コロナで留学中止…でも諦めない 女子大生を救ったカナダの「Co-op留学」 | 朝日新聞Thinkキャンパス

コロナで留学中止…でも諦めない 女子大生を救ったカナダの「Co-op留学」

2023/05/31

■海外へはばたく・つながる

海外留学はコロナ禍の間、延期や中止が相次ぎました。そんな中、立命館アジア太平洋大学(APU)アジア太平洋学部 4年の古井萌香(ほのか)さんは、留学の夢を諦めず、カナダ独自の留学プログラム「Co-op(コープ)留学」を利用して海外に出ました。学生ビザで就労できる制度を利用することで、「キャンパスで学ぶ留学とは異なる経験ができた」と言う古井さんに、その体験を聞きました。(写真=本人提供。中央が古井さん)

コロナ禍で交換留学が中止に

海外へ興味を持ったきっかけは、私が小学3年生のころ、親戚が国際結婚したことです。各国から来る人たちと話してみたいと思ったことから、大きくなったら海外留学したいという夢を持ちました。大学生になる前に短期留学には何度か行ったのですが、長期留学してみたいという情熱は消えませんでした。APUへの入学を決めたのも、世界各地に協定校があり、交換留学プログラムが充実していたからです。

入学後はIELTS(※1)の点数を上げ、GPA(※2)の点数も高く保ち、交換留学の切符をなんとか手に入れました。これで念願の長期留学に行けると期待に胸を膨らませていたときに、コロナ禍に見舞われ、留学は中止になってしまいました。

※1:IELTS…英語圏の国々に留学、就労、または移住するための英語力を測定する英語試験。

※2:GPA…Grade Point Average(大学の成績評価)

当時、私のまわりで留学を希望していた学生は、休学して留学の機会を待つか、諦めて就職活動するかの2パターンに分かれました。実際に、留学を諦めて就職していったクラスメートも多くいます。しかし、幼少期から留学を夢見てきた私は、どうしても諦めることができませんでした。

カナダ独自の「Co-op留学」 学生ビザで就労も

そのため、自分で留学先を探すことにしました。コロナ禍で留学生の受け入れ先も少なくなっていましたが、限られた選択肢の中から見つけたのが、カナダの「Co-op留学」です。これはカナダ独自の留学プログラムで、専門分野について学び、それと関連する企業で有給のインターンシップを行う制度です。この留学プログラムを選んだ理由は、学生ビザで就労できるためです。親からの経済的なサポートが見込めなかったので、生活費も自分で稼ぐ必要がありました。また、将来起業することを目指しているので、海外でビジネスを学べるのも魅力だと感じました。

費用を節約するため、エージェントは介さずに留学プランの申し込みからビザの申請、滞在先まですべて自分で手配しました。大学の交換留学の中止が決まったのが2021年の6月。7月にCo-op留学に切り替えて10月に出国したので、わずか3カ月という短期間で準備しました。

 

カナダに到着して1週間後、きれいな夕焼けを背に撮影した一枚(写真=本人提供)

自己PRシートでインターンシップに売り込み

実際に留学生活を始めてみると、なかなかハードな毎日でした。

留学期間の前半は専門学校で勉強します。私はデジタルマーケティングを専攻し、SNSマーケティングや広告について学びました。そして関連したインターンシップとして、一般企業のオンラインマーケティング業務などを行いました。前半期間は週20時間しか働けないという制約があるのですが、思った以上に物価が高く、生活費をやりくりするのに苦労しました。

留学期間の後半は、週40時間(フルタイム)の有給インターンシップです。私は以前から憧れていたスターバックスコーヒーで働いてみたいと考えました。

Co-op留学の大変なところは、こういった仕事探しも、すべて自分一人で行わなければならないことです。スターバックスの場合、採用はすべてオンラインで完結しますが、なんとしても雇ってもらいたいと思い、熱意を伝えるために自己PRシートを持って各店舗のマネージャーに会いに行きました。必死に自分を売り込みに行ったのです。30店舗に足を運び、面接までこぎつけたのは2店舗。そのうち1店舗にようやく採用されました。

日本の「おもてなし」精神で、売り上げトップに

スターバックスでの勤務は、日本とカナダの働き方に対する考え方の違いを肌で感じられて、本当にいい経験になりました。私は最初、日本のアルバイトで求められるように、効率よくスピーディーに商品を提供しようとしていました。しかし、店長から「萌香、もっとお客さまとコミュニケーションを取って楽しませないと」と指摘されて驚きました。カナダでは、一人ひとりに合ったサービスを提供することが求められるのです。

それからは常連のお客さまをよく観察して、髪形が変わったとか、今日はご機嫌だなとか、わずかな変化をとらえて声をかけるようにしました。カナダの接客と日本の「おもてなし」精神を掛け合わせた、スピード+会話の販売スタイルをマニュアルに落とし込んで同僚にもシェアしました。すると、3カ月後には店舗が売り上げとカスタマーコネクション部門(お客さんとの関わりの回数・深さ)で、エリア1位を獲得しました。帰国するときに、お客さまから「あなたの笑顔が見られなくて寂しくなるわ」と言葉をかけてもらったことは一生忘れないと思います。

スターバックス勤務最終日。仲間が「お疲れさま」と集まってくれた(写真=本人提供)

学びと就業体験が出来た留学生活

チャレンジがたくさんあった約9カ月間でしたが、海外で暮らし、現地の専門学校で学び、就業体験ができて、私の留学生活は予想以上に充実したものになりました。現地のキャンパスだけで学ぶ留学スタイルとは異なる経験ができたと思います。とにかく行動してみるタイプの私には、自主性が求められるCo-op留学が合っていたのかもしれません。

私は、大学を休学し私費留学という形をとりました。APUでは交換留学であれば、追加で学費はかかりませんし、留学先の大学で取得した単位が認定対象になるものもあります。英語力は国内にいてもつけることができますが、語学を学ぶ以上に体験から学ぶ留学に関心がある人は、ぜひ挑戦してみてほしいです。

 

カナダでできた友達が開催してくれた、お別れパーティーの様子。帰国後にYouTubeチャンネル「Cheerful Hono / ほの」を開設し、留学中の様子を発信した(写真=本人提供)

 

(文=秦佐起代)

1pxの透明画像

記事のご感想

記事を気に入った方は
「いいね!」をお願いします

今後の記事の品質アップのため、人気のテーマを集計しています。

関連記事

注目コンテンツ

キャンパスライフ

キャリア(就職)

大学のいま

NEWS