遍路の心得・戒め
(1)四国遍路の三信条
摂取不捨の御誓願を信じ同行二人の信仰に励もう。(「悩めるもの、苦しむもの、最後の一人まで救い尽くすであろう」という弘法大師のお言葉を信じ、巡拝中は常に「お大師さま」とともに寝食をする思いで詣ること。)
何事も修行とこころえ、愚痴、妄語をつつしもう。(困ったとき、苦しいときはこれが修行だと受けとめること。)
現世利益の霊験を信じ、108使の煩悩を消滅しよう。(いかなる人もこの世で救われることを信じ、迷いの世界を転じて悟りの世界に入るよう功徳を積むこと。)
(2)十善戒
十善戒は、身と口を意のはたらきをすべて正しく生きていくことを心に誓い実践して行くことである。弘法大師は「諸戒は十善を本にす」と説かれている。
殺生しない
盗みをしない
邪淫はしない
嘘はつかない
お世辞を言わない
悪口を言わない
二枚舌を使わない
欲張らない
怒らない
物事を見た目だけで判断しない
遍路のマナー・戒め
迷惑をかけない
特権意識を持たない
「歩いて苦労している吾に周囲が協力、支援するのが当たり前」などと全く誤った考えを持たない。世の中「尊敬や同情半分、あとの半分反発批評」が通り相場。遍路を非難する宗派もある。借金支払に追われている人が見たら腹も立つだろう。
遍路は皆平等である。
俗世の地位、名誉、財産は全く関係なし。佛の前にすべて平等である。つつましく、我慢づよくありたい。俗世のことにこだわると我慢、傲慢がチラつく。
積極的に声をかけてあいさつ。
沿道住民や往き交う人々に笑顔で声をかけよう。あいさつの聞こえる遍路道は明るくなごみ、住民と遍路の心が解け合うようになる。
将来いつの日か、接待に助けられる遍路が増えてくるであろう。
接待は気持ちよく受け「納め札」をお返しにさし上げるのが遍路のならわしである。
遍路仲間では、互いに労って参る温かい慣習がある。道中擦れ違う場合は片手を挙げてあいさつ、敬虔な態度を示して別れよう。
用便施設の借用は、礼をつくし、相手の立場を十分考えてきれいに始末して去ることを心掛ける。確実に負担、迷惑をかけているのだから、五十円、百円の硬貨もおいて去るとよい。ガソリンスタンドは運転手のためのもので徒歩遍路の用足しは別。切羽詰まったあなたの前に「へんろの便所使用お断り」の張り紙がないことを祈りたい。
霊場での作法
霊場へ到着すると手水を使って身を清める。
服装を整え、輪袈裟をかけ念珠を持つ。
礼拝順序は、本堂、大師堂、その他の堂。
納札、写経(持参の場合)を納める。
灯明と線香をあげ、お賽銭をあげる。
本堂、大師堂備え付けの鐘を打つ。
読経 合掌のあと心静かにお経を唱える。
納経 納経所で納経帳に墨書授印してもらう。掛軸も同様。判衣に御宝印をいただく。
納経時間は午前七時から午後五時までとなっている。
霊場を去る時は、惣門や境内を出るに際して、本堂に向かい一礼をしてから次に向かおう。