day39
2020-7-2(木曜日)
都内の感染者が2カ月ぶりに100人突破
この2日後、小池百合子知事は都民に対し、都外への不要不急の移動自粛を要請。歌舞伎町を中心に蔓延したウイルスは全国に広がり、都外で「東京由来」とされる感染が相次いでいた。
2020年、世界を大きく変えた新型コロナウイルス。「第2波」は、7月から8月にかけて日本全国を覆った。
感染者が最も多かったのは東京。都内では9月も、新規感染者が100人以上という日が連日のように続いた。
一方で経済の冷え込みは戦後最悪とされる。10月1日から、政府肝いりの観光振興策「Go To トラベル」の対象に東京都も加えられた。
「第2波」に覆われた東京で何があったのか。「第3波」は起こりうるのか。
「第2波」に直面した首都の100日間を、小池百合子都知事ら各地の首長の動きと、東京都の感染者数のデータで浮き彫りにする。
公開 2020/10/1
「ここまで根気強く辛抱してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます」。48日間にわたる緊急事態宣言が解除された5月25日、安倍首相はそう国民に呼びかけた。ただこの頃、すでに感染再燃の予兆は見えつつあった。その発信源と名指しされたのが新宿・歌舞伎町。感染者数がじわじわと増え続けたが、東京都は「夜の街」に限定された感染であることを強調し、市中感染の広がりを否定し続けた。対策が後手になる中、ウイルスは歌舞伎町を越え、各地に散らばりつつあった。
day1
2020.5.25(月曜日)
48日間にわたる緊急事態宣言が解除され、以前のような通勤風景も次第に見られるように。だが、東京都内では、すでに若者の感染が目立ち始めていた。
day2
2020.5.26(火曜日)
厚生労働省が新型コロナウイルスで経済的な打撃を受けた人たちの雇用対策を発表。一定条件を満たせば、失業手当の支給日数を60日延長することや、会社から休むように言われた働き手が直接申請して受け取れる給付金の新設などが柱。
day9
2020.6.2(火曜日)
新型コロナウイルス感染拡大の兆しが見られるとして、東京都は「東京アラート」を出して警戒を呼びかけた。小池知事はこの日の対策会議で「特に夜の繁華街など『3密』のリスクの高い場所には十分注意していただきたい」と述べる。
緊急事態宣言が解除されたのもつかの間、東京では感染拡大の「第2波」の兆しが現れていた。新宿・歌舞伎町にあるホストクラブなどで若者の感染者が急激に増え、小池知事も記者会見などで「夜の街」を連呼。行きすぎた警戒からそこで働く人たちを差別する風潮も生まれた。あのとき、ホストクラブの従業員たちはどんな思いで過ごしていたのか。独自の取材で実態に迫った。
day25
2020.6.18(木曜日)
再選を目指して出馬した小池知事は「『東京大改革2.0』の柱は何と言っても新型コロナウイルス対策」と強調した。一方、安倍首相はこの日、感染拡大を防ぐために求めてきた移動自粛の全面解除を表明、イベント開催の制限も緩和することを明かした。
7月2日、東京都内の新規感染者は2カ月ぶりに100人を超えた。止まらぬ東京都内の感染拡大。菅義偉官房長官(当時)は「この問題は圧倒的に東京問題」と小池百合子東京都知事に矛先を向けた。対する小池氏は、菅氏主導の観光振興策「Go To トラベル」の見切り発車ぶりを批判する。医療現場の不安を置き去りにしたまま、Go To トラベルは7月22日、東京を除外して始められた。
day39
2020-7-2(木曜日)
この2日後、小池百合子知事は都民に対し、都外への不要不急の移動自粛を要請。歌舞伎町を中心に蔓延したウイルスは全国に広がり、都外で「東京由来」とされる感染が相次いでいた。
day46
2020-7-9(木曜日)
day47
2020-7-10(金曜日)
day48
2020-7-11(土曜日)
