金正恩とトランプ - アメリカと北朝鮮、初の米朝首脳会談:朝日新聞デジタル
金正恩とトランプ
kim jong un & donald trump

歴史上初めて北朝鮮とアメリカの首脳が対面した。金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領。2人はどんな人物なのか。6つのワードで比較する。(2018年6月12日)

非難の応酬

激しい衝突を繰り返してきた正恩氏とトランプ氏。「ロケットマン」「狂った老いぼれ」…。「言葉の戦争」とも呼ばれた状況から、どう対話に至ったのか、発言の変遷からたどる。

金正恩氏と話がしてみたい

2016年5月18日
大統領選挙中、ロイターのインタビューで
AP
2016年11月8日
アメリカ大統領選挙で勝利

大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発は締めくくりの段階

2017年1月1日
朝鮮中央テレビの新年挨拶で

北朝鮮は、米国に届く核兵器開発が最終段階というが、それはない

2017年1月3日
朝鮮通信
2017年2月12日
弾道ミサイル発射
朝鮮通信
2017年3月6日
弾道ミサイル発射
ロイター
2017年3月6日
ICBMの迎撃実験に成功
朝鮮通信
2017年7月4日
ICBM発射

金正恩には、ほかにすべきことがないのか?

2017年7月4日

独立記念日の贈り物が気にくわないだろうが、送り続けてやろう

朝鮮通信
2017年7月28日
ICBM発射

北朝鮮が挑発を続ければ、世界が見たことがない炎と怒りを受ける

2017年8月8日

グアム島周辺の包囲射撃を検討

グアムに何かをすれば、見たことがないことが北朝鮮で起きる

2017年8月10日

米国の様子をもう少し見守る。我々をこれ以上怒らせないことだ

実験成功の祝賀公演で歓迎される金正恩氏=朝鮮通信
2017年9月3日
6回目の核実験を実施

彼らは米国に極めて敵対的で危険

国連のシア・パク撮影
2017年9月19日

ロケットマンは自殺行為をしている

2017年9月19日

米国と同盟国の防衛を迫られれば、北朝鮮を完全に破壊せざるを得ない

2017年9月19日

前代未聞の横暴非道な、気違いじみたラッパを吹いた

トランプは政治家ではなく、火遊びを好むならず者、ごろつき

言いたいことばかりを言う老いぼれには、行動で示すのが最善

金正恩は、明らかに狂っている

2017年9月22日

2017年9月22日

ロシア外相、米朝は「幼稚園児のケンカ」と苦言

米海軍の原子力空母カールビンソン
2017年11月12日
原子力空母3隻が日本海で軍事訓練

私は彼をチビともデブとも呼びはしないのだが、金正恩が私を年寄り呼ばわりして侮辱するのは何故だろうね

2017年11月12日
朝鮮通信
2017年11月29日
ICBM発射

小さなロケットマン。彼は病んだ子犬だ

核のボタンは、常に私の執務室の机の上にある

私も同じく核のボタンを持っていて、ただ私のははるかに巨大で強力、しかも実際に機能するのだと、彼に教えてやってくれ

2018年1月3日

2018年2月9日~25日

平昌オリンピック

平和の祭典の水面下で、米朝が接触。対話へ動き始める

平昌五輪の開会式

米国と虚心坦懐に対話する用意がある

北朝鮮との対話で進展があった。世界が待っている!

