「偏差値が高い大学ねらえるのに…」 中堅大を志望する息子、親のジレンマ | 朝日新聞Thinkキャンパス

「偏差値が高い大学ねらえるのに…」 中堅大を志望する息子、親のジレンマ

2023/06/19

■大学進学お悩みなんでも相談

難関大学を狙える実力があるのに、真剣に勉強をする様子が見えない……そんな場合、親はどうしたらいいでしょうか。大学受験指導を25年間行う早稲田塾の中川敏和執行役員に聞きました。(写真=Getty Images)

【相談】

高校2年生の息子は、偏差値が高い難関大学を狙える成績ですが、中堅大学を志望校にしています。「受験勉強で苦労したくない」という安易な考えで、勉強している様子もありません。「実力があるのにもったいない。もっと上の大学を目指して努力してほしい」とじれったい思いです。親としてどのようにアドバイスすべきでしょうか。(高2男子の母)

【回答】

私にも受験生の娘がいますので、気持ちはよくわかります。でも、いきなりアドバイスしようとせず、子どもの考えをじっくりと聞くことに徹してください。もしかしたら、チャレンジしたくない理由があるかもしれません。過去にチャレンジして失敗した経験があって、失敗を恐れるのはよくあることです。また、これは受験業界では「あるある」なのですが、難関大学を志望することで「そんな態度では受からないよ」と親からのダメ出しが増えるのが嫌で、意図的に目標を低くしている子どももいます。

まずは子どもが中堅大学を志望している理由を尋ねてみましょう。その際は、「その大学、いいよね」と肯定するスタンスで聞くことを意識してください。すると、「学びたい教授がいる」などの理由がわかるかもしれません。子どもが本気でそう考えているのなら、背中を押してあげればいいのです。

とにかく、子どもの言葉を否定せず、受け止めてあげてください。最近は職場などでも「心理的安全性(自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態)」という言葉が意識されています。家庭でも「心理的安全性」は大切です。子どもが安心して話せる環境をつくりましょう。また、話す場所も重要です。おすすめはファミレスやカフェ。自宅で話すと、つい感情的になりがちですが、外なら他者の目を気にするので、冷静に対話しやすいのです。

アドバイスはしない 待つことが親の仕事

アドバイスをしようと思うと、つい余計な一言が出てしまうのが親ですから、アドバイスはしないと決めるほうがいいでしょう。ましてや、説得しようなどと思ってはいけません。あくまで聞き手に立ち、根気よく励ましの言葉をかけて、ようやく本人が「チャレンジの先にある喜びや成長」に気づく時がきます。親としては子どもにすぐに変わってほしいと期待しがちですが、本人が自分で気づくまで待つことが親の仕事です。

とはいえ、子どもが勉強もせずにソファでくつろいでいたら、何か言いたくなるもので、それは私も同じです。でも、もしかしたら、子どもがくつろぐ直前まで勉強していたかもしれません。そこで、おすすめの声かけがあります。「今日はどんな一日だった?」と質問してみてください。何をしていたかわかるだけでなく、子どもを気にかけていることを自然に伝えられます。

最後になりますが、私が親として実践している「子どものやる気を引き出す方法」を紹介します。それは、「こうなってほしいと子どもに期待する姿を、親が自らやってみせること」です。私が最近、資格の勉強を始めた本当の目的は、娘に刺激を与えることでした。あえてリビングでテキストを読んだり、テーブルに置いておいたりすると、気づくと娘の参考書もテーブルの上に置いてあったりします。質問をくれた保護者の方も、もし子どもに勉強してほしいと思うなら、まずご自身が勉強する姿を見せてみてはいかがでしょうか? 資格の勉強、資産運用など、なんでもかまいません。]

子どもにとって親はもっとも影響を受ける人物で、何歳になっても親の背中を見ています。まずは親が率先して勉強する姿を見せれば、子どもも「自分もやらなければ」と思って、机に向かうかもしれません。

【回答者】

(写真=本人提供)

中川敏和(なかがわ・としかず)/早稲田塾 執行役員・本部長

1997年から東進、早稲田塾で一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜など、さまざまな大学受験指導を25年間行う。受験生の娘をもつ父親でもある。

(文=外山武史)

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