東京の感染経路は接客を伴う飲食店などに加え、職場や家庭内も増加。東京に隣接する県にも感染が拡大しつつあった。
day53
2020-7-16(木曜日)
day59
2020-7-22(水曜日)
東京都内の繁華街の接待を伴う飲食店で新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを受け、小池百合子知事は22日、警視庁本部を訪れて斉藤実・警視総監と面会し、各店の感染対策の徹底に関して協力を要請した。
「Go To トラベル」がスタートした7月下旬以降、新型コロナウイルスの新規感染者は、全国で増え続けた。それでも安倍晋三首相(当時)は「緊急事態宣言を出す状況にはない」と繰り返した。7月末には、東京から1500km離れた沖縄で感染拡大が明らかに。沖縄県は独自の緊急事態宣言に踏み切った。第2波は、列島を覆いつつあった。
day60
2020-7-23(木曜日)
新型コロナウイルスの影響で延期された東京五輪が開幕まであと1年となった。一方で、東京では感染者が初めて300人を突破。都民も行政も危機感を持ちながら4連休を迎えた。
day61
2020-7-24(金曜日)
感染者は増えていたが、安倍首相は直ちに緊急事態宣言を出す考えはないことを明かした。一方、都内の接待を伴う飲食店で感染が拡大していることを受け、小池知事は警視庁に協力を要請。店側からは「越権行為だ」などの反発する声があがった。
day63
2020-7-26(日曜日)
鹿児島県にある人口5千人の離島、与論島で7月22日から感染者が相次ぐ。島は厳戒態勢になり、山元宗町長は「来島自粛」を呼びかける。
day65
2020-7-28(火曜日)
当時としては過去最多の感染者が判明したことで、各地の知事らが会食への注意を呼びかける。
day66
2020-7-29(水曜日)
1日あたりの感染者が初の1千人超。岩手県で初めて感染者が判明し、全47都道府県で感染者が確認される。
day67
2020-7-30(木曜日)
営業時間の短縮を要請したのは、酒類を提供する飲食店やカラオケ店。営業時間を午後10時までにするよう求める内容で、要請に応じた中小・個人事業者には協力金20万円を支払うとした。だが、業者の懐事情は限界に達していた。
day68
2020-7-31(金曜日)
Go Toトラベル事業が始まって以降、地方での感染が急拡大。沖縄県は本島全域で不要不急の外出自粛を要請した。また、大阪府は8月5~20日、大阪市の繁華街ミナミにある感染防止対策を取っていない一部の飲食店に対し、休業を要請すると発表した。新型コロナの影響で解雇・雇い止めにあった人はこの日時点で4万1391人になった。
day70
2020-8-2(日曜日)
感染拡大の第2波が全国を覆うなか、経済の冷え込みも一層深刻になった。国内総生産(GDP)の落ち込みは、戦後最悪を記録した。二度と立ち上がれないようなダメージが、各所に広がっている。その一つが、感染拡大の最大の要因として、小池百合子都知事が幾度となく名指しした「夜の街」だ。なかでもその象徴とみなされた新宿の歓楽街は、客足が途絶えて久しい。夜間営業短縮の要請が解除されても、にぎわいが戻る気配はない。
day71
2020-8-3(月曜日)
航空各社の業績が悪化。JALは4~6月期の決算で、純利益が937億円の赤字。ANAホールディングスも同期に1088億円の純損失を出す。コロナの影響で倒産が400件にのぼったと帝国データバンクが発表した。翌日4日には日本製鉄、ホンダ、東京メトロが中間決算を発表、いずれも赤字に。一方、ソニーは「巣ごもり需要」によるゲーム事業が好調で黒字に。
day72
2020-8-4(火曜日)
新型コロナウイルス対策として、吉村洋文・大阪府知事はうがい薬を推奨。専門家からは科学的な根拠が不十分だと疑問の声が出る。
day73
2020-8-5(水曜日)
愛知県は9日間連続で100人を超え、6日から独自の緊急事態宣言を出すと発表。福岡県も感染拡大を受け、対策が不十分な店舗に対し、休業要請をするとした。
