総務大臣賞(一般部門)
PDCAサイクルを回して改善、広がる防災の輪
川西地区自主防災会
(香川県丸亀市)
事例の概要
■経緯
「わが街はわが手で守る」という思いを掲げ、平成14年から自主防災活動を開始。平成19年からは「PDCA」サイクルを導入し活動の改善を図る。また、広く地域の人と連携し情報を共有するため、平成19年に、県内30団体で「かがわ自主ぼう連絡協議会」を立ち上げた。現在は、約100団体にまで広がり、スキルのある会員が「防災伝道師」として、他地域、他団体に出向いて県内全体の防災活動のレベルアップを図っている。
■内容
「PDCAを回す活動」は1.人づくり、2.物づくり、3.絆づくりの3つの観点から構成し、改善向上を図ってきた。年度末に計画(P)と活動(D)について、チェック(C)し、改善策(A)を検討し、翌年度の活動に備えた。この動きを繰り返し、常に改善を進めてきた。
- 1. 人づくり(人材の育成)
防災力を高めるためには、まず人づくりである。このために、(1)学校での防災教育、(2)防災・減災への訓練、(3)研修実施と他機関の研修参加、(4)普及・啓発活動の4つを掲げ、PDCAのサイクルを回して改善を進めてきた。
この結果、防災訓練等の中で、消防機関等の協力もあり、より高度な技術を取り入れることができた。また、児童・生徒の災害対応力強化を目標に、研修カリキュラムの作成、実践、振返り、修正等の過程を継続することで、対応力の向上が図れた。 - 2. 物づくり(資機材の整備)
物づくりの第一歩は、資機材の拠点整備である。このために、(1)防災機材、備蓄食品の整備、(2)機材等の維持管理について、PDCAのサイクルを回して改善を進めてきた。
その結果、(1)において、リサイクル活動に着目し、不用品を防災用品として利活用することを始めた。利活用可能品の積極回収をすすめ、コスト削減が図れた。また、備蓄食品の更新が、経費面から問題となっていたが、様々な地域行事と連動させることで、独自の資金調達が縮小された。
(2)は、保管庫整備とともに、保管責任者の指定、保管物表示による保管状況の明確化を図った。結果、防災訓練等で、すぐに使える管理に繋がった。 - 3. 絆づくり(ネットワーク・連携作り)
絆づくりは防災・減災活動の円滑な実施に重要である。このために、(1)要援護者への取り組み、(2)企業・団体との連携、(3)広域連携、(4)広報活動の4つについて、PDCAのサイクルを回して改善を進めてきた。
結果、(1)は数値指標だけでなく、満足度等の意識指標も加味したことで、より相手の立場に立った活動ができた。更に、行政では難しかった要援護者、支援者のデータベースづくりは、県内でも高い評価を得た
(2)は、各種企業と連携し、災害時に必要なインフラ整備を図った。
(3)は、育った人材を「防災伝道師」として、県内全域にノウハウやスキルの水平展開を図った。このことによって、段階的に多くの伝道師が育ち、更に、この伝道師達が県内各地において、自主ぼうの活動を推進することによって、県内の自主防災活動の底上げに大きく寄与している。
帰宅RMAP作り(城辰小学校)
応急手当訓練(丸亀南中学校)
要援護者搬送訓練(丸亀南中学校)
ロープ結束訓練(丸亀高校)
救出訓練(地区防災訓練)
油火災への対応(地区防災訓練)
資材庫の分散配置
応急手当訓練(地区防災訓練)
情報伝達訓練
防災伝道師としての出前研修
苦労した点
- 1. 長期にわたってのボランティア防災活動、人的資源の確保とやる気人間の地域内ウオッチングの難しさ
- 2. 活動資金の確保
特徴
- 1. 行動力、行動(活動)範囲は、県内全域をカバー、平成20年度からは県外まで含めた元気印の自主ぼうであり、更には、小学生、中学生も加わった3世代の自主防災会である。
- 2. PDCAを回すことによって、財源の確保から外国人対策、要援護者対策まで、きめ細やかな取組みができた。
委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部))
川西地区は香川県丸亀市の中心街の南に位置し、土器川に沿う6平方キロ足らずの細長い地区である。ここでの組織的な防災活動は平成14年にはじまる。活動の発展はめざましく、今回2度目の受賞である。前回の訪問で発展する予感はあったが、これほど短期間にすばらしい取り組みへと進化したことは驚異的である。会員の努力に敬意を表したい。会では活動を「人づくり」、「物づくり」、「絆づくり」に分類し、それぞれの年間活動計画を策定、実行し、問題点をチェックして翌年に繋がる改善を行うPDCAサイクルを回して活動を展開している。このような体系的な取り組みはこれまでに例がなく、高く評価される。また、会の活動で得られた成果とノウハウをもつ会員を組織して「防災伝道師」として広く県の内外へ派遣し、出前講座を開いて情報発信していることもすばらしい取り組みである。その他にも、①救出用防災備品庫の設置を「火の見櫓の下」や「用水路の中」といった日常生活空間の中にありながらも生活の障害にならず、メンテナンスも容易な場所に配置し、建物は廃材を利用して木工技術をもつ会員と家族の協力で建設し経費の削減も図っている。②子供の防災教育に積極的に関与し、活動を経験した子供と共に他の学校に出かけ活動する。いわゆる大人と子供の伝道師ともいえる活動を行っている。④子供に人命救護の指導だけでなく、土嚢の作り方、ロープを用いた救助訓練などこの地区ならではの取り組みも行っている。これらは他の団体にも参考になるユニークな取り組みである。このように、この会では常にチェックを行い、新たな項目を組み込んで合理的、計画的に活動しており、その活動内容には他の模範となるものが多い。今回は2回目の訪問であったが、岩崎正朔会長のもとで会員一人ひとりが自分の特技を生かして元気で活動しているという印象を今回も強く受けた。今後は3回目の受賞に向けて活動にさらに磨きをかけ、その発展した活動状況を大賞選定委員会に示してほしいものである。
団体概要
- 平成14年4月設立、会員80名、代表者岩崎正朔
- 事業として・防災に対する知識の普及・地震等災害予防に関すること・防災訓練の実施・資機材の整備、備蓄に関すること等を行う。
実施期間
平成14年~