復興へ、私たちにできること キモチ、あつまるプロジェクト〈ワークショップ編〉:朝日新聞SDGs ACTION!
編集部へのお問い合わせはこちら

復興へ、私たちにできること キモチ、あつまるプロジェクト〈ワークショップ編〉


Sponsored by UR都市機構
復興へ、私たちにできること キモチ、あつまるプロジェクト〈ワークショップ編〉

復興に向けて、私たちにできることは——。

福島県・浜通りの原子力被災地域の復興を考える「キモチ、あつまるプロジェクト2024」。参加した学生たちはツアーの後半、2日間にわたって学びを共有し、未来に向けた行動について話し合いました。

キーワードは、伝える、動く、広げていく、です。

グループに分かれてワークショップ。まずはスパイダー図づくり
グループに分かれてワークショップ。まずはスパイダー図づくり

「復興」つなげるキーワード

学生たちは5グループに分かれて「感想・学びの共有」をしました。翌日のプレゼン「私たちにできること」へのステップです。

まずは、一人ずつスパイダー図の作成に取り組みます。

スパイダー図は、思い浮かんだキーワードを線でつなぎながら、次々と紙に書いて表現したもの。出発点は「復興」「被災地」「まちづくり」が多く、「人とのつながり」「チャレンジ」「ソフト」といった言葉へと続いていきます。

スパイダー図をもとに議論が進む<br />
スパイダー図をもとに議論が進む

どんな街に? わいわい議論

書き上げたスパイダー図をグループ内で見せ合い、話し合う学生たち。

「新しい街になるのはいいことだと思ったけど、元の住民には違う見方もあるよね」

「街が新しくなっても、人とのつながりは大切だと思った」

学生たちはツアーを通じてすっかり打ち解けて、どのグループもにぎやかです。学んだこととともに、それぞれにチーム名も考えて盛り上がりました。

さあ、1時間の議論を経て、それぞれのグループから学びと疑問の発表です。

チーム「ねいちゃー」の学び
チーム「ねいちゃー」の学び

イメージと現実 ギャップがあった

チーム「ねいちゃー」は、学んだことの一つを「ギャップ」と発表しました。

「震災のときで記憶が止まっていたので、思ったよりも復興が進んでいると思いました」

「私は逆。まだ人が立ち入れないエリアも多く、復興は先が長いと感じました」

同じ「ギャップ」でも、感じ方が違ったようです。それでも、ツアーへの参加によって、原子力被災地域に対する印象や考えがアップデートされたことに変わりありません。

チーム「Green」の学び
チーム「Green」の学び

新エネルギーの場 失われたものも

チーム「Green」は「新エネルギーの場」を学びとして挙げました。

「震災前は原発が雇用を生み出していましたが、今は太陽光発電や水素燃料の取り組みが見られます。浜通りを新しい再エネのモデルケースの場としてアピールできるのではないか。そこが魅力だと思いました」

一方、ツアーではキウイ再生に取り組むReFruitsの阿部翔太郎さんが「震災前に畑だったところに、ソーラーパネルばかりが置かれているのは悲しい」と言っていました。学生たちは「ソーラーパネルは現代的だと思っていましたが、失われたものもあると感じました」と振り返ります。

チーム「ラッキー」での議論
チーム「ラッキー」での議論

復興いずれ終わる? 難しい

チーム「ラッキー」は「復興はいずれ終わるものなのか?」という疑問を投げかけました。

「元のかたちに戻すのが復興なのか、それとも新しいまちとして完成するのが復興なのか。とても難しいと感じました。移住者も含め、地域の人々のコミュニケーションの場で考えていくべきだと思います」

UR都市機構災害対応支援部の佐藤律基さんは「URとしては、町の再生が終わり、復興の支援事業が終わって、我々が地域からいなくなるのが理想だと思っています。支援を完了させたい、復興の終わりを見たい。そう思っています」とコメントしました。

学生の疑問に答えるUR都市機構の佐藤律基さん(右)とtotenの川上友聖さん
学生の疑問に答えるUR都市機構の佐藤律基さん(右)とtotenの川上友聖さん

複雑な課題 身近なところから考える

一夜明けたツアー最終日。いよいよ「私たちにできること」の議論と、発表です。

ホワイトボードや模造紙にふせんを貼ってははがし、書き込んでは消していきます。

住民たちは、どうしたら帰ってこられるのか。

産業を再興させるには、何が必要か。

原子力被災地域の負のイメージを、どうしたらぬぐい去れるか。

課題は複雑ですが、学生たちにもできることはあるはずです。

チーム「ITTO」は発表時にポーズ
チーム「ITTO」は発表時にポーズ

ふたたび、福島 自分の中にとどめない

チーム「ITTO」は「発信」「ふたたび、福島」「地元で自分事」と発表しました。

「ツアーで学んだことを自分の中にとどめておくのはもったいない」「SNSなどで発信して周りの人を巻き込みたい」「参加したメンバーたちと、ここで同窓会をしたい」「地元でお土産を配る、ふるさと納税をするなど、福島のことを忘れずに、できることをやりたい」

