理系学生に人気の企業ランキング　セガが前年47位から６位に急浮上した理由は？

2023/11/21

■ランキングまるわかり

理系学生に人気の企業といえば、かつては電機メーカーや自動車メーカーでした。しかし、産業構造の変化とともに、人気企業の傾向が変わってきており、コロナ禍以降は大きな変化が見られます。どのように変化したのか、考えられる理由について、2024年卒業見込みの大学生、大学院生を対象にした調査からひもときます。（写真＝Getty Images）

IT系企業が躍進　「楽しく働ける会社」が人気

マイナビと日本経済新聞社の「2024年卒大学生就職企業人気ランキング（理系）」は、24年3月卒業見込みの大学3年生と大学院修士課程1年生の計9306人（理系男子5756人、理系女子3550人）を対象に、22年12月1日～23年3月26日に調査しました。

調査結果を分析したマイナビキャリアリサーチラボ主任研究員の宮地太郎さんは、ランキング上位にIT系企業が多く入っている点に注目しています。

「この傾向はコロナ禍以降、顕著になっています。4位Sky、5位NTTデータ、8位富士通、13位キヤノンなどがそうで、保護者世代では富士通はパソコン、キヤノンはプリンターやカメラのメーカーというイメージが強いかもしれませんが、今は両社とも顧客の課題解決のためのソフトやハード、テクノロジーを活用したトータルソリューションに力を入れています」

IT系企業の中でも、ソフトウェアやシステム開発を行う4位のSkyは、前年の７位から上がっています。1985年に設立し、初年度の売上高は640万円でしたが、22年度は約930億円に成長しています。ホームページには、経営理念として22年度に「ホワイト企業を目指します」と追加したことや、仕事をする上で「働くことが好き」という「好働力」を大切にしていることを掲げています。22年度からはIT系企業への就職を目指す学生向けに給付型奨学金の支給を始めました。

「マイナビ 2024年卒大学生就職意識調査」では、就職観（何のために社会で働き、どのように社会的役割を果たすのか）について当てはまる項目として、「楽しく働きたい」（38.9％）が2位以下の項目を大きく引き離しています。こうした意識を持つ学生にとって、Skyのメッセージは魅力的に感じるかもしれません。

セガは初任給を約35％アップ　６位に急上昇

ランキング上位の企業で注目されるのが、ゲームコンテンツ事業を手掛ける6位のセガです。前年の47位から大きく上がりました。

「セガは文系総合ランキングでも、前年の69位から11位に急上昇しています。理由の一つには、新卒の初任給を上げた影響があると思います」（宮地さん）

セガは23年2月、大卒初任給を22万2000円から約35％上げて30万円に、正社員の年収を平均15％程度上げることを発表しました。

「学生の感覚としては、給料が上がったから行きたいというだけではないと思います。人を必要としている成長企業だからこそ初任給が上がったととらえて評価した部分が大きいでしょう」（同）

理系女子に人気なのは食品メーカー

一方、理系学生に以前から人気があるのが食品メーカーです。今回の人気ランキング上位20社でも、味の素（2位）、カゴメ（7位）、明治グループ（11位）、森永乳業（14位）、ヤクルト本社（15位）、サントリーグループ（16位）、アサヒ飲料（17位）、山崎製パン（18位）が入っています。

「理系の女子に限ると1～10位のうち、6社が食品系メーカーです。山崎製パンは前年の32位から大きく順位を上げています。前出の『就職観の推移』調査を見てもわかるように、11年の東日本大震災後や20年のコロナ禍が始まった直後は、『人のためになる仕事をしたい』という意識を持つ学生が増えています。そうした時期は食品メーカーを含めて、さまざまな社会インフラにかかわる企業や職種の人気が上がります」（同）

理系はその専門性から、大学での学びが就職先につながることが少なくありません。大学選びの際、世の中の動きと合わせて、どんな企業が人気を集めているかについても知っておくといいでしょう。