【体験談】「マスコミに行きたい」 大学を再受験した仮面浪人のメリットとデメリット | 朝日新聞Thinkキャンパス

【体験談】「マスコミに行きたい」 大学を再受験した仮面浪人のメリットとデメリット

2024/02/13

先輩パパ・ママの受験体験記

息子が法政大学経済学部国際経済学科に合格した菅田晴美さん(仮名)。中学受験で入った中高一貫校ではラグビーに熱中し、大学へも現役で合格しました。しかし、入学した大学の雰囲気が合わずに再受験を決意。予備校には通わずに自分で受験勉強しました。仮面浪人を経て合格をつかむまでの道のりを振り返ります。(イラスト=Michiko Nishikawa)

マスコミ就職を夢見て私立文系を志望

息子が通っていた学校は、茨城県内の私立中高一貫校。高校2年までに各教科の学習内容をひと通り終え、高3から大学受験に向けた対策を行うカリキュラムでした。ラグビー部に入っていましたが、「自分は不器用だから部活と勉強の両立は難しい」と高2で少し早めに部活を引退し、高3から本格的に受験勉強をスタートしました。高校では一人ひとりの自主性を重んじた学習を重視していたので、塾には通わずに自学自習で受験対策をしていました。

息子は中学時代からマスコミへの憧れがあり、特にテレビ局への就職を希望していました。第1志望は早稲田大学で、ほかにも何校か私大を受けましたが、志望校には受からず、押さえ校だった大学に進学。初めての一人暮らしを始めました。

大学の雰囲気が合わず、思い悩むように

一人暮らしは順調で、思いのほか家事も得意だった様子。部屋はきれいに片づけていましたし、自炊もしていて「今日は野菜カレーを作ったよ」と私にメールをしてきたこともあります。そんな息子でしたから、大学生活もうまくいっているだろうと思っていたのですが、実は大学の雰囲気が合わずに思い悩んでいたようです。

というのも、息子の通っていた大学は全国各地に系列校があるため、付属高校からの内部進学者が相当数いました。大学では内部進学者のコミュニティがすでにあり、息子はなじめずに疎外感を感じることが多かったようです。さらに、この大学からメディア系に就職できるのかを調べてみると、実績があまり良くなかったり、友人からも難しそうと噂を聞いたりしたということでした。

一人でいろいろと考えたのでしょう。ある日、「大学を再受験したい」と息子から言われたのです。私は大変驚きましたし、戸惑いました。

親としてはすでに入学金や授業料を支払った後ですし、息子はすでに大学に通っています。しかし、夫とも相談した結果、「本人が希望するなら任せよう」ということになりました。再受験を前提とした、いわゆる仮面浪人の大学生活にシフトしたのです

仮面浪人のメリットとデメリット

大学に通いながら受験勉強をする仮面浪人の場合、再受験して不合格だったとしても、今の大学に通い続けられるというメリットがあります。「どこも行くところがない」という浪人生にとっての最大の心配がないので、精神的なプレッシャーを感じずにすみます。一方、デメリットとしては、経済的負担が大きいことや、通っている大学の授業の合間に受験対策をしなければならず、時間的に厳しいことが挙げられます。

我が家の場合、息子は一人っ子だったので、子どもが2人いると思うことにして経済的負担を受け入れました。息子自身も「今までためたお小遣いの中から受験料を支払う」と約束したことで、より責任感を持って受験に臨めたのではないかと思います。

大学の授業もあるので、まとまった勉強時間をどうやって確保するかが課題でしたが、中高時代からの習慣が役に立ちました。学校で自学自習の精神をたたき込まれていたので、周りの大学生が新入生気分を謳歌(おうか)する中でも、一人暮らしをしながら自分のペースで、図書館やカフェで受験勉強を続けました。

再受験は法政大1校にしぼる

再受験先に選んだのは法政大学で、経済学部や現代福祉学部など3学部を受験しました。志望校を1校に絞ったのは、受験対策をしやすいと思ったからのようです。その作戦が功を奏し、法政大学に合格することができました。

進学した法政大学経済学部国際経済学科は、多摩キャンパス(東京都町田市)にあります。息子が一人暮らしをしていた都心からの引っ越しは、繁忙期で業者が手配できなかったため、自家用車に洗濯機や冷蔵庫を積み込み、家族で行いました。引っ越してみると、それまで住んでいた都心より少し郊外のほうが、茨城県の地方で育った息子には合っていたようです。家族みんなでの引っ越しは大変でしたが、今となってはいい思い出です。

大学受験を終えて進学した大学が「本人に合わない」ということは、あり得ることです。私も息子から「仮面浪人からの再受験」を打診されたときはかなり戸惑いましたし、金銭面の負担は少なくありませんでしたが、何事も本人の意思を尊重したいと思い、応援してきました。息子が自分の人生を悔いなく生きていけるよう、これからも陰ながら支えていこうと思っています。

(文=勝又裕子)
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