犬をつなぐよう黒人男性に言われた女性、通報して解雇 米NY
米ニューヨークのセントラルパークで25日、黒人男性から飼い犬にリードを付けるよう求められた白人女性が警察に通報した。女性は翌日、勤務先の投資会社から「人種差別」を理由に解雇された。
バードウォッチングをしていたクリスチャン・クーパー氏は25日、犬が野生生物を危険にさらす可能性があることを不安に思い、犬にリードを付けるよう女性に求めた。
クリスチャン氏と、犬を連れていたエイミー・クーパー氏(親族ではない)はこの時、セントラルパーク内の「ランブル」と呼ばれるバードウォッチャーに人気のエリアにいた。ここでは、犬には常にリードをつけるよう規制されている。
クリスチャン氏によると、エイミー氏の犬がランブル内の「樹木が植えてある場所を駆け回って」いることに気付いたことがきっかけだった。
「お嬢さん、ランブル内では常に犬をリードでつないでおかないといけませんよ。すぐそこにサインがあるでしょう」と伝えたが、拒否されたという。
そこで動画の撮影を始めると、エイミー氏は「アフリカ系アメリカ人の男が私の命を脅かしている」と警察に通報すると言ってきたという。
エイミー氏はその後実際に通報。警察官の出動を要請する前に、「男はアフリカ系アメリカ人」だと繰り返し訴えたという。
<関連記事>
クリスチャン氏が撮影した動画はソーシャルメディアに投稿され、25日中に拡散された。動画は数千万回視聴されたほか、米国内で警察官に殺害された黒人男性が多いことについて議論が巻き起こった。
クリスチャン氏のきょうだいのメロディ氏は、「常に犬をリードにつないでおかなければならないと明確に表記されているニューヨーク・セントラルパーク内の有名なエリアで、犬にリードをつけずに散歩している人がいると、私のきょうだい(熱心なバードウォッチャー)のような人が丁寧にお願いすることになる」とツイートした。
その後エイミー氏は「過剰反応だった」と謝罪。米NBCニュースに対し、「すべての人に、特にあの男性と男性の家族に対して、心から謹んで謝罪します」と述べた。
「人種差別を容認しない」
女性の勤務先だった投資会社「フランクリン・テンプルトン」は26日、女性を「即時」解雇したとツイートした。
「フランクリン・テンプルトンではいかなる人種差別も容認しない」
同社は当初、この事案について調査を行う間はエイミー氏を休職扱いにするとしていた。
「動物虐待」との非難も
クリスチャン氏が撮影した動画には、警察に通報する際にエイミー氏が犬の首輪を引っ張り上げ、犬の前足が宙に浮いて首が絞まっているような様子が映っている。これに対し、動物虐待ではないかとの非難の声が上がっている。この動画が拡散された後、同氏は犬を保護施設に返還した。
保護団体は「犬は我々に保護され、安全に、健康に過ごしている」とフェイスブックに投稿した。
現在は削除されているエイミー氏のビジネス交流サイト「リンクトイン」やインスタグラムのプロフィール欄には、カナダの大学出身とあり、同氏がカナダ人であるかのような記述があった。
「黒人が思い込みによって射殺される時代」
クリスチャン氏はNBCニュースに対し、今年2月にジョギング中に白人の親子2人に射殺された黒人男性アマード・アーバリー氏(当時25)の事件について言及した。
「私たちはアマード・アーバリーの時代を生きている。黒人男性や黒人に対する思い込みが原因で黒人男性が射殺される時代を。私はそういったことに関わるつもりはない」