day74
2020-8-6(木曜日)
day75
2020-8-7(金曜日)
1日あたりの国内感染者数が過去最多になり、各地の知事から帰省や旅行での移動自粛を呼びかける声が相次ぐ。一方、厚生労働省は軽症者や無症状者について、宿泊施設が確保できない場合は自宅療養を認めるとした。
day76
2020-8-8(土曜日)
全国の知事がオンライン会議を開き、「大切な『ふるさと』と命を守るために」と題したメッセージを発表。帰省をめぐっては危機感をあらわにする知事がいる一方、容認する知事も。東京の感染者数は2日連続で400人を超えた。
day77
2020-8-9(日曜日)
day79
2020-8-11(火曜日)
day85
2020-8-17(月曜日)
4~6月期の国内総生産(GDP)が、実質で前期より7.8%減少。円換算で27.8%減で、事実上戦後最悪の落ち込み。コロナ危機が国内経済に与えた打撃の大きさが浮き彫りに。
day93
2020-8-25(火曜日)
Go To事業の利用者(7月27日~8月20日)が延べ約420万人になったと、国土交通省が発表。政府は成果を強調するが、野党側は効果は限定的だったと指摘した。
day94
2020-8-26(水曜日)
day95
2020-8-27(木曜日)
東京都内の感染者の8割超が区部に集中しているため、東京都は引き続き警戒が必要だと判断した。
day96
2020-8-28(金曜日)
安倍首相は持病が悪化し、病院を受診していたが、政府が新型コロナの新たな対策を決めたことで辞任を判断したと述べる。一方、この日、政府は国民全員分のワクチン確保を目指し、関連費用の予算措置を講ずる方針を決める。
day99
2020-8-31(月曜日)
内閣府が発表した消費動向調査で、家計の消費意欲を示す消費者態度指数が前月より0.2ポイント低い29.3となり、4カ月ぶりに悪化に転じる。新型コロナの感染拡大の影響とみられる。
day100
2020-9-1(火曜日)
財務省がこの日公表した4~6月期の法人企業統計で、前年同期と比べて経常利益はほぼ半減。2008年におきたリーマン・ショックの直後以来となる記録的落ち込みになった。
9月16日。東京・新宿駅西口周辺は、午後10時を過ぎると人はまばらだった。都はこの日、酒類を提供する飲食店などに出していた営業時間の短縮要請を解除した。それでも、深夜の新宿に人通りは戻らなかった。
都内で初めて感染者が確認されてから8カ月。首都の経済は疲弊の一途をたどる。多くの企業で業績が悪化し、人々の生活への影響は、むしろこれからが本番かもしれない。
解除までの行程は平坦ではなかった。都内で170人の感染者が確認された8日、都庁内には「都外への外出自粛要請は9月いっぱい続ける」との案がくすぶっていた。ある幹部は「地方には東京から人が来ることを、いまだに嫌がる人がいる」と漏らした。
小池知事が移動自粛解除を表明してから一夜明けた11日、政府は10月1日から「Go To トラベル」に東京を追加することを明らかにする。かつて「Go To トラベル」を批判した小池知事も「経営が厳しい都内の観光関連事業者にとって、事業の回復にはずみがつくのではないか」と歓迎した。
秋の行楽シーズンを控え、都内の観光業者からは東京追加を求める声が強まっていた。
「いま取り組むべき最優先の課題は、新型コロナウイルス対策。社会経済活動との両立を目指します。さもなければ、国民生活が成り立たなくなるからです」
菅義偉・新首相は16日の就任会見でそう強調した。
10月以降、懸念されるのがインフルエンザとの同時流行だ。ここで医療現場がさらに疲弊すれば、来夏の東京五輪・パラリンピック開催にも暗雲が立ちこめる。大会が中止になれば、経済に与える打撃は計りしれない。
間もなく、試練の冬が来る。(東京都庁キャップ・岡戸佑樹)
プレミアムA 第10弾「コロナ第2波/東京100days」