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2003年5月20日
19:27
2003年5月、大阪府熊取町に住む当時9歳の吉川友梨さんが遠足の帰りに行方不明となって20年。入手した捜査資料や関係者への取材をもとに、警察の捜査を振り返ります。
最後の「バイバイ」
近所に住む小学3年生の女児の証言
「友梨ちゃんは普段、この道を通って家に帰っていました」
遠足帰りに乗っていたバスが停車
14:33
同級生の女児は「学校の門を出ると、10mくらい先に(友梨さんと一緒に帰っていた)友だちの姿を見た」と証言。この女児の自宅防犯カメラの時間から逆算すると、少し先を歩いていた友梨さんたちは、14:40~14:43に学校を出たと裏付けられる。
一緒に下校していた同級生の女児3人の証言
「七山交差点の手前で、友梨ちゃんは少し先を歩いていました」
女児3人の証言や再現結果から、友梨さんが七山交差点を右折した時間を推定
14:58~15:01
一緒に下校していた3人の証言
「40mくらい先の友梨ちゃんに『バイバイ』って声をかけたら、振り返って手を振ってくれました」
同級生の男児(少年🅐)の証言
最後の目撃情報「自転車に乗って家を出たら、友梨ちゃんとすれ違い、『今から帰るん? 遅いなー。バイバイ』と話しかけました。友梨ちゃんも『バイバイ』と手を振ってくれました」
商店で作業をしていた塗装工の証言
「童謡か何かを口ずさむ女の子の声が聞こえました。黄色いリュックを背負って1人で歩く小学生の女の子を見ました」
15:20ごろ
塗装工の目撃証言などから、当初は友梨さんが商店通過後に行方不明になったとみて初動捜査をしていた。
しかし、その根拠を覆す証言が次々と出てくる。
どこでいなくなったのか?
歩行者🅑は「記憶が薄れ、時間を断定できない」と話す中、宅配便業者は「歩行者🅑を追い抜く直前、集荷場所を出発した」と証言した。集荷時に端末に残った時刻は14:55だったことから、歩行者が追い抜かれたのは14:57ごろと推定した。
歩行者🅑
宅配便の車に追い抜かれた後、「学校帰りの1年生男児(少年🅒)とすれ違いました」
少年🅒
歩行者🅑とすれ違う直前に「帰宅途中の少年🅐に声をかけられました」
14:56ごろ
歩行者🅑や少年🅒の証言から逆算し、少年🅐の当日の行動を再現した結果、友梨さんとすれ違った正確な時間を特定
少年🅐は当初「少年🅒に声をかけた後、商店の時計を見ると15:05だった」と証言。当日の行動の再現結果から推定すると、友梨さんとは15:07ごろにすれ違うことになる。しかし、この時間の根拠は少年🅐本人の証言のみ。他の証言と矛盾が生じ、すれちがった時間は14:59だと判断した。
空白の3分間
友梨さんが少年🅐とすれ違った時刻を14:59ごろとした場合
小学生の足取りから、約200mを歩くのに3分間ほどかかるため、15:02には商店前を通過していたことになる
友梨さんが商店を通過したとみられる時刻と、塗装工が女の子を目撃した時刻とにズレが生じる。塗装工が見た女の子は、友梨さんとは別人だったと判断。
この時間帯、商店周辺には仕事中の大人が複数通っていたが、誰も友梨さんを見ていない。
つまり、事件に巻き込まれたのは、商店を通過する前の約200mの間(動画)だった可能性が高い。
2003年5月20日午後、吉川友梨さんは遠足からの下校途中に姿を消した。友梨さんが歩いていたはずの通学路を記者がたどった=2023年4月、大阪府熊取町、西田堅一、小林孝也撮影
10年後の新証言
事件を振り返る報道を見た証言者
「このあたりに白いセダンタイプの車が止まっていて、対面からタクシーが来ました。『邪魔なセダンやな』と思って追い越しざまにのぞき込むと、助手席に泣いている様子の女の子がいました」
15時ごろ
「運転席の男がにらみつけてきたので怖くなり、タクシーとすれ違った後、七山交差点方面へと車を走らせた」と証言した。証言者が立ち会い再現したところ、説明の通り、セダン内の様子を確認できた。当時の状況などからも発生当日である可能性が極めて高いと判断。
白い不審車両が止まっていたとみられる三差路=大阪府熊取町、2023年撮影
ディーラーへの調査などから、旧式のトヨタ・クラウンとみて、他の不審車両と合わせ捜査を進めている。それでも、友梨さんの居場所はわかっていない。これまでに5300件以上の情報が寄せられ、延べ10万6千人の捜査員を動員し、7万枚以上のチラシが配られた。事件から20年、友梨さんは29歳になった。いまも帰りを待ち望んでいる人たちがいる。
- 公開
- 2023/05/19
- 取材山本逸生甲斐江里子飯島健太後藤泰良市原研吾田添聖史三浦淳田中章博
- 撮影西田堅一小林孝也
- Webディレクション藤井宏太
- デザイン・WEB制作加藤啓太郎原有希佐藤義晴
- 衛星写真©国土地理院©Google
- 吉川友梨さんの写真は両親提供