自然には地域ごとに個性があります。それぞれの地域の特性に応じた生物多様性の保全活動と持続可能な利用を推進する役割が地方公共団体には期待されています。
生物多様性の保全を進める上では、地域間での連携も重要です。わが国では生物多様性の保全等を目的とした複数の地方公共団体からなる連携プラットフォームがすでに構築されており、情報の共有や共同事業の実施など、各種取組が進められています。
地方公共団体が相互に生物多様性の保全や持続可能な利用に関する取組や成果について情報発信を行うとともに、「国連生物多様性の10年日本委員会」の構成員として他のセクターとの連携・協働を図り、愛知目標の達成に貢献することを目的に設置された、地方公共団体間のネットワークです。191自治体(令和5年3月時点)により構成されています。
イクレイは持続可能な社会の実現を目指す2,500以上の地方公共団体で構成された国際ネットワークです。気候変動枠組条約(UNFCCC)、生物多様性条約(CBD)および砂漠化対処条約(UNCCD)のオブザーバーとして認定されており、国内では日本事務局として一般社団法人イクレイ日本が、会員団自治体の国内外の取組を支援する活動を実施しています。
生物多様性基本法では、都道府県及び市町村は生物多様性地域戦略の策定に努めることとされています。地方公共団体が生物多様性地域戦略を策定する際に参考となる基本的な情報を紹介します。
生物多様性保全に対する地方自治体への期待は、2008年の生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)での国際市長会議 、2010年のCOP10での国際自治体会議を経て高まり、COP10での「都市と地方自治体の生物多様性に関する行動計画(2011-2020) 」の承認につながりました。国際自治体会議はその後もCOP に併せて開催されており、特に「生物多様性の主流化」や「資源動員」への地方自治体の貢献が注目され、COP15で採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施強化に向けても、地方自治体の役割は重視されています。
新たな世界目標を含むCOP15での決定において、世界の自治体からの意見を反映させるために、スコットランド政府が主催し、各国の自治体や団体が参加し、進めている一連の取組です。ウェールズ政府、英国環境・食糧・農村地域省、イクレイ、そして「愛知目標達成に向けた国際先進広域自治体連合」(2016年に愛知県が世界の広域自治体と設立)等が共催しています。 COP10で承認された「都市と地方自治体の生物多様性に関する行動計画(2011-2020)」の後継計画として、エジンバラ・プロセスでは新たに「更新版地方政府・都市・その他地方自治体のための生物多様性に関する行動計画」の案と地方自治体等の参画に関する勧告案 を提示しており、カナダ・モントリオールで開催されたCOP15において採択されました。
エジンバラ・プロセスを通じて世界の自治体からの意見を宣言としてまとめた文書で、2020年8月31日に公開されました。 この宣言は、COP15やその準備会合で締約国に提示し、「ポスト2020生物多様性枠組」において自治体がより大きな役割を果たし、生物多様性の保全と再生に貢献することを目指すと表明したものです。世界中の自治体等からの賛同署名を募り、日本国内では、愛知県から生物多様性自治体ネットワークを通じて全国の自治体に呼びかけるなどした結果、54の地方公共団体が署名を行い、日本の署名数が最多となりました。
昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施を支援することを意図して、2022年12月19日に「15/12. 昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施を強化するための、サブナショナル政府、都市及びその他の地方自治体の関与」が採択されました。本項においては、条約の実施に当たっては自治体が重要な役割を果たすことを認識し、自治体の関与を促進するものとしています。附属書に定める「生物多様性のためのサブナショナル政府、都市及びその他の地方自治体に関する行動計画」においては、自治体の参加を促すための活動として、生物多様性地域戦略の策定を奨励することや能力開発・技術移転の取組の実施の支援等が示され、政府だけでなく自治体も含めた活動展開がなされるべきとされています。
環境省では、地域ごとに異なる特徴を持つ生物多様性を地域の自然的・社会的条件に応じて保全し、生物多様性を活かした魅力ある地域づくりを進めていくため、地域における生物多様性の保全再生のための活動に対し、必要となる経費の一部を国が交付しています(生物多様性保全推進支援事業)。
また、法律に基づく計画等の策定及び生物多様性の保全に関する先進的・効果的な取組の実証を委託事業として平成26年度まで実施し、地域の生物多様性の保全活動を支援しました(地域生物多様性保全活動支援事業)。