編集者として「女性のリアルな暮らしに活かせる美容・健康情報」を念頭に企画・取材。女性誌、新聞、WEB媒体等で20年以上執筆中。特にヘアケア・毛髪科学関連分野を得意とし、美容記事の監修や講演活動も行う。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号! いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)がある。
instagram:@namiikuma_hairsta
HP:http://hairista.jp
スキンケアでは美容成分ブームが継続中。実はヘアケア界も同様で、さまざまな成分が登場しています。そんな折、地元ではやっかいもの扱いされている野草に育毛効果があるという話をキャッチ。それってすごいSDGsじゃない? ということで、その野草の故郷、北海道へと調査に行ってきました。【伊熊奈美「誰でも!一生!キレイ髪への道」 vol.6】
『美的GRAND』本誌の制作中、ある頭皮用の美容液に興味をそそられました。爽やかな使い心地で、赤みがあるときや日焼けしてしまったときなどにつけると、頭皮の色にすこぶる透明感が増して炎症が落ち着くし、頭皮環境にも良いようです。
北海道のオオイタドリという野草の根のエキスが配合されたエッセンスなのですが、この成分の名前自体を育毛化粧品の界隈で耳にしたことがありません。聞けば、オオイタドリは北海道に自生する野草。抜いても抜いても生えてくる強靭な生命力をもち、そのために地元では持て余しているとか。この植物から有用な成分を発見し、髪と頭皮のエイジング用美容液に配合したというのです。
毛包を活性化して、元気な髪に育てるオオイタドリ根エキスを配合。ナチュラルアイランド イタドリスカルプエッセンス 103ml ¥4,400
繁殖力旺盛な植物の根のエキスが、髪の発育に働きかけるというのだからおもしろい。よく、頭皮は畑、髪はその作物にたとえられるけれど、抜けにくい根のエキスで抜け毛予防…なんて、なんだか話ができすぎじゃない? しかも、“雑草”をアップサイクルだなんて…!
心の中でそんなツッコミを入れていたら、実際に北海道の研究拠点で、オオイタドリの自生地でもある北海道の「ナチュの森」を視察に行く機会が訪れました。
掘削した建設残土で作った芝生のガーデン。季節の花々が咲き乱れ、休日はファミリーでにぎわいます。
2018年にオープンした北海道・登別の程近くにある「ナチュの森」は化粧品メーカーのナチュラルサイエンスとナチュラルアイランドが運営する広大な複合施設。名水と名高い倶多楽湖(くったらこ)からの湧水と、廃校になった中学校の敷地を利用し、環境に徹底的に配慮した化粧品工場や植物成分を収穫する研究農園を中心に、花々が咲き乱れる建設残土を活用したガーデン、旧校舎を利用した体験施設、レストランにスパ……。建設の計画段階から運営までSDGsの精神を軽やかに体現した素敵な場所です。
そして、この施設の住所が、まさにオオイタドリの本家本元を匂わせる白老町虎杖浜(こじょうはま。「虎杖」はイタドリの漢字表記)。施設の建設中、地中に張り巡らされたオオイタドリの頑丈な根茎に出合い、成分の開発はそこから着想を得たというのです。災い転じて、とはまさにこのこと!?
世界のカルデラ湖の中でも、もっとも真円に近い形とされている倶多楽湖。流入・流出する川がなく、雪と雨水だけで満たされた湖水は日本の水質ランキングで常にトップクラス。
美し過ぎる湖水! 湖底からマグマの地層でさらに濾過され、麓まで届く頃にはますますピュアな水に…! 化粧品作りには良水が不可欠ですが、水質は敏感肌にもやさしい超軟水。赤ちゃんコスメに定評のあるナチュラルサイエンスがこの地を選んだのもうなずけます。
さっそくお目当てのオオイタドリの視察へ、虎杖浜の海岸へと足を延ばしました。じつは空港から白老町に至るまでの間、道端でたくさん見かけたのですが、海岸のオオイタドリの群落はさらにビッグスケール。訪れたのは7月中旬でまさに生育のピーク直前。大きな葉の1枚1枚がいきいきと呼吸しているのを感じました。
〈左〉背丈は私の身長(159cm)を余裕で超える大きさ。本州のイタドリがかわいらしく思えてきた…。〈中〉葉の大きさは20〜30cmほど。採集の際は、葉はイタドリ茶と新アイテムのUVヘアミルクの成分に活用。〈右〉茎には節があり、フキのように中空になっています。群生に分け入ると竹林のような密集状態。完全に抜こうとしたら、手作業ではとてもムリ、重機がなくては…。
ナチュラルサイエンス、ナチュラルアイランドは、東京に本社を構えていますが、商品に採用している数々の植物の生育地であることから、北海道に工場を置くことを決断したそう。その際、建設を阻むパワフルなオオイタドリに強烈なインパクトを受け、何かしらのパワーがあるのではないかと9年程前から手探りで研究を始めたといいます。
「オオイタドリを研究用に採集したいと地元の方々に伝えたところ、なんでこんなのがほしいの? と不思議がられました。本当に直感だけで、どこにどんな効果があるのか、肌なのか、頭皮なのかもわからないという状態だったんです(笑)。大学と連携して共同研究に着手したのですが、そのスクリーニング(ふるい分け)だけで5、6年はかかりました」と、開発研究に携った佐藤嘉純さんは振り返ります。
とはいえ、この北の大地で多くの植物と向き合い、独自に成分を見出してきた目利きの会社です。ついに頭皮への効能を見つけ出すことに成功!
「オオイタドリの根にエモジンというポリフェノールの一種が含まれていて、毛乳頭細胞の増殖効果があることがわかったのです。これは有名な育毛成分と似た働きをするもので、非常に画期的でした。成分の効果について多くの検証を行い、確証を得たので、製品はエイジングヘアのためのスカルプエッセンスに決まりました」
ナチュの森の化粧品ファクトリー内の様子。ナチュラルサイエンス、ナチュラルアイランドは、基礎研究から製品開発、製造、販売までを一貫して自社で行うなかなかレアな企業。北海道の拠点では製造から品質管理までを受け持っています。
成分を配合するテクスチャーは、単なる頭皮用美容液ではなく、大人の女性のために根元にふんわりとした立ち上がりを作ることにこだわって開発。8年を経た2022年の秋、独自成分を核としたイタドリスカルプエッセンスが発売されました。
育毛の分野で独自成分を開発しているメーカーは決して多くはありません。それだけに、この発見は大きな快挙といえるでしょう。
2024年にはオオイタドリの葉の抗酸化力の高さに着目したイタドリUVヘアミルクも登場。日本の植物の力を信じ、効果を妥協せず、素材を余すところなく使い切る。その姿勢は、まさに未来のクリーンビューティの理想系です。この場所も製品も、末長く愛され続けていくに違いありません。
施設内にはしゃれたライフスタイルショップも。オオイタドリ根エキスのスカルプエッセンスに続き、2024年にはオオイタドリの葉の抗酸化力の高さを活用したイタドリUVヘアミルク SPF16・PA+++(56ml ¥2,860)も登場。
編集者として「女性のリアルな暮らしに活かせる美容・健康情報」を念頭に企画・取材。女性誌、新聞、WEB媒体等で20年以上執筆中。特にヘアケア・毛髪科学関連分野を得意とし、美容記事の監修や講演活動も行う。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号! いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)がある。
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