ITTOの発表に「等身大のアイデアが良い」と評価したのはUR都市機構東北震災復興支援本部の島田優一さん。「『浜通りに、同窓会でもう一度行く』というのが良かったです。ぜひお願いしたいです」

おおくままちづくり公社(移住定住促進担当)の岩船夏海さんも「同窓会は、1人につき5人ぐらい呼んでくれるとうれしい(笑)。少しずつでも輪を広げてほしい」と応じます。

チーム「ねいちゃー」
チーム「ねいちゃー」

ふたば飲みを全国に 私たちが販売員

チーム「ねいちゃー」は「心と心でつながっている」ことを3町の魅力として挙げ、「出張! 浜通り3町飲み」を開催するアイデアを披露しました。

ツアー2日目の夜の「ふたば飲み」のようなイベントを全国に展開。大熊町のキウイ、浪江町のニンニクや大堀相馬焼といった特産品を売るイメージです。「自分たちが販売員となり、学んだことを来場者に伝えて広げたい」と意気込みます。

川上さんは「冒頭で『私たちのやりたいことは』と言ったのがステキだなと思いました。浜通りは課題先進地域といわれていて『課題があるからやろう』という人はいますが、なかなか続けられない。だから『自分たちがやりたい』という気持ちが大事です」とアドバイスしました。

チーム「Green」
チーム「Green」

起業した人を講師に 授業や合宿

自然があり、歴史があり、新しい取り組みをする人がいる。チーム「Green」は、これらを地域の魅力として挙げました。

関係人口を増やすために、自分たちの感じた魅力を多くの人に体感してほしい。地元で起業した人を講師に授業を開いたり、浜通りへイベントや合宿の誘致をしたり——。

「みなさんのアイデアの一つひとつが、浜通りに来たことのない人、実状を知らない人に届くと思うので、ぜひ自分事として取り組んでほしい」と島田さん。

岩船さんも「大熊町にはスタートアップ企業もあります。学生たちがキャリアを考える良い機会になるのではないかと思いました」とコメントしました。

寸劇を披露したチーム「リバイバーズ」
寸劇を披露したチーム「リバイバーズ」

みんな、浜通りに行こうよ! 即興寸劇

この地域にファミリー層を増やしたい、と発案したのはチーム「リバイバーズ」。

「ふたば飲み」のステージでダンスをしている子どもたちを見て、みんなが笑顔になっていたことから発想。子どもが多いとコミュニティーの雰囲気が温かくなり、未来へとつながっていきます。

どうしたらファミリー層を増やせるのか。自分たちの経験を地元に帰って口コミで伝えるのが一番ということで、「みんな、浜通りに行こうよ!」と友だちを誘う即興の寸劇を披露しました。

学生時代から浜通りの復興に取り組み、今回メンターとして参加したtotenの川上友聖さんは、寸劇を見て「生の言葉を伝えられるのは大学生の強み。これがやりたい、これが好きという気持ちを大切にしてほしい」と語ります。

チーム「ラッキー」
チーム「ラッキー」

じいじ、ばあばの撮影会 ファンを増やす

チーム「ラッキー」は、横浜などで被災者の会が行われるときに若い世代が参加できないかと提案。郷土料理や特産品を紹介しつつ、浜通りに来てもらうきっかけとして「名物じいじ、ばあばの撮影会」を催すアイデアです。名物じいじ、ばあばとSNSを通して交流してファンになってもらう、といいます。

岩船さんは、「この地域の魅力として『人』を取り上げたところが良い点でした。話を聞きながら、名物じいじ、ばあばの候補になりそうな顔が浮かびました」と笑いました。

(上)双葉町産業交流センターの屋上から海側を眺める(左下)浪江町に掲げられた「がんばろう!」のメッセージ(右下)KUMA・PREの一角
(上)双葉町産業交流センターの屋上から海側を眺める
(左下)浪江町に掲げられた「がんばろう!」のメッセージ
(右下)KUMA・PREの一角=いずれも参加した学生による撮影

同窓会を、いつか 思い出を抱えて帰路に

ツアーの最後に、学生たちが撮影した写真や動画をプロジェクターで映し出しました。

友だちと桃をかじる姿、ふくしま応援ポケモン「ラッキー」と並んだポーズ、請戸小学校で咲いていた花……。それぞれの思い出が鮮やかによみがえります。

学生たちに感想を聞きました。

「震災復興の『今』は、実際に見ないとわからない。私は復興が思っていたより進んでいないと思いましたが、進んでいると感じた人もいたようです。そのギャップも興味深かったです」(一条杏子さん)

「札幌出身で、北海道胆振東部地震で被災したこともあって共通点もあったし、視野が広がりました」(高橋侑希さん)

「初めての福島でしたが、テレビなどで見ていた印象とは全く違いました。復興は進んでいるというより、初期段階のように感じました」(大本航さん)

全町避難から、力強く立ち上がろうとする原子力被災地域。学生たちは、この地域とのつながりを大切に、それぞれの地元へと帰っていきます。

みんなで「同窓会」を、いつか。その計画を温めながら。

「キモチ、あつまるプロジェクト2024」は笑顔で幕を閉じた
「キモチ、あつまるプロジェクト2024」は笑顔で幕を閉じた
この記事をシェア