写真説明:障害があり、歩くことができない妻・清美さん(右)と自宅で暮らす池谷内吉光さん(2024年1月13日、石川県珠洲市で)=上甲鉄撮影
計画のわずか2割強…災害関連死が広がる恐れも
能登半島地震で、介護が必要な高齢者や障害者ら「災害弱者」を受け入れる福祉避難所の開設が進まず、被害が大きかった石川県の7市町では計画上の2割強にとどまっていることが分かった。深刻な施設被害や断水、人手不足などが背景にある。避難を諦めて壊れた家に残る人もおり、災害関連死につながる恐れもある。支援強化が急務となっている。
避難所に使えるトイレがない
珠洲(すず)市野々江町の池谷内(いけやち)吉光さん(73)、清美さん(73)の夫婦は、地震から2週間が過ぎても被災した自宅から動けずにいる。
清美さんは骨髄に腫瘍があり、立つことができない。避難所になった市立直(ただ)小学校は自宅から近いが、通常のトイレしかなく、身を寄せるのは無理だった。
傾いた家で寒さに耐える
地震で地盤が沈み、木造の自宅は大きく傾いた。応急危険度判定は立ち入らないよう求める「赤」。斜めの床では車いすや杖(つえ)が使えず、清美さんは座ったまま腕の力で移動する。電気は復旧したが隙間風がひどく、室内でも凍えるほど寒い。「この生活をいつまで続けられるか……。避難先に手すり付きのトイレでもあれば、妻を連れて行けるのに」。吉光さんはため息をつく。