英単語900語、1カ月で暗記するには？　塾講師が語る「脳」と「五感」のメカニズム

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大学に合格するためにはたくさんのことを勉強し、覚えなければなりませんが、「暗記が苦手」という受験生が少なくないようです。より確実に覚える方法はないのでしょうか。自身も暗記が苦手だったという塾講師の弓場汐莉さんに聞きました。（写真＝Getty Images）

【質問】

英単語や公式などを覚えるのが苦手です。おすすめの暗記方法があれば教えてください。（高校2年男子）

「じっくり」よりも「反復」を

【回答】

「完ぺき」に頭に入れようと思って、一つひとつを覚えるのにじっくりと時間をかけていませんか。また、一度覚えたら、それきりにしていないでしょうか。脳は、繰り返し入ってくる情報ほど「生きるために大事な情報」と認識して、より記憶に残すことがわかっています。つまり、暗記するうえで大事なのは「じっくり」よりも「反復の回数」です。短いスパンで覚えたり思い出したりを繰り返すほど、記憶が定着します。

毎日繰り返して増やしながら「合格」した単語を仕分ける

おすすめの方法を具体的に紹介しましょう。例えば、英単語を1日に30個ずつ覚えることにします。1日目に30個、2日目に30個、3日目も30個……と暗記していくわけですが、人間は忘れていく生き物。それだけでは、英単語帳の最後までたどり着く頃には、最初のほうに覚えた英単語はだいぶ忘れてしまうでしょう。

そこで、反復が必要です。1日目に英単語を30個覚えたら、2日目は1日目に覚えた1～30番目の復習と、新しい30個の暗記をする。3日目も同様に、1日目と2日目に覚えた1～60番目の復習と、新たな30個の暗記……というように、毎日、それまでに覚えた英単語のおさらいも欠かさずに繰り返していくのです（下図参照）。

すると、1カ月もすればかなりの反復回数になり、たくさんの英単語が頭に入っているはずですが、そうすると１カ月後には30語×30日＝900語もおさらいが必要ということになってしまいますよね。そこでもう一つ大事なのが、覚えながら英単語を仕分けていくということです。

具体的には、復習の際に意味がスッと出てきた英単語の横には「○」をつけていき、「○」が3つになったら合格。それらは3日に1回くらいのペースで確認するグループに仕分けをして、毎日の暗記は、まだ定着していない英単語に絞っておさらいしていきます。

目や耳、ジェスチャーなど五感を総動員

なお、情報が多すぎると脳が混乱してしまうので、まずは英単語とメインの意味だけを覚え、3、4秒くらいのペースでパッパッと進めていくのがおすすめです。

といっても、ただパッと見るだけではなかなか覚えられないので、なるべく脳に印象づける工夫をすることも大事です。例えば聴覚や視覚など五感を総動員させて印象づけたり、イメージを思い描いたりしてみましょう。それから「面白い」「楽しい」なんて感情が動いたりするときほど効率よく覚えられます。なるべく声に出しながら、イメージを連想しながら覚えていくといいでしょう。

ちなみに、私も英単語の暗記が苦手だった一人です。覚えられない英単語ほど「tremble、震える」と言いながらブルブルッとしてみたり、「extreme、極端な」と言うときには大きく手を広げるジェスチャーをしたりと、全身を使って英単語のイメージを覚えるようにしました。また、スマホに英単語を録音して歯を磨くときに聞いたり、トイレにメモを貼っておいたり……。スキマ時間を使って反復した結果、2カ月ほどで英語の模試の偏差値が16も上がった経験があります。もちろん英単語だけの成果ではないかもしれませんが、英語の語彙（ごい）を増やすことは、英語力アップに直結します。

また、紹介した方法は英単語以外の暗記にも使えます。みなさんもやればできます。頑張ってください。

弓場 汐莉（ゆば・しおり）／京都大学農学部卒業。高校時代は部活も勉強も中途半端、浪人した時点では「SVOC？　何それ？」という状態から、わずか2カ月で京大模試のA判定をとるまでに力を伸ばし、京都大学農学部に大逆転合格した経験を持つ。「自分はやればできる」と信じられるようになり、今では学習塾「ミスターステップアップ」の講師として、受験生の「頼れるお姉さん」的存在になっている。YouTubeチャンネル「リケジョの相談室」も人気。

（文＝竹倉玲子）