2018年3月6日

米朝首脳会談に応じる

非核化の問題は解決できる

2018年3月末ごろ

CIA長官が極秘訪朝、正恩氏と会談

核実験中止、実験場廃棄、ICBM試射中止を決定

北朝鮮と世界にとってとても良いニュース。大きな前進だ! 我々の首脳会談を楽しみにしている

2018年4月20日

2018年5月7、8日

全ての核を余すところなく廃棄する

AFP時事

6月12日にシンガポールで金正恩氏と会う

(北朝鮮との)関係は良好だ。大きな成功になると思う

一方的に核放棄だけを強要しようとすれば、会談に応じるか再考するほかない

2回目の中朝会談後、北朝鮮の態度が変わった。気に入らない

会談場で会うのか、核対核の対決場で会うのかは米国の決心にかかっている

東亜日報
2018年5月24日
核実験場を爆破

シンガポールでの首脳会談は開かれないことをお知らせする

2018年5月24日

金正恩氏が建設的な対話と行動を選択する時を、私は待っている

2018年5月24日

予想外であり、極めて遺憾。我々は対座して問題を解決する用意がある

とても良い声明だ。彼らは(会談を)したいし、我々もそうだ

2018年5月25日

2018年5月26日

2度目の南北首脳会談

歴史的な朝米首脳会談に対する確固たる意志

とてもうまくいっている。6月12日のシンガポールを見据えている

2018年5月26日

朝鮮半島非核化の意志は変わらず、一貫して固い

我々は6月12日にシンガポールで首脳会談を行う

「最大限の圧力」という用語をこれ以上使いたくない。うまくやっているからだ

エキサイティングな一日になる

2018年6月12日 午前10時(日本時間)

史上初の米朝首脳会談

ロイター

足をひっぱる過去もあったが、全てを乗り越えてここまで来た

世界中の多くの人々は、これをSF映画のファンタジーだと思っているでしょうね

お会いできて大変光栄です。私たちは共にすばらしい成功を収めることになるでしょう

トランプ大統領と共にやりとげることができると信じています

2018年6月12日 午後2時40分すぎ(日本時間)

朝鮮半島の「完全な非核化」を含む包括的な合意文書に署名

世の中は、おそらく重大な変化を見ることになる

2018年6月12日

(正恩氏をホワイトハウスに)絶対に招くだろう

また会いましょう

2018年6月12日

戦争ゲームをやめる。膨大な量の金を節約できる

(非核化にかかる費用は)韓国と日本が払う

2018年6月12日

政治ゲームの本当の勝者は

<解説>12日午後、米朝首脳会談後の記者会見でトランプ米大統領が見せた姿は、まさに「政治ゲーム」の主人公だった。1時間5分の間、高揚した表情で、次々に記者団の質問を受けた。

共同声明は「サインする価値もない」(韓国の軍事専門家)ほどの内容だった。トランプ氏は、満足できない会談なら途中退席する考えを示していたのに、会見では、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を「才能がある。1万人に1人もいないくらいだ」と褒めちぎった。

過去、2002年9月に実現した日朝首脳会談では、日本政府は北朝鮮を相手に、「日本人拉致問題で前進がなければ、小泉純一郎首相を平壌に行かせられない」と踏ん張った。トランプ氏は、非核化の道筋も見えないなか、平壌を訪れるという。

会見を見た米韓関係筋の一人は「トランプ氏は明らかに興奮していた」と語る。

ただ、北朝鮮が「ゲームの勝者」であるかどうかは、まだ分からない。13日付の労働新聞は写真33枚を使って、米朝首脳会談を大々的に報じた。最高指導者の偶像化に成功したという判断だろう。正恩氏は自信をつけ、国際社会と接触する機会を増やすだろう。

北朝鮮は、正恩氏が思うほど盤石ではない。日々の生活に追われた人々は最高指導者に無関心だが、国際社会との接触が増えれば、無関心は反発に変わるかもしれない。

正恩氏に、「都合の悪い」真実を告げる勇気がある側近はいないという。気分を害するような景気の悪い話をすれば、粛清されるかもしれないからだ。12日の会談の、本当の勝者が誰だったのかを知るには、いましばらく見守る必要がありそうだ。(シンガポール=牧野愛博)

2018年6月11日 公開

2018年6月14日 更新

取材・編集:
原田朱美、平井良和、藤田太郎、牧野愛博、森本浩一郎
制作・デザイン:
朝日新聞メディアプロダクション(佐久間盛大、小倉誼之)