組む分野ごとに各種団体がつながる中で、団体の課題解決への取り組みに対する温度差が見えてきた。既存の活動方針に固持する団体に根気強く働きかけ賛同を得ることが出来た。
  • 3. 新たな事業(モデル事業等)に取り組む場合は、これに理解・参加してもらえる体制づくりからはじめた。

特徴

  • 1. 地域の課題解決に向けて考えていく仲間に、コンビニエンスストア等地域の商店も参加。多様な人材が、まちづくり協議会の活動を支えている。
  • 2. 福祉マップづくりで得た情報はPCに集約して情報管理を行っている。災害時には、5箇所の指定避難所にPCを配置して、ネット上での安否確認体制を構築した。また、小学校の協力でPCルームにおいてGIS講習を実施したことによって、小学校ともつながりができた。
  • 3. 救急医療情報キット「命のバトン」は、本人の顔写真を撮り、記録紙に貼って渡している。また、個人情報の記入は原則本人ではあるが、記入できない場合は民生委員が協力したり、ひとり暮らしの方が頼りそうな機関(地域包括支援センターや医療機関)にも「命のバトン」活動への理解を求め協力者となっている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 澤井 安勇((財)日本防炎協会理事長))

 本事業は、岐阜市の本荘自治会連合会、社会福祉協議会本荘支部、民生児童委員会始め、保育園・幼稚園、小中学校、高校、福祉事務所、地域企業(コンビニ、協賛企業)など本荘地区に関わる多くの団体が参加して地域防災・減災を目的に結成された「まちづくり協議会」が実施する高齢者・障害者等の見守り、緊急時支援の各種事業プログラムである。活動のコンセプトは、日常的に築かれた「きずな」を緊急時の「きずな線」に活用していこうというもので、高齢者のための「ぬくもりサロン」や様々な日常的なコミュニティ活動を通じて、参加強制とならないよう配慮しながら自然な形で人のつながり・ネットワークを広げ、参加する要援護者を増やしてきたとのこと。その絆を生かして、GIS活用福祉マップづくり、救急医療情報キット「命のバトン」の普及支援など、いざというときに実際に役立つ実用的な要援護者支援プログラムを次々と実現させてきた。当初から、地域の婦人会が推進力になってきたとのこと、お話をしていただいた協議会会長の井上さんもパワフルな女性リーダーである。彼女を始め熱心な協議会のメンバーを中心に、本荘地区の官民の組織・団体が大きくまとまって、地域防災活動を展開している様子は、正に地域協働の実践モデルを見るようで心強い印象を受けた。今後とも、活動を支える後継者の育成を進め、要援護者支援の輪がさらに拡がることを期待したいと思う。

団体概要

 地域に関わる団体を活動内容に応じた部会にグループ分けし、情報の共有、各種活動の支援を行う。

構成団体
地域の各種団体、小学校、中学校、高校、幼稚園、保育園、地域包括支援センター、地域内福祉事業所、企業(コンビニ・協賛企業)
支援団体
岐阜市担当課・消防署・警察署・社会福祉協議会

実施期間

 平成21年5月~