■教育系YouTuber &専門家と予測する 2025年度大学入学共通テスト
2025年度の大学入学共通テストから、新たに出題科目となる「情報Ⅰ」。どのような内容が出題されるのでしょうか。文系と理系で有利・不利はあるのか、得点に結びつけるための勉強法などについて、「情報」科目専門塾の創業者・塾講師に聞きました。(写真=Getty Images)
「情報にはマジで関わりたくない」という高校生が多い
2025年度からの大学入学共通テストに「情報Ⅰ」が加わることについて、「新しい教科で、得点できるかどうか不安」といった声が、高校生からよく聞かれます。
「情報」科目専門塾の創業者で塾講師の藤原進之介さんは、こう話します。
「実際に、文系の受験生を中心に『マジで関わりたくない』という声をよく聞きます。でも、イメージだけでこの科目を捨ててしまうのは、もったいない。簡単なところからステップ・バイ・ステップで勉強していけば必ずできるようになりますし、文系の受験生のほうが有利な点もあります」
まずは「情報Ⅰ」とはどのような科目なのかを確認しましょう。
高校では03年度から「情報」が新たに必修になりました。これまでの「情報」は、プログラミングやネットワークなどを含む「情報の科学」と、情報リテラシーを扱う「社会と情報」のどちらかを選択するようになっていました。
これが22年度からの学習指導要領の改訂により、「情報」の2科目を統合し、さらに新しい内容を追加した「情報Ⅰ」と、より高度な「情報Ⅱ」に再編され、前者が共通テストの「情報Ⅰ」として出題されることになりました。
「『情報』というとプログラミングを連想するかもしれませんが、そうではありません。これからの世の中は、ますますICTやAIが普及していくと考えられていますが、そのような社会で安心安全に暮らすための方法やルールを身につけることが大切です。それが『情報Ⅰ』の目的であり、言い方を変えれば、情報化社会で生きていくために欠かせない知識を学ぶ大事な科目といえるでしょう」(藤原さん)
暗記や読解力も必要
大学入試センターが公表している「情報Ⅰ」の試作問題を藤原さんが分析したところでは、大問1~4の問題構成は、大まかに下記のようなイメージです。
■第1問 情報社会の問題解決など……20点
インターネットの情報の信ぴょう性を確かめる方法や、情報の整理・分類の方法についての問題など
■第2問 情報デザインなど……30点
二次元コードの知識、実生活の中で扱う情報の工夫の仕方についての問題など
■第3問 コンピューターとプログラミング……25点
プログラミングの知識、プログラムの作成について考える問題など
■第4問 情報通信ネットワークとデータの活用……25点
さまざまなデータをコンピューターで活用する方法や、よりよいデータを作るための情報の収集法や分析の方法についての問題など
「第1問、第2問は文系要素が、第3問、第4問は理系要素が強い単元です。つまり、『情報Ⅰ』は文理融合科目といえるでしょう。感覚が近い教科としては、生物があります。理系科目でありながら暗記しなければならないことが多いですし、問題文の文章量も多い。『情報Ⅰ』の長い問題文を読解する点で文系は有利かもしれません。まずは、一日も早く試作問題を見てみましょう。逃げていてもいいことはありません」
使用されるのは「大学入試センター独自のプログラム表記」
気になる「プログラミング言語」はどの程度の知識が必要なのでしょうか。
プログラミング言語として、「Python(パイソン)」や「JavaScript(ジャバスクリプト)」がよく知られていますが、共通テストでは特定のプログラミング言語に習熟した受験生に有利にならないように、受験者が初⾒でも理解できる⼤学⼊試センター独⾃のプログラム表記を⽤いる予定です。
「関係者の間では『謎の言語』といわれていますが、言語が変わっても、プログラミングの基本的なルールは同じです。まずはどの言語でもいいので、実際に自分で手を動かしながらプログラムを組み立ててみると、『こう打ち込むとこうなるのか』とイメージできるようになります」
では、プログラミングの塾や教室に通う必要はあるのでしょうか。
「本格的に学ぶ必要はないですが、プログラミングに慣れる目的として短期間通ってみるのは一つの方法だと思います。また、高校生で時間に余裕のある人は、『プログラミング能力検定』に挑戦してみるのもいいでしょう」
短期間の対策では高得点はとれない
藤原さんによれば、共通テストの「情報Ⅰ」で高得点を取るためには、本番までに難度の高い問題が解けるようにしておかなければなりません。
「共通テストは得点差をつけるために、どの科目でも必ず難しい問題が出題されます。『直前に1カ月くらい集中してやれば大丈夫』といった声も聞こえてきますが、必死で知識を詰め込んだとしても、60%くらいがせいぜい。早めに勉強を開始し、問題集でアウトプットを重ねることをおすすめします」
「情報Ⅰ」が共通テストに設置されることに対して、高校教員の81.7%が「少し不安に感じている」「非常に不安に感じている」と回答しています。
藤原さんはこう話します。
「高校に講演へ行くと、『情報Ⅰ』は教員不足のために他教科の先生が兼務していると聞くことが多い。これが教員が不安を感じている理由の一つだと思います。こうした現実から、学校によって授業内容に差が出てしまうのは仕方ないような気がします。また、共通テストの出題範囲は学校の教科書で学ぶ範囲内と決められていますが、細かく見ていくと、教科書Aには載っているが、教科書Bには載っていないといった内容の差も見られます。複数の教科書を分析して作られている市販の参考書や問題集などをうまく併用して、自ら学んでいく姿勢が大切でしょう」
社会で役立つ知識が身につく重要科目
新しい科目とあって、受験生の不安は尽きないかもしれませんが、藤原さんは「『情報Ⅰ』は必ず役に立つ科目なので、しっかりと学んでほしい」と力強く言います。
「仕事でもコンピューターを含む情報の知識は必ず使いますし、身の回りの電子機器を活用する場合も、情報の知識があるとスムーズです。これからの時代は、英語と並ぶ重要科目になる可能性があるのではないでしょうか。共通テストでは、軽んじている受験生が多い分、きちんと学んで得点できれば、ライバルに大きく差をつけることができます。まずは高2までの間に教科書を1周し、暗記を含めた基礎的な部分を理解しておけば、高3で思考力の必要な難しい問題をどんどん解いていくことができます。ぜひあきらめずに、頑張ってほしいと思います」
藤原進之介(ふじわら・しんのすけ)/数強塾代表取締役。塾講師。オンライン情報Ⅰ・情報Ⅱ専門塾「情報ラボ」、数学が苦手な生徒を対象としたオンライン数学専門塾「数強塾」を創業、運営。著書に『学校で習っていなくても読んで理解できる 藤原進之介のゼロから始める情報Ⅰ』(KADOKAWA)。
(文=狩生聖子)
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