離島における住宅用火災警報器共同購入の取組 - 消防防災博物館

第16回防災まちづくり大賞(平成23年度)

離島における住宅用火災警報器共同購入の取組

優良事例(住宅防火部門)

離島における住宅用火災警報器共同購入の取組

柱島婦人消防隊
(山口県岩国市)

事例の概要

■経緯

 柱島婦人消防隊は、島内には高齢者世帯や老朽化した木造住宅が多いこと、また過去に大規模な林野火災が発生し2日間にわたって延焼したという苦い経験から、同婦人消防隊としても、積極的に住宅用火災警報器の設置促進活動に取り組むこととした。
 岩国地区消防組合予防課員による住宅用火災警報器についての講習会を定期的に受講し、住宅用火災警報器の重要性、必要性について認識を深め、島内全世帯に啓発パンフレットを配布し、設置の呼びかけを行った。自治会や婦人会にも設置促進の協力を呼びかけた結果、すでに設置されていた65世帯と合わせて、平成22年6月に島内の全世帯(140世帯)に設置した。また、同時に端島、黒島にも設置を呼びかけ、3島全世帯(185世帯)の住宅用火災警報器設置を達成した。

■内容

  • 1. 柱島婦人消防隊長は、柱島自治会連合会長に住宅用火災警報器設置促進の協力を求め、島内の住宅用火災警報器が設置されていない世帯に設置するため、各自治会、婦人会の代表者を集め、会合を開催するよう要請、平成22年5月初旬に柱島出張所で会合が開催された。
  • 2. この会合で、婦人消防隊員の3名が主体となって岩国地区消防組合火災予防条例の改正内容及び住宅用火災警報器の重要性について説明し、続いて島内の設置されていない全ての世帯に住宅用火災警報器を設置すること、購入については共同購入を行い1個あたりの単価を安くすること、購入代金は取り付け時に徴収すること、取り付けは婦人消防隊員、自治会員が行うことを提案し、出席者から了承を得た。また、同婦人消防隊の働きかけにより、自治会の協力のもと、柱島周囲にある端島、黒島の全世帯(45世帯)にも住宅用火災警報器を設置することが決定した。
  • 3. 購入業者については、予防課員から住宅用火災警報器を扱う消防用設備の事業所について情報提供を受け、電池寿命10年の製品を選択、販売事業所と折衝し購入単価を抑えた。
  • 4. 平成22年6月から約3週間をかけて、婦人消防隊員、自治会役員が2人1組となって島内の75世帯に取り付けを実施した。なお、端島、黒島については、自治会役員が取り付けを行い、柱島、端島、黒島の3島全世帯の設置を達成した。
  • 5. 住宅用火災警報器設置後も、定期的な清掃や鳴動試験について各世帯に呼びかけ、不具合や奏功事例についても情報収集活動を継続することを申し合わせた。

住宅用火災警報器の研修

住宅用火災警報器啓発パンフレット

共同購入した住宅用火災警報器

住宅用火災警報器啓発ののぼり旗の掲示

可搬ポンプの点検

住宅用火災警報器の取付

苦労した点

  • 1. 住宅用火災警報器設置について、住民から理解を得るため、パンフレットを持って各世帯を訪問したこと。
  • 2. 島内には道路が狭く車両が進入できない民家もあり、徒歩で取り付けに回ったこと。
  • 3. 島内には古い民家が多く、壁や天井材に堅い部材を使用しているため、警報器を設置する際に、ネジが取り付けにくかったこと。
  • 4. 警報器を取り付けに回った際、留守宅が多く、何回も訪問しなければならなかったこと。
  • 5. 生活の基盤としている漁の休みを利用して、警報器の取り付けを実施したこと。

特徴

  • 1. 婦人消防隊が住宅用火災警報器設置促進のため、島内各世帯にパンフレットを持って訪問したり、また自治会や婦人会の会合を通して地道に住宅用火災警報器の設置促進を働きかけ、その必要性が住民に理解されていたことで、約2ヶ月という短期間で設置することができた。
  • 2. 住宅用火災警報器の設置促進活動を通して、住民に火災予防に関する意識が深まり、また自治会や婦人会との一体感が生まれ、連携をより強化にすることができた。
  • 3. 婦人消防隊は、島内に常備消防が設置されていないこと、日中は消防団員も出漁していることが多いことから防災に対する意識が強く、発災時に備えて消防団の放水訓練に参加するほか、消火栓の手入れや防火水槽周囲の草刈りを行い、団員と一体となって災害に強いまちづくりをめざして積極的な活動を行っている。

団体概要

*柱島の人口:203名   世帯:135世帯 (平成23年8月現在)
 柱島婦人消防隊は、経済活動の基盤が漁業や農業である柱島で、消防団は設置しているものの、団員が出漁中の消防力低下に対応する目的で昭和55年に婦人消防隊設立の要望が住民から持ち上がり、昭和56年4月に隊員10名で結成されたものである。(平成23年4月現在:平均年齢65歳)火災時にはホースの搬送や撤収、乾燥等消防団の後方支援活動を積極的に行っている。
 また、住宅防火訪問等の予防活動のほか、婦人防火クラブ研修会などの各種研修会に参加して研鑚を積むとともに、可搬ポンプの点検なども実施し、島民の防火・防災に大きく寄与している。

実施期間

平成22年5月~