自然と共生する暮らしを叶えるには?
編集部 ハラボー
教えてくれた人
彫刻家・ツリーハウスビルダー
木村勝一さん
銀座に本社、青森県八戸市に工場を構える株式会社SLOW BASEの代表。これまでに建てたツリーハウスは、日本各地に全22棟。遊園地や保育園、グランピング施設など、幅広い場所で作品を手がける。
http://slowbase.net/
雲ひとつない冬晴れの日。ツリーハウスの展望デッキから緑豊かな平野を望む、ハラボーこと編集・梶原。思わず「ヤッホー」と叫んでしまう気持ちもよくわかる。そんな様子を優しく見守るのが、このツリーハウスを作った木村勝一さん。彫刻家としての顔も持つ木村さんは、鉄や木材を使ったアート作品を数多く手がけ、ツリーハウスも表現のひとつ。自身で“遊べる作品”と呼ぶのもうなずける。
そんな木村さんが手がけるツリーハウスはとてもユニーク。茨城県坂東市に建てた今回の作品は、そもそも木がないところにシンボルツリーを立て、ツリーハウス的に仕上げたもの。環境保全のために伐採された古木を用いている。根が生えた生木ではないので、レイアウトの自由度が高く、メンテナンスも容易。もとより木に負担をかけることがない。
「大切なのは“自然と共生する”こと。間伐材や各種廃材、使われなくなった線路の枕木なども使用するように心がけています。それでいて安全に遊べる強度も大事。この作品では、1F部分を鉄の枠組みにしてベースを作りました。高床式で、矢倉のような構造です。シンボルツリーは1Fの内部から2Fへと天井を突き抜けるように伸びています」と、木村さん。たしかに、このツリーは展望デッキまで届く象徴的存在だ。
2Fにある、4畳半ほどの“ハウス”部分には快適な空間が広がる。壁一面のガラス窓は太陽光をたっぷり取り込み、全開することでバルコニーとつながる広々としたスペースに大変身。明るく開放感ある空間は、部屋そのものの狭さを感じさせず、家族や友達同士で十分くつろげる。何より見晴らしの良さが最高に気持ちいい。扉や階段、はしごの手すりには可愛らしいデザインが光り、彫刻家としてのこだわりが随所にみられる。
「ずっといたい~! 秘密基地ごっこして、夜は星を見ながらお部屋のなかで暖かく過ごしたい~」と、夢が膨らむハラボー。現実に戻ってズバリ、木村さんにツリーハウス制作の費用を尋ねてみると、「300万円ぐらいから作れますが、この規模だと800万円ちょっとかかるかな」とのこと。
夢のツリーハウスを手に入れるには、まずは貯金しなきゃ! そう決意したハラボーだった。
木村さんの代表作がコチラ。
キリン庵(千葉県市原市・The Bamboo Forest内)
空中茶室(青森県八戸市)
犬見庵(青森県八戸市)
木村さんの悩み
一般的にツリーハウスを作るときは、木にボルトを入れるか板で挟むか。でも、それだと木に優しくないし、ツリーハウス自体5年でダメになる。
ある日、木村さんは考えた
木に負担をかけないためには
どうするべきか
木村さんの気づき
高床式にすれば木にかかる負担が少ない!
矢倉のように小屋自体を高床式にすれば、木に負担をかけることがない。しかも、1F部分の強度を高めることができて一石二鳥!
G-HAUSの誕生!
木村さんが命名した「G-HAUS」。1F部分は車庫として利用でき、扉はウインチで上げ下げするしくみ。
全景
ベースとなる1F部分の高さは2.5mほど。間口はおおよそ4mで、奥行きは約6mだ。様々な木材を織り交ぜた外壁がとてもおしゃれ!
ハラボーの驚き
ツリーハウスって、トム・ソーヤや鬼太郎のおうちを想像してたけど、このハウスはより頑丈で快適だわ〜(うっとり)
1F
シンボルツリーは、クルマを入れたときにかわせるよう設置。床材は線路の枕木を使用している。
ガッチリできてて
安心感すごい!
硬くて頑丈、腐食にも強い栗の木のシンボルツリー。デッキや支柱には、強度があるカラマツを採用した。
細部までこだわりが!
扉の飾りも一点ものの手作り。
外階段は栗の木の曲がりをそのまま利用した、趣きあるデザイン。
2F
ハウスはまるで秘密基地のよう
木のぬくもりを感じる部屋にセレクトされた家具類。はしごも栗の木を使ったハンドメイド作品だ。
BALCONY
窓を開ければハウスとバルコニーの空間がつながる。新鮮な空気、天気も良くてサイコーなんですけど〜。
ハラボーの気づき
確かにこの方法なら、木が成長してもハウスのバランスが崩れず長持ち! メンテナンスすれば50年持つって……。いつか私のツリーハウスも作って〜!
Special Thanks!
今回取材したツリーハウスはRVパーク「Sugar Base」で見ることができる。もちろん、パーク内は車中泊もテント泊も可能だ。
RVパーク Sugar Base
住所:茨城県坂東市弓田1826-2
HP:https://sugarbase.net/
※構成/早坂英之(編集部) 撮影/三浦孝明
(BE-PAL 2024年3月号より)