「国立大は今後も値上げが続出する」 私立文系でも学部で20万円以上の差、各大学の授業料を比較すると… | 朝日新聞Thinkキャンパス

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大学の授業料は、値上がりを続けています。学部によって、費用が大きく異なります。医学部や歯学部の学費が高いことはよく知られていますが、実は文系の学部でも、学部によって差があるのが現状です。駿台予備学校で長年、入試情報部門の責任者を務めてきた石原賢一さんが解説します。(写真=Getty Images)

国立大の学費も、一律ではない

大学の学費は、国公立か私立か、私立の場合は大学や学部によって変わってきます。国立大学の授業料は、標準額に基づいて大学が独自に設定することができます。

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国立大学の学費(標準額)
●入学料     :28万2000円
●授業料(1年間) :53万5800円

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多くの国立大学は標準額と同額に設定していますが、標準額よりも高く設定している大学もあります。

東京工業大学は東京科学大学への統合により、2025年度から東京医科歯科大学と同額になることが予想される(図=石原さん提供のデータをもとに編集部作成)

標準額は2005年度から変わっていませんが、上の表を見ると授業料の増額は、この数年で実施されていることがわかります。石原さんは「今後も国立大学の授業料の値上げは続出する」と予想します。

「今年3月に行われた文部科学省の中央教育審議会で、伊藤公平委員(慶應義塾長)が『国立大学の学費を年間150万円程度に上げる』ことを提言し、波紋を呼びました。国から配られる運営費交付金の減額や、物価の高騰などによって、今後も授業料を値上げする国立大学は続出するのではないでしょうか」

24年5月には、東京大学が授業料の値上げを検討していることが報道されました。引き上げた場合はおよそ10万円の増額になる見込みです。

同じ文系でも20万円以上の差

私立大学の場合、大学や学部によって学費は大きく異なります。まず、大まかに文科系、理科系、医歯系、その他に分けて見ると、授業料、入学料、施設設備費の平均は下記の通りです。

文部科学省「令和5年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)」

医学部歯学部の学費は、年間の授業料、入学料、施設設備費いずれも突出しているほか、理系は文系よりも高額になることがわかります。では、文系の中では、学部によって差があるのでしょうか。
法学部、商学部、経済・経営学部など、古くからあり、定員が多い学部は、ほかと比べて学費が安いです。一方、国際系や心理系の学部は比較的新しく、学費が高くなる傾向があります

なかでも国際系学部の授業料の高さは、多くの大学で際立っています。ほかの文系学部に比べて国際系学部の授業料が高い大学は、次のような例があります。

すべて2024年度(図=石原さん提供のデータをもとに編集部作成 ※学年により授業料が異なる大学もある)

国際系学部は定員が比較的少ないことや、外国人教員を含めて教員を集めるためにお金がかかることなどから、授業料が高くなっているようです。また、在学中の海外留学が必須となっていることが多く、その場合はさらに費用がかかります。

国公立大学でも、千葉大学国際教養学部や秋田の国際教養大学など、留学が必須の場合は要注意です。留学中の授業料は免除されるケースもありますが、自宅外生の場合は住居費が日本と海外で二重にかかるなど、国公立大学とはいえ実際にかかる費用は高額になることがあります

新設の学部は、学費が高い

心理学部は文学部などと変わらない大学も多いです。例えば上智大学は文学部(新聞学科除く)や法学部、経済学部の授業料は88万8000円ですが、総合人間科学部の心理学科は96万7000円です。同志社大学は、文学部の授業料は76万3000円ですが、心理学部は92万3000円と、大学によっては大きな差があります。
新しい学部は、新校舎を建てたり設備を導入したりと初期費用がかかるため、全体的に授業料が高くなる傾向があります」と石原さんは話します。次の表は、新設する大学が増えている情報系学部の授業料の例です。

すべて2024年度(図=石原さん提供のデータをもとに編集部作成)

理工系の情報系学部では、例えば東京都市大学情報工学部は151万2000円、立命館大学情報理工学部は167万2600円など、さらに授業料が高くなる傾向があります。

学費が変動する「スライド制」も

各大学の学費は入試要項などで調べることができますが、記載されているのは主に入学金、授業料、施設設備費、実験実習費です。このほかに留学費用や教材費、機材費(パソコンなど)がかかってくることもあります。

 特に教科書は高校に比べて専門的なものを使用するので、1冊の金額が高くなる傾向があります。また、留学する場合はそれまでにTOEFL iBT®などの英語テストのスコアが必要になるため、繰り返し受験する場合も少なくありません。TOEFL iBT®の受験料は、1回245USドル(5月9日現在で約3万8140円)です。

「入試要項やホームページなどで公表されている以外に、どれくらいの費用がかかるのかは大学や学部によるので、オープンキャンパスに参加する際などに、保護者が積極的に質問するといいと思います

また、物価や経済状況の変化に応じて、学費を変動する「スライド制」を導入している大学があります。この場合、学年が上がるごとに年間授業料が上がっていくことがあるので、注意が必要です。例えば慶應義塾大学はスライド制を導入していて、大学のウェブサイトには「適用するアップ率は前年度人事院勧告による国家公務員給与のアップ率等を基準とします」と書かれています。

大学入学後の学費のことを考えると頭を抱えたくなりますが、費用を抑える方法も増えています。

大学進学や留学に関して、返済不要の奨学金の種類が増えていることが大きな変化です。また、デジタル化が進み、紙の教材ではなくデジタル書籍を利用できることも多くなりました。さらに最近は、現地に行かなくても海外の大学の授業をオンラインで聴講することも可能になっています」

費用を抑えようと思えば、さまざまな工夫ができるのも今の時代の特徴といえるでしょう。物価高のなかで、学費を抑えるためには、さまざまな情報を集める必要があります。

石原賢一
教育ジャーナリスト、大学入試アナリスト
京都大学工学部卒。1981年学校法人駿河台学園駿台予備学校に入職。高卒クラス担任、高校営業、講師管理・カリキュラム編成、神戸校校舎長などを歴任したのち、2006年から18年間、入試情報部門の責任者として各種マスコミへの情報発信、大学、高校での講演などを数多く担当。24年3月に退職し、現在は43年間にわたる予備校での経験を生かし、少子化が進むなかで大きな岐路に立っている高大接続の現状や今後についての分析、発信を行っている。

(文=中寺暁子)

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