■大学いまむかし
民法改正で2022年から成年年齢が20歳から18歳になり、全員が「成人」になった大学生。保護者の役割は減るかと思いきや、逆に保護者会が活発になっていると言います。今どきの保護者会は、どんな活動をしているのでしょうか。
保護者と大学との強い連携
「自分が大学生だった20年前は、大学に保護者会があったかどうか。あったとしても、保護者会が活動していた記憶がまったくなかったのですが……」
そう話すのは、23年に長男が大学に入学した40代の母親です。入学後まもなく保護者会の活動報告が頻繁に届き、自分の時代にはなかった保護者と大学との強い連携に驚きました。
「保護者会」「父母会」など名称はさまざまですが、熱心に活動する大学の保護者会が増えています。例えば「父母の会」の活発な活動で知られているのが、京都橘大学(京都市)です。同大学が文学部単科の女子大だった68年に創設された歴史ある父母および保護者組織で、現在もほとんどの保護者が入会しており、主に「食生活支援」と「就職支援」の二本柱で活動しています。
食生活サポートや、保護者のための「就職懇談会」
食生活支援では、離れて暮らす子どもの食生活をサポートしたいという保護者からの提案で、「100円朝食」の提供や、期間・個数限定のおにぎりセットの無料配布などが定着しています。これらの活動は、父母の会の会費(23年6月現在、年1万2000円)からの補助で実施しています。
就職支援では、保護者が参加する地区別懇談会の中で就職懇談会も開催されています。地方の保護者が参加できるよう、全国10会場で開かれ、教職員が出向いて保護者と情報交換します。「父母の会」主催のこの会は、保護者からの注目度も高く、コロナ前には全国で約250人もの方が参加したそうです。
「お子さんが親元を離れてしまうと、就職についての情報や、大学での様子を知る機会がなかなかないものです。懇談会はそれぞれの学生がどう学んでいるか、どんなふうに学生生活を頑張っているかということをお話しすることで、保護者の方に安心してもらえる場にもなっています」(京都橘大学父母の会事務局)
このほか、「いつまでも京都橘大学の応援団でいてほしい」との思いを込めて、卒業生の保護者も参加できるバスツアーも実施しています。教授が案内する京都観光を楽しむツアーなどの人気企画があり、会員同士の親交を深めています。
父母の会の連絡も学生IDでオンライン化
京都橘大学では、父母の会への連絡方法も時代とともに変わりました。以前は封書による郵送がほとんどでしたが、現在は保護者も学生のIDを使って大学のポータルサイトへログインできるようになっています。親子で同じ情報をタイムリーに受け取ることも可能になっています。
保護者会でスポーツ部の応援 学生気分を味わう
神奈川県に住む商社勤務の女性(50代)は、自身の母校でもある明治大学(東京都千代田区)に長男が入学。長男が23年に卒業するまで、同大学の「父母会」で役員を務めました。きっかけは入学後まもなく開催された、新入生の保護者対象の「歓迎の集い」です。父母会の役員に同窓生がいたことから、その活動に積極的に関わるようになりました。
「子どもは大学のことをまったく話してくれないので、今のキャンパスライフについて知りたいという気持ちもありました。父母会に入ったことで、大学行事の情報がダイレクトに入ってきたほか、父母会の活動として長男の学部の講義を聞いたり、スポーツなど部活の応援会に参加したりすることもできました。むしろ自分の在学中より明治大学に詳しくなって、自分自身が学生気分を味わうことができて楽しかったですね」
同大学父母会の事務局によると、父母会の創設は72年。今では各都道府県の支部が連携する大きな組織になっています。
「父母会の活動が本格的になったのは、核家族化や少子化が進んできた90年頃からです。特に11年の東日本大震災以降は、家族の大切さを改めて考える人が増えたこともあり、活動内容も広がり、活発になっている印象です」(同事務局)
子どもとのつながりという要素に、保護者自身も楽しめるという新たな一面が加わって、注目度を増している保護者会。公式サイトを設けて、活動内容を積極的に発信している保護者会もたくさんあります。親視点の志望校選びの大切な要素に加えるといいかもしれません。
(文=福光恵、写真=京都橘大学提供)
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